アーシェリスはイールアーズに連れられて、ガレアの軍艦が駐留しているところへと赴いた。
「”ケンダルス”に出る予定はないのか?」
イールアーズはガレア軍の兵隊であるディライザにそう訊いた。
”ケンダルス”とはルシルメア大陸の北東端にある都市の名前である。
ティルアからは東へまっすぐ船を出せばたどり着くだろう。
「乗りたいのか? ちょうどよかった、実はこれからケンダルス方面へ向かう予定だ、乗りたければ乗っていくといい」
「そうか、悪いな――」
意外だな、あのイールアーズがガレアの軍とパイプがあるなんて。
「利用出来るもんは利用しとくもんだ、やつに言われたからだ」
「そうなのか」
「……というのは理由の一部で、普通の定期便に乗るとたまに変なのがつっかかってくるんでな」
確かに”鬼人剣”とかいう二つ名で通っていると何かと面倒なことがありそうなのは想像に難くない。
そして、船はケンダルス方面へ向けて出航した。手始めに、まずはレザレムへと立ち寄ることになる。
「久し振りだな、レザレム」
「そういえばそうだな、お前たちと以前に再会したのもレザレム付近だったか」
そうだ、確かに、アーシェリスがイールアーズと最後に会ったのは1年前、レザレムから近い宿場町のドゥラスだった。
「そういえば何故オウルに?」
イールアーズの目的、ひとまずはオウルに行くことらしいが、気になったため訊いてみた。
「ワイズリアからのお達しでな、寄ることになったんだ」
えっ、オウルにワイズリアがいる? アーシェリスは驚いていた。
「何を驚いているんだ? あそこはあいつが開いたところだ、何もおかしくはない」
そういうわけではなかった、1年前の旅もワイズリアにあうことが目的だったけれども、
当時は結局会うことはかなわず、代わりにアールに会うことで目的を果たせたのだ。
そうか、ようやく会えるのか、期待をしているわけではないが、アーシェリスには何かこみあげてくるものがあった。
「あいつに訊けば、俺たちシェトランドのことを話してくれるだろう」
アーシェリスがオウルに立ち寄ることになる理由が判明したようだ。
とりあえず、レザレムまで到着すると、ガレア艦はしばらく停泊することになっていた。
「出発は3時間後だ、それまでに戻ってきてくれると助かる」
「それまでには戻る」
それにしても、イールアーズはケンダルスというところまで何をしに行くのだろうか。
「俺のことは詮索不要だ」
別に知りたいわけではないが、はなっから教えてくれる気もないようである。
そのまま魔物をぶっ飛ばしながらドゥラスへとたどり着いた、
イールアーズの戦い方、やはり、アーシェリスとは比較にならない。
「何をしている、置いていくぞ」
「ちょっと待ってくれ――」
なんとか魔物を倒したアーシェリス、とりあえず、一息つこうとしていると、
そんな状況をよそに、イールアーズは手早く先に進もうとしている。
クラフォードやアールとは偉い違いだ、こいつ、自分の事しか考えていない。
「さて、特に何もなければ、このままオウルへ向かうが、いいか?」
そして展開が早過ぎる。
とにかく、ドゥラスの前までついてこの状態なのだが、そこでは特に何もすることはないので、別にさっさと進むことに依存はない。
そういうと、イールアーズは何も言わずにさっさとオウルへと向かった。
「だから、待てってば――」
アーシェリスは息切れをしていた。