ドラゴン・スレイヤー ~新たなる未来~ 第8章 第194節

第8章 新たなる未来のために

第194節 最後の準備

 クローザルは本を閉じると、そのまま携えていた。
「さて、そろそろ行きますかね」
 カイルは首をかしげていた。
「そういや魔法使いの武器ってなんか杖みたいなのを想像していたんだけどさ、 クローザルっていつも魔法の本みたいなのを持っているよな?」
 クローザルは頷いた。
「魔本ですか? 一応、魔力を高める紋が刻まれているページがいくつかありますから、 一応魔力増強キット的な役割を果たしていますね。 ちなみに、本来魔法使いの杖に仕込まれているはずの媒介なるものも本の背表紙に組み込まれていますね。 ただ、フレアガルディアスの時代では割と使われていた魔具だったんですが、そもそも魔本がオーダーメイドであり、 一部の特権階級の者にしか与えられない代物なんですよ。 だから皆さんの時代では作りやすい魔法の杖のほうが主流……フレアガルディアスよりも杖の性能は上がっていますし、 そもそも杖や魔本なしでも容易に魔法が扱えるような時代にもなっているようですからね、 だから作るのが面倒な魔本なんて恐らく流行らないんでしょう」
 そうなのか、一部の特権階級とは流石は”魔力の渦”とまで呼ばれた使い手である。 でも、今でもクローザルが魔本を持っている理由は?
「私は媒介なしで魔法を使う術に慣れていないので持っているんですよ。 それに魔本を使用するのに慣れているので、この度ネシェラ様に”ローア・アーカイブス”という名のこれを作ってもらいました!」
 そうなのか、名前まであるのは流石というべきか。
「ああ、それとカイルさん、この”ミスリル・ボウガン”を渡すように言われていますのでお持ちください!  使い方は多分変わっていないハズですが、なにか不都合があるようなら私に聞いてくださいね!」
 クローザルは魔法以外に一応ボウガンも扱うのである。
「クローザルの強大な魔法を前にして要るのかそれ?」
「魔法が通じずらい相手ならこっちのほうがいいんですよ? 現にカイルさんも体感されていますよね?」
 ……確かに。むしろ物理が通じにくい敵相手に苦戦したことはよく覚えていた、 特にこの度の最初の頃……今まで自分が苦労していた相手をフレアがあっさりと魔法で敵を葬っていたことを未だに覚えている…… 今では何とか自分の魔法の力も追いついてきているハズだが、それでもやはり彼女やクローザルには叶うまい。
「カイルさん? 大丈夫ですか?」
「あ……いや、何でもない、大丈夫だ――」

 一方で、フレアは弓矢を勢いよく引き抜くと、遠くの敵に攻撃を命中させていた。
「フレアってすごい! あんなのまで扱えるのね!」
 ディウラたちは感動していた。
「私の銃器使いよりも精度高いなあ……」
 パティは唖然としていた。
「プリズム族というのは元来戦闘民族だったということだが――」
 レオーネが訊くとディウラは頷いた。
「ええ、そう訊いているわね。 けど――フレアみたいな女性がいるっていう話はまるで聞いたことがないわね――」
 そう言われてレオーネは考えた。
「つまり、フレアはまさに戦闘民族だったプリズム族の最後の生き残りといったところか」
 メロリーナは感動していた。
「やっぱりフレアお姉様ってカッコイイ! そっかあ!  運命の精霊様とまでなるとそこまでの人でなければ務まらないんだね!」
 と、女性陣とザードの間で沸いている中、フレアは何を沸いているのだろうと首をかしげていた。
「運命の精霊様専用長弓”フェイタル・ディスタンス”はどうよ?」
 ネシェラにそう言われ、そんな名前がついていたのかとフレアは悩んでいた。
「この弓にも私の力が込められているというわけか」
「まあ、そう言うことになるわね。また随分と遠くの的に当てられるもんね。」
「森の中で暮らしていたころは剣よりも弓を引くほうがほとんどだったからな。 ネシェラは使わないのか?」
「私? まあ……使わないことはないけど、でも、トリガー引いてぶっ飛ばしたほうが手っ取り早いしね。」
 まさに文明の利器ってことか。
「なるほど、そう言ったあたりは創造の使い手らしい所だな」
 すると、ネシェラは周囲を見渡していた。場所はアーカネルの廃墟の中まで進んできたのだが――
「いよいよ最後の戦いになるわね。 でも、最後の最後に腹ごしらえしとかない?」
 え、また――
「そうだな、腹が減っては戦はできぬといったところだな。 おそらく、敵は闇の世界に入ってすぐに対峙することになるだろう、そのような予感がする――」
 と、フレアは言うと、立て続けに聞いた。
「というのは建前で、お前の顔に今すぐやりたいと書いてあるぞ」
 やっぱりか……。
「だってぇ♥ 昨日捕まえたお弁当の味が忘れられないんですもの♥  もうちょっと味わったっていいじゃなぁい♥」
「昨日のやつは闇の眷属3体だっただろ」
「3匹全部よ全部♥ やっぱり闇って超素敵♥ このアタシを寄って集って滅茶苦茶にしてくださるのよぉん♥」
 だったらできるだけ早めに食事を済ませてくれないだろうか。まあ、これが最後だと思って――