ドラゴン・スレイヤー ~新たなる未来~ 第7章 第161節

第7章 ザードがずーっと目を瞑っていた話

第161節 運命の罠

 グローナシア、クラーネアはエメローナの元へとやってきた。その場所はあのラムルの里の長の家である。
「やれやれ、お見通しってワケね。」
 エメローナはため息をついていた。
「申し訳ないね、本当は”やっていたい”ところなんだろうけどさ」
 エメローナの恰好はなんだか育ちのよさそうなお姉さんな風貌…… フレアが着こなしているような服装とだいたい同じだが、スカート丈はメロリーナぐらいに短かった。
「そうね、子孫のこと尻軽アバズレビッチなんて言えたもんじゃないわよね、第一、男までいんのにさ……」
「あんたはプリズム女の身体が基礎なだけあって出産準備は必要さ、 なのに1ミリも準備できている身体じゃないんだから多少は止む無しだよ、あの男の子供を産んであげたいんだろう?  そうなると、当然あの男はその辺は寛容で理解までしているさ、それゆえの理由でちゃんと自分のところに帰ってきてくれるって事をね」
 言われてエメローナは照れていた。
「余計なこと言わないでよ! ったく……そもそもこんな厄介な身体で生まれんでも――」
 いや、何を話しているんだ……エメローナはそう思いつつ我に返った。
「で、ということはあの時にフレアにも真相を話したってことなんでしょ?」
「話してもよかったんだよね?」
「自分ではまるで語ることができない内容だからね、うまい具合に伝わってくれれば満足よ。 さて、話はそれでおしまいかしら? なければこれから”魔物”になるからね、 さっき街道で私の身体エサに引っ掛かったエモノを早く試したいのよ♪」
 とんでもないことをさらっと言っている……けど、この世界観の中では普通の会話なのか……クラーネアは悩んでいた。
「いやいや、実はもう一つ訊きたいことがあってね。 ”豊穣をもたらす者の春ハーベスト・アヴァリス・シンボル”の話もしたし、 ”万物を創造する者の春シルグランディア・アヴァリス・シンボル”の話もした。 でも……”運命を導く者の春フェイタル・アヴァリス・シンボル”の話が一度も出ていないなーってね」
 え……”運命”ってことはまさか――
「つまり、やつのアヴァリス・シンボルを食らうことでフレアにもエメローナと同じことが起きていてもおかしくはないハズだよね?  効いていないに越したことないのは確かなんだけど、それでもなんだかおかしいなと思ってさ、そうだよね?」

 運命の精霊もまた、生命の活動において運命を決定づける存在ゆえに、生命を司るという役割を担っていることによる多産を司る者という側面もある存在であるため、 彼女にも”運命を導く者の春フェイタル・アヴァリス・シンボル”というのが先天的に備わっているハズである。 無論、発動条件はシルグランディアと同じで彼女のあの性格からすると結構厳しいものになっているのは同じ。 だが――”邪悪なる者”による”アヴァリス・シンボル”のせいでエメローナと同じような状態になっていてもおかしくはないハズである、 それなのにどうして彼女にはそのような兆候が表れないのだろうか?
 それに対し、エメローナはため息をつきつつ話をし始めた。
「そうね……、彼女にも備わってはいるんだけどね、けど――あの時を機に彼女は自分が女であることをやめてしまったのよ――」
 なんだって!?
「私がこんな話をしていたってこと、フレアには黙っておいてね――」

 グローナシアの刻より8億年前の時代”ローナシアンデイル”……あの時代はこの時まで続いた、 この後に”フレアガルディス”の刻へと突入するのである。
 その頃になると光に満ちた時代なんていうのとは打って変わり、あちこちで戦争が起こっているような、まさに破壊の時代である。 ”フレアガルディス”……炎によって新たに作られた世界を意味する時代の名前があてがわれるのもなんとも納得のいく話である。 その後の時代”グローナシア”なんていう”光”を意味する語が入っているのは再び光の時代へと突入することを願っての事である。
 そして、その当時にはフローナルもシルグランディアも第2級精霊で精霊界の存在として役割を担っていたが、 フローナルは例によって転生を用いて物理世界へとたびたび出向していた。
「あらあら、エターニス側がなんとも騒がしいと思ったら……運命の精霊様じゃないのよ。」
 その彼女はエターニスの近くで気を失い、倒れていた。シルグランディアがその様子を遠めから眺めつつそう話していた。
「なんですと!? まさか、あの女がそうなんですか!?」
「間違いないわよ、意地悪しないで通してあげなさいよ。」
「し、しかし、例えそうだとしても精霊界には――」
「今の彼女なら入ろうとしないでしょうね、物理世界の存在なんだし。 とにかく、エターニスに入れてあげなさいよ。」

 ボロボロの状態のフローナル、シルグランディアが丁重にもてなしていた。
「高位の精霊が私のような者を迎え入れるなどとはどういう所業の了見なんだ?  これまで聞いていた話とは待遇がまったく異なるようだが?」
 ベッドの上で気が付いた彼女、早速そう訊いた。
「話は簡単、あなただから助けたのよ、”フローナル”。」
 ”フローナル”……彼女は考えていた。
「確かに私は精霊界からの啓示を受けている、だが、それでも精霊界とこの世界とは違う…… ゆえに高位の精霊もそのような存在とて扱いは一緒のハズ――なのに、何故?」
「”フローナル”といったら精霊界では無茶苦茶慕われているから無下にするような子なんて少ないんじゃないかしら?」
 そうなのか? フローナルは少々驚いていると――
「ちなみに……私にしてみれば”フローナル”は大の親友だから見捨てるなんて選択肢はないんだけどね♪」
 とても親しそうにしてくる彼女、フローナルは困惑していた。