エネアルド政府は今回の一件をもとに、”エクスフォス・ガラディウシス”という団体に注意せよという喚起と厳戒令を敷くことになった。
そして、それと同時に”エネアルド調査団”の発足を開始、”エクスフォス・ガラディウシス”を倒すための機関が設立したのである。
そのメンバーにカサードを撃破したアーシェリスが選ばれるまでにはそう時間はかからなかった。
なんといっても、あのアール将軍ともパイプがあるのだから、選ばれないわけはなかった。
ということはつまり、同時にクレンスやフェリオース、そしてラクシスも選ばれたのである。
他にも1年前の旅で同行したメンバーも選ばれていたのだけれども、
こういう状況が状況なだけにエネアルド内でもだいぶ混乱が続いており、表立った行動ができずにいた。
1年前にはそもそもシェトランドとの衝突もあったぐらいなのだから、
エネアルド内もほぼパニックと呼ぶに等しい状況であった。
そして、そんなエネアルドの状況の中でアーシェリスとクレンスはアール将軍に呼ばれ、急いでガレアへと向かうこととなった。
「やあ、クレンスさんと……アーセナスだったっけ。」
「アーシェリスだ。いい加減に覚えろ」
「あっはっはっは、悪い悪い。それよりだ、”エクスフォス・ガラディウシス”に注意しろって発表されたんだよね。」
「はい! アール将軍様! そうです!」
アールは黙り込み、その辺歩き回っていた。
「おい! なんなんだよ!」
「ああ、うん。エネアルド政府はそもそも”エクスフォス・ガラディウシス”を知らなかったのかなと思って。」
それはどういうことなのだろうか、アーシェリスは訊いた。
「まあ、恐らく――知らないんだね。知らないというより誰かが握りつぶしているようにも思える。」
どういう意味だろうか。
「握りつぶしている?」
「うん、クレンスさん。”エクスフォス・ガラディウシス”、ガラディウシスというのは”グラディウス”の意、
つまり、古い時代の戦争で使用された小ぶりな剣のことだね。先陣切りの小剣としても利用された、
そこから転じて、エクスフォスの先兵というのが”エクスフォス・ガラディウシス”の存在理由さ。」
「へえ、博識ですね!」
アーシェリス的にはそんなことはどうでもよかった。
「で、問題はここからで、ここから先の話はオフレコにしてほしいんだけど約束してくれるかな?」
どういうことだろうか、2人は息をのみ、約束のもとに話を聞くことにした。
「実はその”エクスフォス・ガラディウシス”、
かつてのエクスフォスの時代に存在していた秘密結社”エクスフォス真教”の教えのもとに存在していた、
過激な思想を持つ要注意な組織なんだ。」
ん? ということはつまり――
「そう――だからエネアルド政府がそんな要注意組織の存在を知らないハズはないんだ。
それを踏まえて考えると、今回いよいよカサードが表に出てしまったから慌てて厳戒令を出して注意喚起を促した、そういう意図に見えなくもないんだ――」
さらにアールは話を続けた。
「今説明したように、”エクスフォス・ガラディウシス”についてはエネアルド政府が知らないハズはないんだよ。
だから、カサードが”エクスフォス・ガラディウシス”として行動していたというのなら、
彼が起こした事件の起きたその当時からしっかりと見張ってしかるべきだというのが私の感想だけど、どうだろうか?」
確かに言われてみればその通りである。
「だから、当時はそれを誰かが握りつぶして知らないことにした、ということですか?」
クレンスはそう聞いた。
「そういうことになりそうだね。
となると、それはエネアルドにとって、とても驚異的なことだ。
資料を見つけたからあとで渡しておくけど、あの教えは殉教的な面があるみたいだから気を付けたほうがいい。」
殉教……宗教のためなら死をもいとわない――自分だけでなく、相手にもそれを求めるとでもいうのか。
いや、その相手というのはおそらく言うまでもないだろう、エクスフォス自身に死を求めているといった感じなのだろう。
そう、”エクスフォス・ガラディウシス”の目的――それは”エクスフォスを滅ぼすこと”なのだから。
「それにしても、その情報はどこで仕入れたんだ? 資料って?」
アーシェリスは疑問だったので聞いてみた。以前にガレアで調べものをしていた時はそんな情報はどこにもなかった。
いや、ガレアにはもっと他にも情報があってもいいと思う、だからアーシェリスには与えなかったという可能性もある気がする。
「大陸側の歴史についての情報はだいたい大陸側に転がっているからね。
特に今の情報はルシルメアの某レジスタンスが持っている情報だよ。
当然、私の信用にかかわる話だから、某レジスタンスの情報ということで勘弁してもらえると嬉しいね。
少なくともうちではないことだけは確かだ。」
そうですか。