ドラゴン・スレイヤー ~新たなる未来~ 第7章 第163節

第7章 ザードがずーっと目を瞑っていた話

第163節 未来は一応変わったらしい

 クラーネアは話を聞いて考えていた。
「”女”を抜いたという割には随分と女性的なところが残っているね」
 エメローナは得意げに答えた。
「本当は全部消してくれって頼まれたんだけどさ、彼女の本来の優しさだけは残しておきたかったのよね。 つまり、子供を産むための恋愛観とか結婚願望とか、そういった感覚だけを削除したのよ。 言うまでもないけど、そもそもそんな改造行為自体がタブーだからね、他の人には秘密にしておいてね?」
 つまり、禁忌を犯してまでやっているということは、 彼女にはそれだけのことがあったということか――クラーネアは悩んでいた。
「もちろんさ、彼女の意志だというのなら咎めることはできないね。 それで、バックアップは?」
「しばらくは精霊界に眠っているままよ、だけど―― バックアップはあくまで運命の精霊様の精神の片割れ、 となると、つまりそのうち生を受けて動き出す可能性はありそうね。」

 ネシェラのお気に入りであるフレアはまさに女王様の寝室で寝泊まりさせてもらっていた。 なんとも贅沢な部屋ではあるが、シルグランディアの手がけたものと考えれば、 ただの贅沢というだけのものとは違うもののように考えられた。
 無論、そのような部屋が1つ2つなんてことなく、いくつも備えられているのだが、 ベッドサイズについてはキング・サイズを上回る”エンプレス・サイズ”なるものらしく、 その大きさの理由については……言わなくともいいだろう。
 だが……人によってはここにずっといると感覚がおかしくなってしまうかもしれない。 現に他のメンバーについてはゲッソリしているものが多く、この建物とは別のところで休んでいるんだそうだ。
 一方で、元々名家の御令嬢様御曹司様方については流石にそんなこともなく、お城の寝室でも余裕らしい。 フレアの場合は……高級精霊様ゆえの無頓着さが正体である。
「無事だったようだな」
 フレアは廊下でバルファースと出くわした。
「おっと……そうだな、エメローナは無事か? エモノ共と戯れてんだろ?」
 え……知っているのか、フレアはどう答えようか悩んでいると――
「プリズム族ってのはそういう種族なんだろ?  俺のためにいろいろやってくれるんなら何も言わねえさ、ただ―― 心残りなのは一緒にいてやれねえことだけだな、随分と寂しい思いをしちまったもんだ。 そうだな――彼女を置いていくなんて事になったら、今後は俺も一緒に残ることにするか……」
 そういえば、彼にしてみればプリズム女と一緒になるという選択についてはディウラの件からありえないことだと思っていたが、 結局はエメローナと一緒になったのは良かったのだろうかと考えたフレアだった。 だが――身体はプリズム女なのかもしれないが、キャラとしてはまるで違う女だからということで全然気にしていないのかもしれない。 だって、彼女を選んだのは彼女らしさを貫いてほしいがための行動だったのだ、 彼にしてみればエメローナの存在はそれだけ魅力的だったということだろう。
 しかし、そうは言ってもなんだからしくない発言だな……そう思ったフレアだが、 それについては当の本人が一番自覚していることだった。
「やれやれ、何を言っているんだ俺は。 俺がこんなこと言ってたなんてこと、他のやつには秘密にしといてくれよ」
「エメローナには秘密にしなくてもいいのか?」
「あの女にはすべて見透かされているからな。 特に俺のような浅はかな考えなどエメローナには通用しない…… 我ながら、とんでもない女と一緒になったもんだな」
 まったくだ。

 今度はそのうちパトリシアお嬢様と出会った。
「あーれー!? フレア姉様も無事だったのね!」
「無事だったも何も、一度過去に戻っているらしいぞ」
 バルファースは言うと彼女は驚いていた。
「え、でも、最初からこっちにいなかったよね?」
「俺らがこっちに来た後に歴史改変しているからだろ?  そもそも俺らにしてみればそんなことは一切体感していないからわかんねえことだけどな。 それに……簡単に歴史改変するようなら俺たちの時代なんてあっさりと変わっちまうと言われたらそれまで、 言い換えれば歴史改変して本当に変わっちまうようなこと自体がありえねえことなんだろうが、 実際にそれをやっちまっているってことはそれだけの力が働いているってことだな」
 それはあんたの嫁の所業なんだが――とはこの際言うまい。 しかし、そのように考えられるとは、やはり流石に嫁があの女だけのことはあるようだ。
「言い換えれば、未来を知ってそれを変えようと力を振るうのは禁忌に触れるということだ、本来ならばな」
 フレアはそう言った、 とはいえ、今回は”邪悪なる者”によって改変されているため、特別措置というものである。
「要は、歴史改変によってお前たちは私抜きで既にこちらに来ていたという理解になるか」
 フレアはさらにそう訊いた、どうやらそうらしい。

 そして、それぞれは女王様の面前へと促されることとなった。だが……その女王様は――
「さあお前たち♪ 女王様の命令よん♪ こうべを垂れなさぁい♪」
 なな、なんと! 彼女はディウラだった! 彼女はまさにドレッシーな服装で玉座についており、 目の前の男たちに命を降している!
「ははー!」
「美しい……女王ディウラ様――」
「なんて素敵な人なんだ……女王ディウラ様――」
 どうなっているんだ……フレアは悩んでいた。
「あ! フレア! よかった無事で! あなたもやってみる!? 楽しいわよ♪」
 楽しいわよって……どうやら女王様ごっこをしているのだそうだ。
「楽しいよ、お姉様♪ やってみなよ♪」
 パトリシアお嬢様もノリノリだった……。
「フレアもやってみるといい。 こういう世界なんだからな、体験してみるのも一興だ」
 と、なんと、あのレオーネが例の美少女戦士風な服装で佇んでいるではないか!
「はああああ! レオーネ女王様までいらっしゃるではないか!」
「パトリシア女王様まで! ああっ……どのお方も素敵だぁ……」
 なんなんだこの世界――フレアは頭が痛くなってきた。