ドラゴン・スレイヤー ~新たなる未来~ 第8章 第185節

第8章 新たなる未来のために

第185節 救世主候補のディウラ

 ある日のこと――
「今日も熱心ですねー♪」
 ヴァナスティアにて、リシェルナがディウラに話しかけていた。
「それを言ったらリシェルナ様こそ♪  いつもいつもヴァナスティアとアレーティアを行き来していらっしゃるのでしょう?」
 そう言われてリシェルナは考えた。
「アレーティアに行きたかったんですけど、いよいよ封鎖されてしまいました――」
 魔族の影響……ディウラは考えた。

 ディウラは訊いた。
「ところで、わざわざお声かけいただけるだなんて何か御用ですか?」
 リシェルナは遠慮がちに答えた。
「いえいえ、そんな! 私とディウラさんの仲じゃないですか♪ もっと気楽に行きましょうよ♪」
 そんなんでいいのかな、ディウラは考えていた。
「まあ、そうですねぇ……用があるかと言われたら……確かにありますけどね」
 え、そうなの? ディウラは訊いた。
「ディウラさん、つい先日、山道に現れたっていう狼を倒されたじゃないですか?」
 え、どうしてそんなこと――ディウラは訊くとリシェルナは答えた。
「聖騎士団の方々が言ってました!  しかもその時の狼って、”テラー・ハウンド”だったそうですね!」
 ”テラー・ハウンド”だって!? ディウラは驚いていた。
「あの真っ黒な狼がそうだっていうの!?  だって、古のローアの時代に存在していた伝説の魔物って話じゃないですか!?」
 すると……リシェルナは考えた。
「恐らく、世界のパワー・バランスが崩れているのでしょうね――」
 どういうことだろう? 当時のディウラは知る由もない。
「と、とにかく、聖騎士団の方々が酷くやられていたのでどうしたのか訊いたらディウラさんのおかげだって言ってたんですよ♪」
「そんなことないですよ!  だって、そもそも途中まで聖騎士団の方々が相手していましたし、それである程度弱っていたんですよ!」
「そうですかー? でも、聖騎士団さんたちは全く歯が立たなかった、 防戦一方で、ディウラさんが現れたときはまさに救世主様メシアが現れたかのようだったって言ってましたよ♪」
 そ、そんなこと――ディウラはひどく謙遜していた。

 またある日のこと――今度はアルカンスタッド平原での出来事である。
「ハンターっていうのも因果な商売よね、全く――」
 それは、とある狂暴化した魔物討伐の依頼をしている時のことだった。 それは大きな角獣という話であり、”タスクライノ”とかそういったありふれた獣の討伐だったはずなのだが――
「依頼は達成ね、私の手柄じゃないけど。 けど、だからって、手柄を横取りした相手をこのまま放っておくわけにはいかないわね――」
 そう、その相手を前にして構えていたディウラ。 そいつは自分の実家のお屋敷ぐらいの大きさにも匹敵するような魔物だった。 その名も”ベヒーモス”……これまで見たことのない未知の敵であり、 もちろんあの”テラー・ハウンド”と同じく伝説に名を遺すような凶獣としても知られている魔物だった。
「これは――覚悟するしかないわね……」

 ディウラは気が付いた、そこはお屋敷の建物の中のようだった。
「ここは――」
 あたりを見渡した彼女、すると彼女の傍らには――
「あっ、ディウラさん! よかった、気が付いた――」
 リシェルナがいた。彼女はディウラにしがみついて嬉しそうにしていた。

 それから数週間後、彼女はすっかりとよくなり、その建物を出ようとしていた、そもそもここはどこなんだろうか。 すると――
「えっ!? ヴァナスティア!? どうして!?」
 どうやらアルカンスタッドからヴァナスティアの病院へと運ばれたようだった。
「ここには聖職者集団もいますから、物理医療と魔法医療の同時を受けていただいたのですよ♪  ご存じだとは思いますが、”ヴァナリアス・オペレーション”というものですね♪」
 そんな! そんなことしてもらえるなんて! ディウラは恐れおののいていた。
「”ヴァナリアス・オペレーション”って”ヴァナスティアの聖女様”にしか受けることができない特別な手術ですよね!?  なんで私なんかに!?」
 リシェルナは頷いた。
「それはディウラさん、あなたはヴァナスティアの……私たち賢者の決定により、 ”アナスタシア”を名乗ることを認められたからですね!」
 な、なんだって!? ディウラは再び恐れおののいていた。