アーシェリス、フェリオース、クレンス、ユイ、ガーティ、ラクシスの6人はエネアルドから出発した。
彼らは出発前は高校生だったが、先の戦いでシェトランドと衝突し、
多くの犠牲者を出すと、学校は無期限の休校となってしまった。
同時にエネアルドの政治情勢もあまり芳しくない方向に向いていて、なんとも言えない状況が続いているそうだ。
政治といえばシェトランド人についてだが、彼らは国というものを持たず、独自の文化を形成し、民族内の秩序を守り抜いてきた種族だ。
それゆえに他の国との政治的な部分には関与しないということでもあったが、
彼らの主力商品たる”力”や”技”は戦争の道具としてのみ使用されたことはあった。
その一方でグレート・グランドの主であるハズのシェトランド人リオーンはどうしてその立場に立ったのかは分からない。
まあ、彼自身は直接政治的なところに(最終決定権はあったにしろ)深く関わらない立場ではあったが。
しかし、逆を言うとシェトランドはほかの民族とはあまり関わりあいたくないという閉鎖的な種族、
もしかしたら、シェトランドに対する関与を防ぐためにグレート・グランドの主になっていたのかもしれない。
最初はシェトランド人がいるであろうグレート・グランドにて、目的である雷虎ワイズリアを捜しに来た。
ティルア自衛団によれば、自衛団員のバフィンスが知っているというから訊ねると、次なる目的地はルシルメア大陸に逆戻り、
結果的には大陸内で最も大きな都市である”ルシルメア”に行くこととなった、
どう考えても最初に出発したエネアルドから出発したほうが早くつく。
しかし、今回ばかりはそうもいかず、西の玄関港であるレザレムから陸路で目指すことにしたのである。
陸での旅は彼らに大きな試練を与えた。
長い旅路、そしてそこに現れるモンスター、そして町や村やその文化――
そして、ある程度の町に着くと、大変心強いものが登場した。
「学生さん? 免許は持ってるの?」
「俺は持ってないなあ、移動はいつもお客さんが出してくれるからさ――」
ラクシスは悩んでいると、アーシェリスは自分の免許証を提示した。
「いいよ、まだまだペーパーだけど俺が運転する」
道のりは舗装されていない悪路が続くが、
四輪駆動の乗り物を借りて進むことで、ある程度は楽になった。
「アーシェリス、次は俺が運転する。疲れただろ?」
「ああ、フェリオース、悪いな」
「そんなことはいいから一旦止めるんだ」
えっ――運転を止めた時、アーシェリスは気が付いた。
「追い回される前に片付けるぞ」
移動が快適になったかと思いきや、魔物との戦闘での苦労は解消に至らなかった。
何と言っても悪路続きで、あまりスピードが出せず、場合によっては遠回りをさせられるなど、
危険度についてはそれほど変わりがなかった。
それから進むこと数か月、
普通に高校生活を送っていたらアーシェリスたちはみんな学年が一緒(あえて言っておくが、アーシェリスの妹クレンスも同い年)で、
2期目の中盤真っただ中にある中間テストの時期だったハズで、
ちょうどその日に当たる時期にようやく大都市ルシルメアにたどり着いた。
ルシルメアの町はかなり広い。
大都市ルシルメアはルシルメア大陸中央の森の中にあるのだが、
それを感じさせないほど広い大都市だ。
アーシェリスらのようなものは間違いなく田舎者扱いを受けるだろう、
そう思わせるような景観だった。
外は分厚い城壁、大昔は城塞都市として繁栄していた”ルシルメア王国”の城下町の一部だったこの町だが、
かつてのルシルメア王国は見る影も無く、今や完全な民主政治で成り立っている。
一昔前にはディスタード帝国が植民地にした歴史もあるが、
ルシルメアには反帝国組織”レジスタンス”が多く存在し、組織の大小を問わずディスタードに解放を求めていた。
そこでその話に応じたのが帝国の四将軍の一人とされる”アール”だった。
そいつは交渉については穏便に進むように配慮し、
ルシルメアの条件をのみつつディスタード側からも必要な要件を提示して、うまい具合に解放への話に持って行ったんだそうな。
それに、彼の管轄するディスタードの”ガレア領”自体が他の国にも評判が良かったということもあってか、
その場は不思議なほど穏やかに決着したという――この将軍は外交担当か何かだろうか。
しかし、アール以外の将軍はこのことをあまり快く思っていないという噂もよく耳にする。
「これは――迷子になりそうだな……」
非常に大きな都、6人は呆然としていた。
町に入るとまずは商店街――人ごみが非常に多く、車が通れそうな道はなかった。
「どうすればいいのかな?」
こんな町の中で”ワイズリア”の手がかりを捜すのは非常に困難であることが予測される。
情報の基本は酒場か? それよりも先にハンターズ・ギルドへ行っておこうか?
ということで、6人はまずギルドへと直行した。
「エネアルドからきたのか。わざわざ遠くからご苦労なこった」
受付に話をすると、コンピュータから6人のことを検索するや否やそう言った。
「それで、エネアルドからなんのようだ?」
彼らはとあるシェトランド人の足取りを追っている。
この町にそれらしき人物がやってきたらしいのでこの町で情報を探している、そのことを話した。
「シェトランド人……この町に来ていたら珍しいかもな」
ということは、知らないということらしい――
「まあ、そんな話をここでするよりかは他の連中に当たったほうがいいかも知れないな」
受付はさらに話を続けた。
「ここはルシルメア、レジスタンスの町だ。
彼らは各人で様々な情報を持っている、あちこちあたってみたほうがいいかもな」
あちこちとは言われても、こんな町のどこを探せばいいのだろうか?
とりあえず、ほかのハンターなども知っているかもしれない、同業者にも訊いてみることにした。
手始めに、この受付から情報を訊いてみた。
「そうだな――この町のレジスタンスは大小さまざまな連中がいるがなかなか尻尾を出さねえような組織もある。
つっても命の危険が無くは無いからオススメはしないが――見返りは大きいかもしれねえな」
レジスタンスの規模と持っている情報、それに付きまとう危険度は相応にあるということか。
「もちろん、俺はそんなでかい組織のことまではわからねえが、
堅実に少しずつ知っていそうなやつから当たってみるしかないかな」
というわけで早速6人は各人で情報収集を決行した。
今まで旅をしてきた分の魔物の討伐分や手配モンスターの報酬をもらったりとでお金もそこそこにたまっていた、
これを資金に町へ駆り出した。