ドラゴン・スレイヤー ~新たなる未来~ 第8章 第178節

第8章 新たなる未来のために

第178節 悩める者と見通す者

 だがしかし、このマーシャという精霊、封印が解かれたはいいが、その目的を失っていた、何故なら――
「そうか、歴史改変のせいでウロボロスをあっさりと倒してしまったせいだな」
 フレアはそう訊くとマーシャは頷いた。
「はい。 私は古より生まれ出た”邪悪なる者”やその闇に連なる存在を斃すための力について記憶している存在です。 もちろん、ウロボロスについてもその闇のうちの1つです。 ローアの時代には闇を払うため、”オリハルコン”を時の英雄”イセリア=シェール”に授けたのを覚えています」
 ”イセリア=シェール”? 何人かは首をかしげているが、エメローナだけは悩んでいた。
「って、ローアの時代から生きているの!? 代替わりせずに!?」
 エメローナはそう訊くと説明した。
「この場合の代替わりっていうのはつまり寿命を迎えていないってことよ。 例えばフレアの前は第2級精霊エフェリア=フローナルって言ってたじゃん?  そっから転生して新たにそのエフェリアの精神を継いだ第4級精霊フレア=フローナルが現れたってことよ。 厳密には同一個体ではないけど、でも、はたから見ればどう考えても同一個体…… それが要は代替わりってことになるわけ。ただ――」
 マーシャの場合は……その代替わりがなく、この20億年も生きながらえているってこと!?
「封印されている間は”歳をとる記憶が凍結されている”からですね。 必要な時にしか封印は解かれませんので、私が歳をとるのもその僅かな間だけなんですよ」
 そう言われてエメローナとフレアは気が付いた。
「そういえば人間界に降りるときって疑似転生してたよね?  その際、精霊の時のほんまもんの身体は精霊界に置き去りにしているじゃん?  そん時も精霊界のほうの身体も歳をとる記憶が凍結されるじゃん?」
 言われてみればそれもそうだった、フレアは思い出した。
「しょっちゅう人間界に出ているからか、周りの精霊の顔ぶれも変わっていることがあったな、そういうことか」
 それにしても、20億年まで先――
「20億じゃないね、それこそアーカネリアスの世、つまり80億年先もあんたは現れたみたいだよ」
 と、そこへクラーネアがとんでもないことを言い始めた。
「今更だけどさ、もう、次元の異なる何かって感じしかしないよな――」
 カイルは音を上げていた。
「もう! カイルってそればっか! 目的だけでも聞けばいいじゃん!」
 メロリーナはそう言うとエメローナもまた言った。
「ま、でも、時空を超えた話とかになると”ちょっと何言ってるか分からない”にしかなんないからしゃーないよね。」
 確かに、それもそうだ。
「だからって威張るんじゃないわよ。」
 カイルはそう言われて釘を刺された、だが、威張るわけないだろ……。

 エメローナはマーシャに訊いた。
「ところで……再封印ってされるってことよね?」
 マーシャは悩んでいた。
「おそらく。ただ――自分でもいつそうなるのかまでは把握していないのですよ」
 それは困った。
「ま、言っててもしゃあないわね。それはそうと――リシェルナはどうして?」
 エメローナは彼女に話題を振った。
「私ですか? たまたまここに寄っただけですよ。 本来なら”ウェルドレアード”に行く予定なんですけど、ほら――」
 ウェルドレアードとは……バルファースが言った。
「魔族侵攻で話題沸騰のドーアニス大陸南部、賢者様ってことは目的地は”アレーティア”神殿だな?」
 つまり、渡航困難どころか魔族の問題で行くことすら叶わないということである。
「リシェルナはヴァナスティアとアレーティアを定期的に往復しているのよね!」
 ディウラはそう言った、そうなのか。
「アレーティアに行けなくなってからはせめてバンナゲートにでもって思って行き来していたんですけどねー」
 リシェルナはそう言うとバルファースも言った。
「バンナゲートからでもアレーティアは一応うっすらと見えるからな、なんとも信心深いというか――」
 そこへエメローナが訊いた。
「じゃあ、こういう時に”大賢者様”の力を頼ろうかしら?」
 どういうことだろうか、するとディウラはワクワクしていた。
「リシェルナ♪ せっかくだからアレやって!」
 すると、彼女は――
「仕方がありませんねぇ、アレをやりますか――」
 そう言いつつ祈りを捧げ始めていた……何が始まるのだろうか、固唾を呑んで見守る中――
「ふむふむ、なんとなくでしかわかりませんが―― ”大賢者様”は言いました、精霊界へと向かいなさい、と――」
 な、なんだ!? 急に一体どうしたんだ!? 何人かは驚いていた。
「なるほど……既に”真理”を悟った”大賢者”と意識を通じることで、 ”無限に広がる大宇宙”にいるとされる”大賢者”との会話が成り立つ―― ”大賢者”から無限の知識を得ることにより一部の賢者たちは人を導く力がある―― リシェルナは既にその境地に達しているのだな」
 フレアはそう訊くが、彼女は焦っていた。
「そ、そんな! 私なんてまだまだですよ! まだまだスタートラインに立ったばかりですから!  ”大賢者様”とつながっていること自体がおこがましいことです!」
 なんて謙虚な子なんだろう。