”アナスタシア”とは――聖殿ヴァナスティアにおいても数十年、数百年、
いや……そもそも現れるのかどうかすらわからないとされる奇跡の存在である。
まずはそもそも”ヴァナスティアの聖女”について話さなければならない。
”ヴァナスティアの聖女”というのは、所謂、ヴァナスティアの神を祀る巫女としての役割を担う存在である。
ヴァナスティアが課す特別な修行、特別な儀式を経てようやくなれるという、まさに選ばれた存在である。
また、ヴァナスティアには聖騎士団というのがいる。
ヴァナスティアを守り、時には人々を守るために各地に派遣されることもある聖なる剣の使い手、
それがヴァナスティア聖騎士団である。
そして”アナスタシア”だが、”ヴァナスティアの聖女”であり、
なおかつ聖騎士団の中でも類まれなる天賦の才を併せ持つという究極にして至高の存在、
生きながらにして伝説を語ってもいいほどの存在なのである。
それこそ前任者でさえ現れたのが奇跡とまで称されたような武芸の達人であり、
そして彼女はヴァルキリーとしての才もあった。
そのため、彼女には特別に”ヴァルキリー・ソード”を与えられたというが、
彼女はその剣を一度として振るったことがなかったという。
だが、その剣は此度、ディウラの手に渡ることとなった。
それはあれから1週間過ぎた日のこと、ディウラは発つ前にリシェルナに引き留められていた。
「ほら! 遠慮なさらないでくださいな! 私たち賢者の間で決まったことですから!
ほら! 大きくて重たいって言ってたじゃないですか!?
この通り、ちゃんと職人さんに預けてディウラさん向けにシャープな感じに仕上げておきましたから♪」
いや、あの、その……特別な儀式などしなくていいのだろうか。
それ以前にそもそも自分は聖騎士でもなければ、ましてや聖女などでも……
「これは特別なことなんです!
そうですねぇ……はっきり言いますと、
ディウラさんの力はヴァナスティアも放っておくことができないものだったってことですね♪」
えっ、ヴァナスティア様が……? そう言われるとディウラも考え直さざるを得なかった。
「あなたの立ち振る舞いはまるで教えの中に描かれている伝説の”メシア”その人にそっくりです♪
だから、あなたはかの伝説のメシアの生まれ変わりなのではって考えられていますね!」
そ、そんな――
私が伝説のメシアの生まれ変わりだって!? そんなバカな。けど――
「私が伝説のメシアの生まれ変わりというのなら! その力を示してごらんなさい!」
ディウラは男の群れに向かって切りかかり、
そのままエンプレス・アヴァリスへと向かって行った!
「ディウラ!?」
フレアは彼女の様子に驚いていた。
「キャハハハハハハハハ! とうとうとち狂ったわね! このメス豚!
いいわよ、相手してあげるわ、その代わり……」
エンプレス・アヴァリスはなんと自らの色香を纏いはじめ――
「うっふぅん♥
ほらぁ、あんたたち……このアタシの美貌に傷でもついたらどうしてくれるのかしらぁん♥」
煽情的な動作で周りの男たちを誘惑!
「このメス豚がァ! 美しき麗しい魅惑の女王エンプレス・アヴァリス様に刃を向けるとは何事か!」
男たちは集中的にディウラへと襲い掛かっていた!
「ディウラぁー!」
フレアは彼女のもとへと必至で向かっている! だが――
「ヴァナディース・ホーリー・ブレイク!」
ディウラは背後へと振り向きざまに、自らの剣がまとっている聖なる気が、正面の敵をまとめて一気に吹き飛ばした!
「うわあああ!」
正面の男たちは吹き飛んだ! さらに――
「アナスタシア・ドラゴン・ストライク!」
さらに今度はエンプレス・アヴァリスがいる方向へと向かって剣を振りかざすと、
今度は龍が立ち上るかの如く激しい力が作用し、
多くの男を一度に吹き飛ばした!
「ななっ!? なんですって!?」
その様子にエンプレス・アヴァリスは驚いていた、もちろんフレアも――
「なんだと!? まさか――私の力に感化されたのだろうか、
彼女まで怒りの解放を果たすとは――」
そう、彼女もまた、力を解放したのだった……。