だが、リシェルナの目論見はそう簡単にうまくいかず。
「え? 新しい武器を? へえ、ヴァルキリー・ソードねぇ……」
エメローナはその剣を眺めていた、すると――
「生憎だけど、今の私じゃあこいつ以上の代物は作れそうにないわねぇ――」
それは、ネシェラ=エンプレス・アヴァリスティが作り出した”セラミック・シャムシール”だった。
「時を超えた分の技術がふんだんに搭載されているコイツを見せられちゃあ流石の私もお手上げね。」
既に彼女の技術を凌駕する代物がある以上は――止む無しか。
だが――彼女がそのようなリアクションをするとは何とも斬新な光景である。
しかし、悔しがっているような感じは一切ない、まさに彼女の末裔による仕事なのだから、むしろ誇りにさえ思っていることだろう。
それに、この時代でこれほどまでの代物があるということはまさにオーバーテクノロジーもいいところ、
それを安易に作り出すのも考え物、だから彼女のリアクションもやるべき仕事もこれが正解なんだろう。
「ああそうそう、これからまた未来に向かうんだからさ、そしたらネシェラに頼んで作ってもらえればいいんじゃない?」
なるほど、その手があったか……え!?
「また未来に!? どういうことですか!?」
ディウラは訊くとフレアが答えた。
「よくはわからんのだが――精霊界にまたゲートが展開されていると訊いたのでな、
おそらくは未来側のネシェラが私たちを呼んでいるのだろう、”邪悪なる者”との最終決戦を行うために――」
いよいよ決着をつける時が来たのか、確かに大賢者様が言うように精霊界に行くべきという話は正解だったらしい。
トガレシアにたどり着いた。沈みかけている町だが、なんだか妙に騒がしい。
「あれ? ディアリスじゃん? どーしたん? 可愛がってあげよっか♥」
あの例のディアリスが現れるとエメローナはそう訊いた、
確かに平常運転だな、どことなくシルグランディア女がタイプそうな男である。
「い、いや、あの――助けてもらえません?」
ディアリスはそう訊くと、後ろからアレイナが現れた。
「あー! エメローナ姉様! ちょっと訊いてください! ディアリスったら酷いんですよ!
仕事やってっていうからちゃんとやったのに、それなのに約束破って次の仕事を平気で頼んでくるんですよ!」
騒がしいのはこの2人のせいか、一行は納得した。
「きちんと報酬は出していますよ! それなのに!」
「報酬は報酬! 約束は約束! ですよね、お姉様!」
するとエメローナはため息をつき――
「はいはい、わかったわかった。で? 仕事ってどんな?」
アレイナが話した。
「最初はアーティファクトの一件からです、アルタリア豪遊していいって言うからやってあげたのに、
最初から頼まれてもいない、エンケラスにいるっていうシェルベリアの人の所に持っていけっていうから持っていったし――
それなのに、そこからまた次々と仕事を頼んでくるし――アルタリア豪遊はどこ行ったの!?」
「忙しくて手が回らないんです! だから報酬を上乗せしているのに!」
そこへディアリスが言い返すと、エメローナは考えた。
「確かに、忙しいとどうにもならない時ってあるわよね。
だったら仕方がない、アレイナ――ディアリスの言う通り、どんどん仕事してあげなさいよ。
それで――終わったらディアリスにじゃんじゃんと奢ってもらいなさいな。
無論、その内容に不満があったらディアリスにクレームつけてもいいし、
それでももんくを言うようなら私に言っていいからね♪」
相談しなきゃよかった――ディアリスはがっくりと膝をついて後悔していた。
「はいっ! お姉様っ! そういうことならいくらでも引き受けますっ!
ほらぁ! ディアリス! さっさとアサインしなさいな! 1週間豪遊ツアーに出かけるわよっ!」
1週間もぉー!? ディアリスはさらに落胆していた。
「な、なあ……豪遊ったって――せめて半分ぐらいは出してくれるんだろ……?」
「何言ってんのよ!? 10-0であんたが全負担に決まってんでしょーよ!
ちょっと頭出たってせいぜい95-5って相場が決まってんだろ!」
見た目に反してなんとも気の強ぇ女性だな、まるでエメローナかエメルナである。
「うぅっ……俺のお小遣いがアレイナの食費で消えていく――」
言うに事欠いて食費! つまりエメローナである。
なんだか妙な2人だなぁ……アレイナはディアリスのことを思いっきり尻に敷いていた。
「あの2人ってどういう関係?」
カイルは訊くとエメローナは答えた。
「兄妹よ。
2人とも職人としての腕は高いんだけど、アレイナのほうが頭二つほど抜け出ているわね。
それこそ、アトレーニアの職人の中では私を除けば彼女の腕こそが最高峰と言われているぐらいね。
ちなみに、新しいドラゴン・スレイヤーを作り出したのはディアリスだけど、
ディウラやレオーネが扱うような切っ先の鋭い代物は全部彼女の作品なのよ。」
すごい女性だな……何人かは舌を巻いていた。
「アトレーニアの職人は女性のほうがすごいのか?」
バルファースは訊くとエメローナは考えた。
「言われてみれば確かに、比率的には女性のほうが職人を名乗っている子が多い気がするわね。」
マジかよ。