カイルとフレアは城の上からあの山のほうを見下ろしていた、アーカネルである。
「やはりあそこにやつがいるってことか」
カイルはその町をじっと眺めていた。
「それにしても、余程あの王国に恨みがあるのだろうか、そんな感じさえ思わせるな――」
カイルはさらにそう言うとフレアが言った。
「恐らくそうなのだろう、世界の名前はかつて”アーカネリアス”と呼ばれていたそうだ、
それというのはつまり――」
カイルは考えた。
「つまり、あの国の勇士たちがこの時代の英雄たちだったハズだ、
だから英雄が生まれる芽をつぶしたってわけか」
わかりやすいことで。
「それなら、その流れになるように元に戻してやらねえといけねえってことだな。ということは――」
後にいたバルファースがそう言うとレオーネが答えた。
「その流れに戻すためには私らはもちろん、そしてお前の女の活躍が必要不可欠ということだな」
フレアはネシェラの元へとやってきた。
「私に?」
それは以前の時代のネシェラが作り出した武器一式だった。
「本来あるべきではない時代に持ち込むわけにもいかないからな、
それでネシェラの手に委ねたいという話になったのだ」
なるほど、ネシェラは考えた。
「これは妖刀ね、握っただけで伝わってくる――誘惑魔法の力を備えてんのかしら?」
その効果は――聞いた話での説明はしがたいのだが。
「そうね、ありがたく受け取っておくわね。
でもそれより、ちょっと申し訳ない言い方するけどさ、
その運命の標でこの時代の闇に対抗するにはちょっとばかり力が不足しているんじゃないかしら?」
そう言われてフレアは頷いた。
「やはりそう思うか。
実はここに来る前にエンプレス・アヴァリスの時代に行ってきたのだがそこでも力が発揮できぬようでな、
それに、この時代でもどうも標が――いや、そもそも力自体が縛られている感じがするのだ、
それはこの世界線になる前の時代から感じていたことだが――」
ネシェラは頷いた。
「やっぱりか。
いえ、実は、この世界に長らく運命の精霊様の加護がないのよね。
60億年前にリミット・ブレイクしちゃったんでしょ?
そんなこと、誰も長らく発生していないそうよ。
そこで調べたんだけどさ――」
と、ネシェラはそう言いつつ”精霊石”を取り出した。
「それはまさか!」
フレアは驚いた。
「そう、これが今の時代の運命の精霊様。
つまり、この時代に生まれ出ているはずの”フェリンダ=フローナル”はいないってこと、
”邪悪なる者”の意志によって運命の精霊様は存在しないってことよ。」
なんてことだ。
「だが、その割にはネシェラは生きているのだな?」
すると――ネシェラは暗い顔をしていた、どうしたのだろうか。
「違うのよ、フェリンダは――私を生かすために犠牲になったのよ。
自分の持てる精霊力を……私の託したのよ。
私の血の系譜の者は邪悪を封じるためのシステムを作り上げているから、
そのために彼女は私を生かしてくれた、だから――私は”この時代の彼女”のためにも弔いをしなければならないのよ。」
なんということだ、陥れられなければ潰してしまえということ……つまり、運命の精霊は既に”邪悪なる者”の凶弾に……。
ということはつまり――この時代のネシェラは高級精霊、しかも第2級精霊ということである。
「私の半身は彼女の身体でもあるわけ。だから――」
すると、フレアはネシェラに訊いた。
「真の創造の精霊シルグランディア、私はお前を信じている、
たとえどのような存在であろうとシルグランディアはシルグランディア、私の親友だ!」
それに対し、ネシェラは力強く頷いた。
「フローナル……私に任せて! しっかりと仕事をやり遂げるわね!」
そんなこんなで作戦会議が始まったが――
「あれ? ネシェラは?」
カイルは訊くとフレアは答えた。
「食事中だそうだ。
しばらく我慢していたようでな、でも……グローサルに諭されてゆっくりとしている最中だ、
さっき15体の”エモノ”を引き連れていたしな」
……エンプレス・アヴァリスティの食事――みなまで言うことではないが、
それにしても、なんとも面倒な生態をしている生物がいたもんだ。
「今度こそ”邪悪なる者”ってやつに引導を渡せるのは間違いねえんだよな?」
バルファースは訊くとフレアは頷いた。
「そのように聞いている。
そして、それと同時にかつてエンプレス・アヴァリスが完成させた封印システムによって厳重封印されるらしい」
エンプレス・アヴァリスによる厳重封印……それはそれで怪しいものなのだが――
「封印されているものはいつかは破られるのんでしょ? それなのに、大丈夫なのかなぁ……」
メロリーナは心配そうに言うとフレアは頷いた。
「そこはとっておきの封印だから期待していてほしいということだそうだ」
マジかよ……。