ドラゴン・スレイヤー ~新たなる未来~ 第6章 第157節

第6章 暗い陰謀

第157節 再起

 さらに――
「これは?」
 フレアは訊いた、モニタではさらに似たような”アヴァリス・シンボル”に犯されている空間が広がっているのだが……
「アーカネリアスの世あたりで魔法を使用するのを禁止しているのかしら?  消費されているマナが減ってて”アヴァリス・シンボル”の効果も減っていると思ってね――」
 え、未来の記憶ってこと!? 未来のも見えるのか?
「これはクロノリアさんのお力を借りたことで実現できていることよ。」
 なるほど。
「ただし、見れるのはアーカネリアスの時代……つまり60億年後までね。 要は”邪悪なる者”によってリンクされている時代までってこと。」
 つながっているせいでこちらにも情報が漏れているということになるわけか。
「ちなみに、これはネシェラの代の他の女……いえ、メイドの記憶で、さっき見せた女性陣に連なる人の系譜の記憶空間よ。 何が言いたいかはわかるよね?」
 その記憶空間は”アヴァリス・シンボル”による痕跡が随分と少ない……完全ゼロというわけではないが。
「だが、ネシェラはどうだ?」
 そういえばエメローナの記憶は歯車だらけのカラクリ仕掛けの迷宮というような装いだった、 さしずめ、時計塔の内部といった所だろう。 しかし、ネシェラについては確かにエメローナ時計塔の内部ではあるのだが、
「この闇の迷宮は城の中だな、しかも城の中は男だらけ――」
 実際に見てきたものについては城の中がそのままカラクリ迷宮というわけではないが、 あの城の構造を踏まえた、ある意味でのカラクリ迷宮という点では見事に一致する。 つまり、ネシェラの記憶についてはまさに、未来で見てきたあの光景そのものと言っていいものである。 彼女の頭の中はまさにこの世界の男のすべてを自らの美貌と色香で虜にし、 そんな男たちと毎日淫らなことをして過ごしたいという、 朝昼晩24時間1分1秒途絶えることのない常時発情期な女になっている状態らしい……。
「気持ちはわからんでもないけどね、ほんのちょっとだけ――」
 経験済みのエメローナは悩んでいた、やっぱりこの女……。
「これっていうのはつまり―― 復讐するためシルグランディアだけに”アヴァリス・シンボル”を念じ続けていたという理解でいいな?」
「ええ、確実ね、手段はともかく。 しかもこの”アヴァリス・シンボル”には邪念も組み込まれていて性欲を増長する効果を持っているのね――」
 確かに性欲まみれだったが、 その割にはフレアへの対応はもはやいつも通りと言わんばかりに冷静そのものだったネシェラ。 そこは流石にシルグランディアゆえというところ――まさに敵に回すと厄介なタイプという感じである。
「それではどうするのだ? シルグランディアの”アヴァリス・シンボル”が消えぬ以上は打つ手がないように見えるのだが?」
 エメローナは考えていた。
「そうね――いずれにせよ、精霊界を引退するのはまだ早いってことがわかったってところね。」
「つまり、シルグランディアはまだ精霊界に残るということだな?」
「残らざるを得ないわね、まずはネシェラ時代まで”アヴァリス・シンボル”の影響を極力小さくすること、 それからやっぱり”邪悪なる者”が再復活するのをなんとか抑えないといけないからね。」
「影響を極力小さく? ゼロにはできないのだな?」
「”邪悪なる者”の陰謀が消えればゼロにはできると思うけどね。 ただ、今の私は第3級精霊、システムを更改するうえでやろうとしていることを考えると権限が足りてないから、 次代のシルグランディアは第2級精霊にして事を成し遂げないといけないわね。 だからって、今の私が安易に身を投げ出すこともできないし、 たとえそれをしても次のシルグランディアが成熟するまでには時間がかかりすぎる…… となると、いずれにしても、その間はずーっと”アヴァリス・シンボル”の影響については後手に回らざるを得ないのよね。 しかも私を”アヴァリス・シンボル”で狙い撃ちしているのならなおさらで、 ある程度は”アヴァリス・シンボル”にまみれた第2級精霊が生まれてくるのも不可避ってことになってしまうわね――」
 ということは、完全にその間は”邪悪なる者”にアドバンテージをとられてしまうということか……。
「つまり、最終的に”邪悪なる者”さえ何とかなればいいということだな。 それと、”邪悪なる者”の再復活を抑えるのって、何か方法があるのか?  あの精神は消し去ることができないといわれているぞ? だから粛清もかなわないのだが――」
「消せなきゃ縛り付けるまでよ! ったく! あの野郎! 目に物見せたるわぁ!」
 エメローナは燃えていた、斃せなければ封じとけってことか。

 エメローナはラドリゲルスとクラーネアを呼んで話をしていた。
「なるほど、今から何をしても後手に回ってしまうということか――」
 ラドリゲルスは悩んでいた。
「そう、だから申し訳ないけど、 ネシェラは問題を解決するまで尻軽女王様でいてもらうしかないわけよ。」
 えぇ……そんな酷い……。
「皮肉にも、尻軽女王様だなんてプリズム女への誉め言葉じゃないのよ―― って、冷静に考えるとわけのわからないこと言ってるわね――」
 今更か。
「ところでネシェラの記憶空間は依然として城が立っていて男ばっかりの空間になっているが、 大丈夫なのか?」
 ラドリゲルスは訊くとフレアは頷いた。
「少なくとも最初に突入した時よりもマシだと思っている。 当時は闇に染まっていたが、今回はその闇もだいぶ抑えられているようだ、 やれることがこれで限界というのなら、もはや信じるしかあるまい」
 すると、エメローナはフレアをしっかりと抱きしめた。
「ありがとう――未来のネシェラにも伝わるように先祖代々きちんと伝えておくわね。」
「ああ、私はエメローナを、そしてネシェラを信じているぞ――」
 お互いにしっかりと抱き合っていた。