ドラゴン・スレイヤー ~新たなる未来~ 第7章 第172節

第7章 ザードがずーっと目を瞑っていた話

第172節 開眼

 ある程度闇の世界に順応してきたこともあってか、カイルたちは外に出て武器の試し切りをしていた。
「仕事は流石にシルグランディアってか?」
 バルファースは”セラミック・ソード”片手に敵を切りつつ、 これまた新しい銃器である”クラッシュ・ショット・ガン”で敵を打ち飛ばしていた。
「ご機嫌だな」
 フレアはそう訊くとバルファースは答えた。
「まあな。こいつはなかなかいい代物だ、やはりメイド・イン・シルグランディアに限るな」
 異存はなかった。
「それにしても、あんた、その剣でいいのか?」
 バルファースは訊くとフレアは頷いた。
「これか? これは”精剣フェイタル・ロアー”と名付けられた武器で、 大昔にシルグランディアから作られた代物……そう、つまり私が使っているものもメイド・イン・シルグランディアなのだ。 もっとも、その原型はローアの時代にフラノエルが振るっていた”運命の標”という名のただの柱でしかなかった武器なのだがな」
 メイド・イン・シルグランディアなのはともかく、運命の精霊様の持ち物事態の歴史が古いんだなとバルファースは考えた。
「つまりなんだ? あんたがいろいろと精霊界での所業やら昔のことやらを記憶しているのはその標に触れたからとか、そういうことか?」
 そう言われてフレアは考えた。
「……確かに言うように、この標に触れてからの私はなんだか妙だな、本当にそうなのかもしれん。 とすると――もしかして、歴史改変の影響がなければ私は現世において標に触れる機会は訪れなかったのかもしれん」
 そうなのか? バルファースは訊いた。
「あのカルスってやつに襲われたんだっけな、でも――あれに触れなければやばかったんだろ?  そんなことがあったのに正史じゃないって言い切れるのか?」
 フレアは悩んでいた。
「何故かはわからん、わからんが――恐らくクライアスのせいだろう――」
 そう言われてバルファースは考えた。
「確かに、エメローナも言っていたが、ヤツがどうも精霊界のあちこちをかき乱していたとか言っていたな。 それに――最後に消息を絶った場所も気になると――”ユグドラのふもと”といったか?  生命の流れを司るそいつのところでってなると確かになんだかありそうな気がするな」
 フレアは頷いた。
「グローナシアに一度戻った時にも気になっていたんだが、妙に闇の力が濃い気がするのだ。 だからもしかして――やつは生命の流れそのものを汚染したのではと思うのだ。 無論、だからと言って直ちに影響を与えるわけではないし、なんといっても”ユグドラ”だからな、 ちょっとやそっとでは”ユグドラ”を闇落ちさせることは叶わぬだろう」
 そう言われてバルファースは考えたが結局なにも浮かばなかった。
「やれやれ、俺の頭じゃここまでが限界だな、結局何がどうなっているのかさっぱりだな」
「ああ、実は私の理解もせいぜいそこまでだ。 残りはエメローナが追跡してくれているハズだ」
「エメローナが? あっちも欲望に負けているんじゃないのか?」
「それはそうだが、それでもやることはやる女だ、それはお前が一番よく知っているハズだが――」
「そう言えばそうだった、ただでは転ばないのがあの女の最大の特徴だったな」

 ディウラとレオーネは手合いをしていた。
「ディウラって結構切れ味の鋭い刃の武器が得意ね! もしかして、剣術習ってた?」
「ええ! やっぱりプリズム族だからなのかな、プリズム女たるもの、 剣士としての能力を身につけなさいってお母様に言われてやっていたのよ!」
 それはバンナゲート貴族って感じの生き方ではない気が……レオーネはそう思った。
「ディウラってもう本当に外の世界に飛び出すこと前提で生きているわよね!」
 案外そうなのかも……当人はそう思った。
「そういうレオーネは? 闘気剣術まで使えるのって並大抵の事じゃないわよね?」
 すると、2人は動作をやめ、話に集中していた。
「私に結婚の話が舞い込んでくる前はヴァナスティア聖騎士団に所属していた。 所属とはいえ、所作を学ぶための花嫁修業の一環で体験入門していたに過ぎないのだが―― それでも、私の騎士としての実力は現役の騎士たちの一部を軽く凌駕する腕だと言われてな、 それで本格的に闘気剣術……いや、ヴァナスティア聖騎士団だから正しくは”聖剣技”を学ぶこととなったのだ、だが――」
 あくまで花嫁修業という理由から本格的に騎士の道にのめりこむことについて両親はよく思っていなかった――
「それから5年目にして私の行動を咎めるかのように急に見合いの話を持ってきた、 無論、無条件で呑んで来いという話でな」
 それでも5年間、ヴァナスティア聖騎士団で本格的な事をしていたのか、それだけの実力は身についていたということだった。
「私についてはそんな感じだ。 だが――それを言ったらディウラこそ、 あなたが持っている剣はヴァナスティアで修行をした女戦士で実力を示したものだけが与えられる”ヴァルキリー・ソード”だろう?  刃の形状こそあなた用にカスタムされているものだけど――」
 ディウラはその剣を引き抜いた。
「これね、最初にもらった時は大きくて太い剣で扱えなかったからお断りしたんだけど、 アトレーニアの職人さんに作り直してもらうからって言われて受けることにしたのよ。 私も花嫁修業の一環だったけど、聖騎士団に所属することはなく、純粋に剣術を習っていただけね」
 プリズム女だけにか。
「ということは、闘気剣術の基本の型は身についているってことだな」
「一応ね。だけど――あなたにとってそれは通過点に過ぎないからさらに上を目指しなさいって言われてこの剣を与えられたのよね――」
 そうだったのか、レオーネは考えた。
「ディウラは”救世主候補イヴ・メサイアー”と認められたのか――」