フレアはディウラと共にヴァナスティアへとやってきていた。
そこにはラインハルドとリシェルナがおり、あの部屋へと促された。
「そうですか。それで……パンドラ・ボックスは?」
ラインハルドは訊くとフレアは言った。
「パンドラ・ボックスの力は既にロストしてしまった、あれには封じ込める力もない。
激しい闇の力に耐えきれず、ただの残骸となったようだ」
ラインハルドは頷いた。
「もともと封じられていた力がなくなってしまったがためのことでしょうな」
もともと封じられていた力?
「それって何?」
ディウラが訊くとリシェルナは答えた。
「あれの中に”邪悪なる者”が封じられていたのです。
無論、それが人から人へと渡る上でいつしかふたを開けることとなると、”邪悪なる者”がよみがえったのですよ」
なんと、そうだったのか!?
「ということは、あれこそがまさに”邪悪なる者”を完全に封じるための機構だったとか!?」
ラインハルドは首を振った。
「ですが、その対象はアーティファクト、人から人へと渡り、そして”力”の象徴として扱われる代物。
つまり、”邪悪なる者”が復活するのも必然のものであり、そして”邪悪なる者”もまた、
そういう代物に封じられていたからこそ、封印は簡単にとけるものだと考えていた、
つまり、パンドラ・ボックスによる封印は完全ではないことを示しているのですよ」
確かに、封印が解かれるのは必然というわけか……。
「しかし、それにしても、此度はどのように”邪悪なる者”の封印を?
封じているからには、いつかは破られることとなるのでしょうが、その時の策などはおありですかな?」
そこへディウラが訊いた。
「もしかして、緊張しています?」
リシェルナはにっこりとしつつ言った。
「もう、ほんと! ラインハルドさんらしくない!
目の前に運命の精霊フレア様を前にしているからすっごい緊張しているんですよねぇ!
普段だったら同じことを二度も三度も言っているのに!」
え、そうなんだ……フレアは冷や汗をかいていた。
「こ、これ、余計なことを――」
ラインハルドは焦っていた。
カイルは例の幽霊……ローナスと話をしていた。
「ふーん、いろいろとあったんだな」
「もっとも、全部見ていたお前にしてみれば、そんな話をしたところで驚きもしないんだろうけど」
「おいおい、勘弁してくれよ、そいつは見ていればの話だ、見てねえものに関してはまったく知らん!」
カイルは改まった。
「それより、あんた、死んでるんだろ? そろそろ……ってことになったりしないのか?」
「ん? ああ、まあ、そりゃそうなんだがな。
でもまあ、世界のパワーバランスを正すうえでも俺の存在はまだ必要だからな、
といっても俺はあくまで見ているだけっていう役割なんだが」
「見てるだけでも仕事?」
「そういうこったな。
ま、長丁場になることは必至だからな、恐らくお前がくたばってももうしばらくはお役御免になったりしねえだろうがな」
「そうか、それが第4級精霊の務めってことか」
「そうさなあ……第4級精霊の幽霊なんて俺ぐれえしかいねえからな、つまりは俺の務めってことだな」
ローナスは考えた。
「そういや、あの死人は元気か?」
「ん? クローザルのことか? ああ、あいつは元気だと思うよ、きっとな――」