ティレックスは崩れてしまったリベルナ監獄の瓦礫の中にいた人を助けた。
「大丈夫か?」
「お前は……ティレックスか、なんだか久しぶりだな、今着いたのか……?」
「レイガス、そんなことよりもお前の手当のほうが先だ――」
「いや、俺はいい。それよりもあれの目的は……ここじゃあない――。
やつらの目的はシェトランド人――早くしないと手遅れに――」
アーシェリスは口を挟んだ。
「シェトランドだって!? でも、なんでリベルニアに……?」
クレンスが言った。
「兄さん! リベルニアはネルパート島のすぐ北だよ!」
レイガスは付け加えた。
「ネルパートのセイバル人は……しょっちゅうリベルニアを出入りしている、交流が盛んなんだ。
セイバル人はシェトランド人を貶めるための技術を――確立しつつある……らしいが――
媒剣術の技術を悪用して――それがいよいよ現実のものに――
俺が調べた中では……そんな感じ――らしい……」
そんな!
「レイガス! もうしゃべるな! 後は俺たちに任せろ!」
「ああ、頼んだぞ……早く行け、リベルニア――。
俺はここで休んでいる……早く会って、仲間と合流し……ろ……」
レイガスは倒れた――
「レイガスっ! だめだ、死ぬな!」
しかし――
「ティレックス……そう思ったら頼むから寝かしてくれよ、
こう――しばらく倒れていると落ち着くんだ、流血ももう少しで止みそうだし――
辛いのは辛いが意識もはっきりしている感じだし、
それに救援を呼んでいるからお前は早く行くんだ――」
「えっ――あっ……ああ、それは悪かったな――」
なんだか意外と大丈夫そうだった、アーシェリスたちも心配したが大事には至らないらしい。
さらに監獄の中の人を助けようとしたが、
なんとか無事だったリベルニアの兵士もいたし、それに何より監獄の大部分が地下にあったこともあり、
地下のほうは火事による被害は少なく、心配をするほどではなかったようだ。
アーシェリスたちは気になっていたことがあった、ここまでの出来事を見るに当然と言えば当然だが――。
「ティレックス……”君”、でいいかな?」
「まあ……年上みたいだから別に好きに呼んでいただければ」
ティレックスとバディファは話をしていた。
「そうか、それなら遠慮なくティレックス君と呼ばせてもらおう。
何故、キミらアルドラスティスはこのリベルニアに?」
リベルナ監獄での出来事が起こっているような場所にどのような用事があるのだろうか、
そういう意味では気にならないわけがない。
しかし、当のティレックスは首をかしげて考えていた。
「いや、実は俺もよくわかっていないんだ。多分、俺が一番よく知っていないかも。
さっきのレイガスなら事情は知っているんだろうけど――」
分かっていないというのは……ティレックスは話を続けた。
「俺はそもそも、ここで仲間と合流しろっていう話をアール将軍から訊いただけでしかないんだ」
「合流する?」
「そう、それしか訊かされていないんだけど――参ったな――」
そして、とうとう此度のレイガスの負傷によって、
ティレックスさえも予想だにしないことが起きていることを改めて知らされることになったということだそうだ。
「さっきの人、大丈夫だったのかな……?」
クレンスが心配していた。
「ああ、あいつが大丈夫というのなら大丈夫だろう、
一緒に戦場を切り抜けてきた仲だし、ああ言う以上は信用するほかない」
「そっか、仲間ってそういうもんなんだね」
「そうだな、あいつとは幼馴染で、それ以来の親友だからな――」
幼馴染――アーシェリスたちには思うところが勿論あった。
「ねえ、兄さん――」
「そうだな! フェリオースも――多分、何かわけがあって非行に走っているだけなんだろう、俺はあいつを信じている!」
「私もだよ、兄さん!」
そうとも、フェリオースは”エクスフォス・ガラディウシス”に加担するようなやつじゃない!
アーシェリスはそう意気込んでいた。