酷く長引く戦争――フローナルは話をしていた。
「精霊の世では関係のないことなのだろう?」
フローナルはそう訊くとシルグランディアは首を振った。
「世界の精神構造が膨張してきているのよね、
それが物理世界にも何かしらの影響を与えているんだと思う――
変な歪が生じると、精霊たちはもちろんだけど、生命活動にも影響を与えちゃうのよね――」
そうなのか――フローナルは考えた。
「もはや、他人事ではない?」
「そう、だからフローナルは精霊界を飛び出し、
物理世界と精神世界との因果関係を改めて調査することにしたのよ。」
だが――
「はっ、残念だが私はそのような大それたことをできるような者ではない。
私はハンターに身をやつす者、夫との間に4人もの子供をもうけ、日々の生活に追われるだけの存在だ。」
4人……運命を導く者の春の影響ゆえにプリズム族として生を受けている彼女、
それでも4人とはやはり運命を導く者の春の影響ゆえということである。
プリズム族の間では、1人産めば御の字で2人産めばそれは宴、3人産めばそれは革命と呼ばれているのだが、
そこで4人目ということは、まさに異常といってもいいのかもしれない話である。
「すまない、今の話は聞かなかったことにしてくれないか?」
「ええ、私とだけの秘密にしておくわね。
そりゃあ、フローナルはこんなに美人なんだもん、旦那は夢中に決まっているわね!」
そう言われてフローナルは照れていた。
それからさらに数年後――エターニスの西の山が大火事になっていた。
「だいぶ戦争の魔の手というのが身近に迫ってきたわね、それなのによくもまあこの世界も耐えているもんよ。」
「何を言っているんですか、人間の手で何をやろうとも、我々がいる限りは――」
「ただの皮肉よ、ったく――マジで冗談通じねーやつばっかだな……」
えぇ……自分、何か悪いこと言ったんだろうか……言われた精霊は悩んでいた。
「私もフローナルみたく転生して世界に飛び出していればよかったわねぇ。
もっとも――今は破壊の世の中だからちょっと考えるところだけど――」
だが、それが後に”拡張性汎用体”を作り出すことの動機となるのであった。
「シルグランディアさん! 誰かが来ますよ!」
先ほどの精霊がそう言うと、シルグランディアはそちらに注目した、すると――
「フローナル!? どうしたの!? 大丈夫!?」
彼女は――全身に酷い大やけどを負っていた、生きているのがやっとという感じである。
だが、それよりも――
「涙……!?」
そちらのほうが気になったシルグランディア。
再び同じ場所のベッドにて、シルグランディアに介抱されていたフローナル。
「生命力が弱っているわね、生きようという意志が弱すぎる……何があったの!?」
シルグランディアは訊いた、だが――
「シルグランディア、頼みがあるんだ、聞いてもらえるか?」
自分が運命の精霊であることを否定していた彼女だったが、その時はどうやら自覚しているようだった。
その様子に驚いたシルグランディア、頷くと、近くにいた精霊をすべて外に出し、
そして家を閉め切ると、彼女の話を聞いていた。その話は――2人だけの秘密である。
その話を聞いて、シルグランディアはフローナルに訊いた。
「気持ちは分かった、けど――本当にいいのね?」
「後悔はしない、すべては私が招いたこと――
あのようなことを望まなければこのようなことにはならなかった、だから――」
「決してあなたのせいじゃないから! だから……自分をそんなに追い詰めないで――」
「シルグランディア……やっぱり、あなたは……優しい……わね――」
フローナルはそのまま事切れた。
「フローナル……いつかきっと、自分を許せる日が来ることを祈っているからね――」
話を聞いてクラーネアは悩んでいた。
「申し訳ないけど、彼女との秘密の話の内容については訊かないでもらえる?
こればっかりは何をどうしても話すことができないのよ。」
エメローナはそう言うとクラーネアは頷いた。
「まあ、人には秘密の1つ2つぐらいはあるからね――」
エメローナは頷いた。
「そうね。
それで、その後はフローナルに……精霊界に眠っている彼女が目覚める前の身体に改良を施したのよ。
精霊界に転生した身体が眠っている場所については各々がシークレットにしている場所にあるんだけど、
私らはこういう仲だからね、互いにその場所を知りえているのよ。
だから彼女の身体の改造も容易にこなせた、彼女の指定通りに――
ずいぶんと苦労したけど、彼女から”女”というものを消し去ってしまったのよ……」
なんてこと! クラーネアは追及するが――
「もちろん、バックアップは取ってある――あるけど、
流石に精霊界だから、バックアップをそのまま眠らせておくなんてことはないわね。
けど――彼女に関してはそういう存在ということよ。
精霊界の生物なんだし、自分に子孫ができなくたって代替わりすればその精神は更新される――
それだけで彼女という存在は成り立っているのよ。」
といっても――クラーネアは悩んでいた。
「彼女の意志……それだけの後悔があったということか……」
「まさにそう言うことね。
そう、彼女には”女”というものが備わっていない――アヴァリス・シンボルが効果を成すには対象は”女”である必要があるんだけど、
フレアからは”女”を取り除いてしまっているからそもそもアヴァリス・シンボルが効果を成さないのよ。」