エンドレス・ロード ~プレリュード~

エクスフォス・ストーリー 第1部 未熟者たち 第2章 無力さ

第10節 森の狐

 3時間後、6人はギルドへと再集合した。
「アーシェリスは何かつかんだか?」
 フェリオースは訊いた。
「俺は……シェトランドじゃなくてエクスフォスの話を聞いた。 俺たち以外にもあちこち捜しているやつがいるらしい。 名前は確か……”ガレスト”と言ったかな」
 アーシェリスはレジスタンスからその情報を聞いたようだ。 別名”レジスタンス街”と呼ばれる区画は住居すべてがレジスタンスのアジトらしく、 一般住民らしき人も全部何かしらのレジスタンスに属しているという。
 話に出たエクスフォスの動向も気になるところだけども、”レジスタンス街”の存在のほうが驚きだった、 帝国に対してそれほど大きな抵抗があるのだろう。 直接的な活動はしていないようだけれども、住人全員が抵抗しているのだ。
「俺もレジスタンスからの情報で同じ話を聞いた」
 フェリオースもレジスタンスからの情報だ。 ”ガレスト”、アーシェリスもフェリオースも聞いたことがあったような気がする名前だった気がしていたが、 2人ともどこで聞いたのかは忘れた。
 ちなみにガーティも同じ情報を聞いたようで、”ガレスト”もどこかで聞き覚えのある名前らしい。 ということは、それだけエネアルドでは有名なのだろうか。
 一方で、ラクシスの情報はまさにシェトランド人の情報だった。
「レジスタンスが関係しているのかは知らないけど、 シェトランド人が決まったところに出没していたらしいよ」
 その場所はレジスタンス街……それよりももっと町の外れへ行くらしく、詳細まではつかめないらしい。 ただ、そのシェトランドが雷虎らしき人物であることは間違いないのだろうか。
 そして、女性陣2人は大胆な行動に出ていた。
「私たちは”レジスタンスは大小さまざまなれんちゅーがいるけど、 なかなか尻尾を出さないような組織もある”ってところを調べていたのよ」
 ユイはそう言った。なんと、2人はその大きな組織の存在をつかんできたと言う。
「クレンス、またお前はムチャするな――」
 と、アーシェリスは言う。
「それより聴いて! この町には名前こそ有名だけど、その存在実態がつかめないレジスタンスがいるらしいのよ!」
 クレンスはそう言った。非常に危険臭い匂いがしてきたが、次のユイのセリフで、6人がそれに挑むことになろうとは。
「そのレジスタンスというのが”フォレスト・フォックス”っていう名前で、 その団員らしき人物と雷虎らしき人物が町の外れで会ったのを見た人がいるというのよ!」

 ”フォレスト・フォックス”、通称”F・F”はこの町でもかなり有名なレジスタンスの名前で、 帝国との和解の席では、そのリーダーが同席していたこともあったらしい。
 その日はこれ以上の収穫も無く、日も落ちてきたので、6人は宿をとることにした。
「F・Fはなかなか尻尾を出さないみたいだね」
 夕食の後、ラクシスは話をし始めた。
「何か作戦みたいなものはないだろうか」
 フェリオースは考えながら言った。
「多分、俺たちみたいな連中にはそう簡単に姿を現さないだろうよ」
 ガーティは残念そうにそう言った。確かに、そんなに簡単に姿を現したら苦労しない。
 ところが、しばらくすると、クレンスが別の情報をもってきた。
「簡単に姿を現すみたいだよ!」
 それはどういうことだろうか。クレンスは話を続けた。
「F・Fの団員らしき人が木曜日の決まった時間に国会の前に現れるんだって!」
 なんと簡単に、そんな話でいいのだろうか、決まった日に決まった時間でって――
「木曜日、明日じゃないか、やるならそれしかないな!」
 アーシェリスは言った。
「本当に大丈夫かな?」
 ラクシスは言った。
「そうだよね、そう簡単にいったら苦労しないかもよ」
 ガーティも慎重な意見だった。
「そうだな、念には念を入れて、ラクシスとユイ、それからガーティは援護でいいかな」
 アーシェリスは言った。全員でそれに同意すると、6人は早速明日に向けて十分睡眠をとることにした。

 そして運命の日、ルシルメアの統治機構の中枢である国会の前の噴水広場には、大勢の人々が集まっていた。 そして、肝心のF・Fの団員は、なんと堂々とその場所にいた。 しかし、周囲の人ごみが非常に多く、なかなか話し掛けられそうに無い。 連中が帰るところを見計らっていくべきだろう。
「やあどうもみなさん、解放まではまだまだ長い道のりですね、 まあ、気長にがんばりましょうかね。」
 男はテレビの取材にもていねいに受け答えていた。
「本当に武力行使はしないのですか?」
「そんなことしたら死人が大勢出ますからね、それだけは避けたいです、暴力は良くない。 確かに”やれやれ!”って声は少なくありませんし、中には帝国相手にそれでは生ぬるいのでは、 帝国を追い出すためなら命など惜しいもんかとか――そういった声もありますけど、 帝国の武力を考えれば返り討ちにありますから下手なことはできませんし、 たとえどんな理由であれ命はそんなに簡単に投げ捨てるべきものではありません。 だから今の方法で落ち着いたことを考えれば最善の策だったんじゃないかと。」
 取材者は続けて質問していた。
「F・Fは帝国に屈した、という声もありますが?」
「うーん……そう言われると辛いところだね。でも、そう言われても仕方がないところはあるかな。 帝国の武力は相当のものですから、死人を出さないためにはある程度の要求を飲むのは仕方がないことですからね。 ただし、とはいっても向こうにもメンツというのがありますからね、 それを保つためにはこちらの要求についてもある程度飲んでくれないことには向こうも示しがつきません、 我々が握っている手綱はそこですね。」
「なるほど、つまり帝国は素直に応じてくれる、と?  だから戦争をする必要はないということですか?」
「前にも言ったとおりだけど、ディスタードには話のわかる将軍さんがきちんといるんだ、 それに、これは我々ルシルメアの民だけの話じゃあない、 仲間はたくさんいるから、あとはそれに対してディスタードがどう動くかだけだよね。 ルシルメア民の恨みは確かに深いけれども、それを言ってても仕方が無いよ。 それこそルシルメアだけ宣戦布告してディスタードを攻め入れば、 やっていることは帝国と大して変わらないって言われて他所の国から批判を受けるだけだ、そうしたら元も子もないよ。 だったら他国と足並みをそろえてディスタードをどうするか――考えるべきはそこかもしれないね、 それがたとえ武力行使をしたいにしてもあちらとは圧倒的な差がある以上、結局はルシルメアだけで収められることではないよ。」
 F・F団はあくまで平和的な解決方法を模索しているようである。
「RBCさん、他に質問はないのかな?」
 F・Fの団員の男は取材者に訊いた。
「ああ、そうそう、あなた方を捜しているエクスフォスがいる、との噂を耳にするのですが、彼らとの接触は?」
 何と、6人のあんな小規模な散策程度で、もうエクスフォスのことが噂になったとでもいうのか、彼らは驚いていた。
「うん、噂はかねがね。だけど、まだ会って無いよ。 無いけど、多分――私たちがここにくることを知って今日あたりに襲撃にくるかもよ、何をしに来るのかはなんとなく予想がつくけど。」
 男は笑いながら答えた。予想がつく? どういうことだ? まさか――
 すると、男の後ろの団員が腕時計に指を差し、男に知らせた。
「あっ、ゴメンね、もうそろそろお暇しなくっちゃ。それじゃあ続きはまた今度。」
 というと、男は早々に立ち去った。現場の人々に見送られながら去っていく。
「どう思う?」
 フェリオースはアーシェリスに訊いた。
「……やっていることは形だけの組織なのだろうか、それとも本気でやっているのだろうか?  といってもルシルメア独立の立役者なんだろうから疑う余地はなさそうだけど――」
 フェリオースも同じようなことを考えていた。 現状のルシルメアとしてはディスタード帝国との武力衝突が優勢らしいが――帝国の武力は並ではい、島国なのに。 だから直接対決は避けたいところ、ごもっともである。