そうそう、そういえば大昔にも似たようなことがあったっけ。
今になって思い出した――あれはまだローアの刻から4億年経った”ローナシアンデイル”と呼ばれた頃の話だ、
随分と長い暗黒時代を抜け、精霊界でもようやく世界が光に満ちた大地となったと決定づけられたころの話だった。
今思えば、あの頃が最も良かった時代なんじゃないかとさえ思うほどである。
その頃の精霊界においては、世界の光の時代のための施策として、
転生によって物理世界を視察するという名目で多くの高級精霊が降り立った時代だった。
あのようなこと、後にも先にもあの時の一度きりしかない、
そもそも高級精霊の価値観で物理世界で生きていくこと自体が合わないからだった。
だが、フローナルとシルグランディアは違う。
彼女らは精霊界においてはまさにイレギュラーな存在、物理世界の価値観も持ち合わせており、
そちらの世界に降りて暮らしていくのも厭わない存在である。
”ローナシアンデイル”は光に満ちた世界ではあるが1つだけ問題があった、
それは――生命の個体数そのものがこれまで経てきた闇の時代の影響もあって少ないのである。
それにより、プリズム族もまた窮地に立たされていた。
そのプリズム族の里にて、フローナルとシルグランディアの精神を継ぐものが暮らしていた。
彼女らはプリズム族として、グローナシアのラムルに当たる場所”ミシャーラ”、
名前の由来は”メシア”が訪れた地であり”メシア”の生まるる地ということで”メシアラ”からとっている、
そもそもローアの刻から1億年経った頃は”メシアラ”とも呼ばれた里でもあったほどだ。
だが、その里の個体数は僅か10数人ほど……もはや絶滅危惧種である。
それぞれの精神を継ぐ者の2人はそれぞれの精神を継ぐ者というような価値観がなく、
一般的なプリズム族の女性としての価値観で過ごしていた、
つまりはどちらも各々の精神固有の男勝り節が一切ない存在として暮らしていたのだ。
「あっははははは! ティアナリア! こっちこっち!」
「ちょっと待ってよ! ミーティア!」
そう、ティアナリア=フローナルとミーティア=シルグランディア……2人は森の中をかけずりまわっていた。
一般的なプリズム族の女性の価値観ではあるが、各々精霊界からの啓示を受けている者であるため、
それぞれの精霊の名前を冠する姓がつけられているのである。
「私たちもそろそろ女としてのデビューね!」
「そうね! いっぱい男を捕まえて、
いっぱい私たちの種族を増やしましょう!」
2人は森の中の広場のど真ん中に仲良く抱き合って話し合っていた。
「けど、お互いにまずは里の番人としての試練が先ね」
「試練とか面倒臭いわねぇ……早く男捕まえたいんですけど――」
「いいじゃないのよ、試練超えた後はいくらでも森の外とを行き来できるのよ?
そしたらいくらでも男を取り放題ってワケよ♪
近くの男も遠くの男もね♪
もう心行くまで逆ナンを楽しみましょうよ♪」
「確かにそのとおりね! やっぱりミーティアは頭いいわ!
男取り放題だなんて魅力的な話ねえ!」
会話内容自体はらしくはなくても各々の精神を受け継いでいるような片鱗だけは見せていた、特にミーティア。
男を取るにしても如何なる複雑な頭脳労働でも絶対に欠かさない女である。
試練を超え、無事に里の番人となった2人、
里と外界との行き来を許される身となった。
里の掟についてはとても厳しいものではあるのだが、
精霊界からの啓示を受けている者である2人ついては特別にその制約が緩くなっている。
里の番人となったのもそれゆえの里長からの推薦である。
「ティアナリア、あんなのはどう?」
「うーん、顔がイマイチね、できればもっとイイ男が狙いたいわね」
「そればっかじゃん! ったく、ティアナリアってば理想が高いわよね!」
「何言ってんの! それを言ったらあんただって一緒でしょ!」
「一緒じゃないでしょ! 私の理想はイイ男か童顔なカワイイ男の2つ! 一択のティアナリアと違うのよ!」
「一緒でしょ! 私だってその二択なの!」
マジで仲いいな、フローナルとシルグランディア……。
そして――2人は大量に捕獲してきた、とりあえず3人ずつの計6人を捕まえてきたのである、
6人……大収穫であるが、念のために言うと、くれぐれも食用獣の話ではない。
当然、2人は早速選りすぐりのイイ男を数日かけて試していた、
すると――
「ねえ、ティアナリア!」
「何よ、どうしたのよ?」
「そっちはもう食らいつくした?」
「ええ、一通り……すっごく良かったわ――って、あんたこそどうなのよ?」
「ええ♪ ご馳走様って感じね♪
けど――やっぱりそっちの男も試してみたくなっちゃってね♪」
「あっ、その話なんだけどさ、本当にごめん――
先日はあんなこと言ったけど、本当はそっちの男も試してみたくなっちゃった♪」
「でしょー!? 絶対にそう言うと思った!
んじゃ、今から交換ね♪ そしたらその後もまた交換しましょ♪」
「いいわね♪ 最高ね♪ 飽きたらまた逆ナンに行きましょ♪
ミーティアのやり方なら簡単に取れるしね♪」
「もちろん♪ 私に任せなさいな♪」
話し合っている内容は少々エグイ内容ではあるがプリズム族の女性としては割と一般的な会話である、
男を取りまくっている光景についてはイレギュラーではあるが。
本来は掟のせいで外から直接収穫できる量は決められている――って、くれぐれも水産資源の話じゃないんだぞ。
そう、ネシェラはフレアとシェアするなどと語っていたが、
古の時代にも運命の精霊と万物の創造手はシェアをしていたのである。
似た者同士であり、男の好みも全く一緒である。