エンドレス・ロード ~プレリュード~

エクスフォス・ストーリー 第2部 追い求める者 第3章 花と大地と風の都

第33節 激突

 カサード=エニセウス――そうだ、こいつは通称”分身剣”の使い手だ。 媒剣術の極意を応用し、自らの”ファントム(虚像)”を作り、襲い掛かる――アーシェリスと対峙しているのは3体のファントムだった。 単体あたりの能力はそれほどでもないとはいえ、ファントムの攻撃に対しても、しっかりと受け身を取らなければやられてしまうだろう。
「ふん、所詮はガキだということだ、その程度の腕で私より優位にたったと思ってもらっては困るな」
 黙れ、俺は別に優位に立ったというつもりはない! アーシェリスはそう思いながら奴の複数のファントムをすべて振り切った。
「ほう? 面白い、ガキのクセに――意外とやるものだな。だが……まだまだあるぞ、これならどうだ――」
 今度は10体のファントム、これは流石に厳しそうである。
「さて、トドメといこうか、こんなところで油を売っている暇などないのでな」
 10体のファントムが一度に襲い掛かってきた! しかし――
「! 何だ!?」
 アーシェリスは10体のファントムをまとめて始末した。 風の媒剣の技でファントムを生成し、カサードのファントムをまとめて切り裂いていたのである。
「カサード! そんな小手先の技で俺は倒せないぞ!」
「……やるな。そうか、貴様もファントムを使用できるのか――ガキの分際でなかなか高度な技を使いやがる」
「俺のはただのファントムじゃないぞ! 行け! 風よ!」
 立て続けに複数の竜巻を巻き起こし、カサードへと襲撃させた。
「こっ、この極意は! 属性こそ正反対のいいところだが、まさか――」
 その技はエルテン仕込みの媒剣の極意だった。 お前程度の使い手にやられてたまるか、アーシェリスはその一心で渾身の剣術を繰り出した!
「くくくっ、いやいやいや、この程度の技で、この私がやられるとでも思ってか!」
 ところが、そんなカサードの胸を、一筋の閃光が貫いた――
「なっ、なん……だと……!?」
 ファントムの攻撃の後に、アーシェリスはすべてを一点に集中させた必殺の一撃でカサードの身体を貫いたのだった。
「まさか……こんなガキ相手に、この俺が――そんな、バカな――」
 カサードはその場で崩れ落ち、絶命した。

 後日、アーシェリスはもちろん、大勢の人がラクシスの家へ赴いた。 ラクシスの祖母のために盛大な葬式が行われていたのである。
「ラクシス――」
「アーシェリス……俺さ、とにかく連中が許せないよ」
 連中とはカサードが言っていた”エクスフォス・ガラディウシス”と呼ばれる団体である。
「カサード1人が仇、というわけではないんだな。 何をたくらんでいるのかはわからないけれども、ともかく目的はすべてのエクスフォスの殺害だとでも言いたいようだった」
 ラクシスの一家は全員シェルフィス人だが、 ラクシスのお祖母ちゃんはどうやら自分の家に訪れていたエクスフォス人を護るために犠牲になったようだ、なんと気高いのだろうか……。
 ともかく、防げるかどうかはわからないけれども、やつらを止めなければ次の被害者が現れる――それだけは確かだ。 しかし、すべてのエクスフォスを殺害とは本気でそんなことをやってのけようというのだろうか、 正気の沙汰ではないことは確かである。
「だから、俺も……エルテンの島へ連れて行ってくれないか?  俺も自分の技をもっと磨きたいよ、復讐といわれようが何でもいい、 とにかくやつらを止めたいんだ、お祖母ちゃんみたいに俺ももっと役に立ちたいよ――」
 ラクシスはお祖母ちゃんっこだったからな。 ラクシスも両親を早くに亡くしているが、その要因はアーシェリスと同じだった。
「ラクシス、とりあえず今は一旦落ち着くんだ、まずは一旦落ち着こう、な?  その後のことは後でいい、今は”ソウル・ディパーチャー”らしくお祖母ちゃんを弔ってやれ、な?」
「それもそうだね、わかったよアーシェリス、今はそうする――」
 ラクシスは大丈夫だろうか? それにしても一つだけ気になることがあった。
「兄さん、どうしたの?」
 アーシェリスは周囲を見渡すが、やはりあの姿が見当たらなかった、それは――
「フェリオースって見なかったか?」
「本当だね、フェリオース君いないね、どこ行ったんだろう?」
 こんな時にどうしたのだろうか、非常に気になるところである。