ドラゴン・スレイヤー ~新たなる未来~ 第8章 第183節

第8章 新たなる未来のために

第183節 封印の祠

 フレアとディウラは未来世界のエターニスで情報をつかんでいた。
「エンプレス・アヴァリスは精霊界を追放され、物理世界側にいるみたいね」
 ディウラは言うとフレアは悩んでいた。
「それが、厄介なことに”裁定の精霊”の貞操まで奪い取り、自らの力にしてしまっているようだ。 つまり、真実の精霊の力を使って自分こそが真を名乗って好き放題にしているそうだ。 後の世にネシェラという存在こそがすべてのエモノを確実に従えているのも、 そして予防線として例え闇に呑まれても”邪悪なる者”に対抗してオシオキを決行できたのもまたその力故だったということらしい」
 我欲まみれのエンプレス・アヴァリスでもそこまで考えていたというわけか、 もっとも――我欲まみれゆえに我欲を優先した結果なのかもしれないが。
「エンプレス・アヴァリスは誘惑魔法で精霊界を滅茶苦茶にしているのなら追放を免れることだってできるんじゃないかしら?」
 ディウラはそう言うとフレアは頭を抱えつつ答えた。
「男と戯れることが目的だからだ。 つまり、精霊界のエモノだけに飽き足らず、 物理世界のエモノにまで手を出して食いつぶすつもりなのだろう。 つまり――この時代から世界のシステムが破綻していたと言っていいだろうな」
 なんてこった……話を聞いてディウラは悩んでいた。
「それで――これからどうするの?」
 ディウラは訊くとフレアは答えた。
「この時代のマーシャに会いに行こうと思う」
 封印の精霊……会えるものなのだろうか?
「普段封じられている場所は知っている、そこへ行くだけだ」
 え、そうなの!?

 それはまさかのエターニスの西にある場所、 エターニスのある”彩りの大地”地方は西は北から南まで山脈が走っており、そのふもとに封印の精霊は封じられているそうだ。
「そんなところに封じられていて、どうして私たちの前に現れたの? 普通ならエターニス直行とかじゃない?」
 ディウラは訊くとフレアは答えた。
「封印が解けた場合は物理移動しないからだ、要はいきなり空間を超えて移動するというもの、 封じられている期間はそこにいるというだけのことだ」
 なるほど。

 山脈のふもととはいえ、たどり着くまでには相応に時間がかかる。 しかもたどり着いても封印されており、普通なら入ることもかなわないのだが――
「開いた! マーシャはこの中にいる――」
 フレアはそう言うとディウラは息を切らしつつ言った。
「ふもとと言いながら案外山の中にいるのねぇ……。 それなのに、よくもまあそんな涼しい顔をしていられるものねぇ――」
 そう言われてフレアは考えていた。
「これまでの私はそもそもまずはマーシャを訊ねるところから行動を始めているみたいだしな。 それこそ以前のアーティファクト探しの際にもまずはマーシャを頼ってきている、 その際には扉は開いておらず、止む無く帰っているがな」
 開くかどうかもわからずにこんなところまでやってくるの!?  やっぱり、フレアもまた高級精霊様なりの理解を超えた存在なんだなとディウラは感じていた。

 内部はまさにお堂というか祠のような感じであり、 中央にはまさにクリスタルに封印されたマーシャの存在があった。
「本当にこんな風に封印されているのね――」
 ディウラは唖然としていた。
「よくはわかっていないんだけどな、世界を創造した者がどういう意図で彼女にこのような役を担わせたのか――」
 フレアはそう言う、なんだか妙な世界の創造主だな。
「しかもだいたい決まって彼女にはこれまで世界を救うためのヒントを持ってきている、 例えば、そうだな――」
 例えば――ディウラが言った。
「ローアの時代に伝説の英雄”メシア”に伝説の鉱石”オリハルコン”を授けたって訊いたけど?」
 そう言われてフレアは頷いた。
「確かに、言われてみれば妙だな。 しかもあの鉱石はそもそも精霊界ですら認知しているものではなかった。 ちなみに、あれを”オリハルコン”だと命名したのはメシア本人だった、 なんだか知らないが、メシアはミスリルにオリハルコン、 さらには他にも”ルーン・メタル”に”アダマンタイト”や”ヒヒイロカネ”など―― ミスリルはともかくも、我々精霊界ですら認知していないような金属に名を与えるだけに飽き足らず、 その加工技術さえもものにしているというほどの存在だったのだ。 ゆえに彼女は当時の精霊界においても必要とされ、この世界のシステムを整えていったのだ」
 あ、言っちゃった……当然のごとく、ディウラは訊き返してきた。
「えぇー!? まさか”メシア”って精霊シルグランディアのことだったの!?」
 既に時遅し、うっかりしゃべってしまったフレアは悩んでいた。
「……私がこんな話をしていたことは皆には黙っておいてくれないか?  特にエメローナ、自分の先祖が”メシア”だってことを全く認めていないんだ、 だから……私がしゃべったなんてことが知れたら面倒なことになる」
 確かに――あのエメローナのことを考えると面倒そうだ。だが――
「でも、ほかの誰よりもエメローナが”メシア”だって言われれば納得ね!  しかも彼女のような存在と、フレアのご先祖様の運命の精霊エルフェリア=フラノエルがタッグを組んでいたなんて、 本当に世界を救ったんだってすごい説得力あるし! だったら今回の冒険だって間違いなく成功するよね!」
 フレアは照れていた、確かに歴史は繰り返すというが――ローアの時代の成功は果たして繰り返せるのだろうか。