兵器生産中の工場を抜け、話を続けた。
「あくまで魔物退治用の兵器か――」
ガーティはそう言うとアールが話した。
「何かと物騒な世の中だ。
それこそ、魔物の群れをけしかけようとしている勢力もいるぐらいだ、誰かがそれに対抗しないといけないわけだ。
そうなると、こんな軍事力を誇示している国だからこそ、それに答えなきゃいけない義務があるってもんだ。
それに――平和的に解決したいけども、なかなか受け入れてもらえない変な世の中になっちゃったからね。」
アールの顔はちょっと厳しかった。まさにその通りだった。
シェトランドと衝突したあの戦い――あれだって本筋を見ればやっていることはほとんど一緒である。
エネアルドらのやった行いも反省するところは多分にある、帝国だからなんて言っている場合ではなかった。
「だけど、ディスタード帝国は非難されても仕方が無いという考えはあってもいいと思うよ、
反面教師というか、教訓にしてもらってもいいかもしれないね。」
帝国の四将軍の言うこととしてはどうかとは思った。
「さて、私はエイジ君にやってほしいことが山ほどあるからここいらで失礼するよ。」
すると、エイジは舌を打ちながら言った。
「あのな、帰ってきたばっかなのに今度はソレかよ」
「まあまあ、もんくはいわない。平和への道のりは厳しいんだよ、エイジ君。」
とか言いながら2人は去っていった。
「あの2人は雑用時代からの仲ですからね」
ジェタが言った、そういえばルシルメア港でもそんな話を聞いたような――あのエイジという人が同期の人だったのか。
そんなこんなで、6人にとってガレアでの滞在中はなかなかよかったものだったようだ。
まず、ガレアの特徴として、なんといってもあちこちに花壇が多いこと。
「そういえばこれ、なんの花が植えてあるんですか?」
ユイがジェタに訊いた。
「ええっと――ちょっと分かりません。
結構いろいろと植えたので、どこに何があるかまでは――」
場所によってはチューリップが立派に咲いていたりする。
何がどことまでは特に決まっていないらしい。
「以前のガレアは荒廃した土地に朽ち果てたような家々が立ち並ぶ、
非常に荒んだ町でした。しかし、今はどうでしょう――」
とジェタは言うが、今や非常にきれいな町にしか見えなかった。
中央には立派な噴水広場、きれいに整列されているレンガの花壇、
そして、その両脇には現代的でキレイに立ち並ぶ建物の数々、
その所々に配備されているロケット・ランチャーを武装したトラックも逆に味があるように見える。
「実はガレアがこうなったのは、アールさんが副将軍になってガレアの任についてからなのですよ」
つまり、アールがガレアを変えたのだという。
今や観光に行ってみたい場所のベスト5位を誇る場所としても有名だが、
戒厳令がしかれてからというものの、ここへたどり着く手段はこの6人がやってきたようなルートを置いて他ないらしい。
ほんの一時期は普通に帝国へと観光にこれたこともあったようだ。
「花を植えるって発想がいいよね! これもアール将軍様の発案?」
クレンスがジェタに訊いた。
「もちろん、そうですよ。”クラウディアス”や”スクエア”から取り寄せたものですよ」
出た、クラウディアスとスクエア。
スクエアはここよりもっと西のほうにある都の名前で、
観光に行ってみたい場所の2位、もはや指定席のようなもの。
また、”クラウディアス”は1位の指定席で、確実にここを置いてほかないだろう。
ちなみに、クラウディアス大陸は帝国の西のほうにある。
おそらく、この6人の中で1位にも2位にも行ったことのあるのは誰もいないことだろう。
それにしても、この6人はルシルメアにいたときよりも長くガレアに滞在していた。
なんだかよく分からないけど、ここでは結構多くの帝国兵と知り合えたようで、
いずれもみんないい人たち――誰もが安心していた。
しかし、それでも別れは訪れるものだった。
それは、アール将軍がガレアからエネアルドへ直接進路を取るルートをエネアルドの政府へとがんばって交渉していたらしく、
とうとう実現したことにあった。