すべては”邪悪なる者”がエメローナに仕掛けたアバズレビッチへの暗示という呪いのせい……
それが長い歴史を経てシルグランディア女の精神を蝕み、そして――アバズレビッチへと変えてしまったのである。
そう……ネシェラは”エローズ・アヴァリス族”という文字通りのアバズレビッチとしてこの世界に生を受けたのである。
美しき麗しき魅惑の女神ネシェラ=エンプレス・アヴァリスティ様は男たちを侍らせて場内を練り歩いていた、
その様子をフードマントで身を包み冷ややかな目で見つめている者がいた。
だが――ネシェラはこの世界で唯一の女を語っていたようだが、フードマントの者は他所に目をやると、
この集団と同じく美しき麗しき魅惑の女神ネシェラ=エンプレス・アヴァリスティ様が男たちを侍らせて場内を練り歩いている光景がいくつもあった、
そう――確かにこの世界の女は”ネシェラ”という存在ただ1人だが、その”ネシェラ”自体が何人もいるようで、各個体はすべてリンクしているようだ。
だが、ほかの男たちはそんなことは気にも留めず、先頭を行くネシェラにしか興味がないようで、彼女のこと以外はなにも見えていない。
リンクしているために考え方はすべての”ネシェラ”で一貫しており、1人があの闇を取り込んだことですべての”ネシェラ”にも同じ闇の力が得られているようだ。
ただし、趣味趣向については少々異なっているようで、
例えば服装がそれぞれのネシェラで違っているようだ……衣装チェンジではなく、ネシェラそのものがチェンジしているという理解である。
種族を反映させるうえでバランスよく男女が存在することは不可欠……女性の絶対数はこれまでよりも少なくなっているようだが、
それでも妖魔種族のアバズレビッチ――妖魔種族の女ゆえの妊娠率の低さこそ枷になっているだろうが、
あのアバズレビッチっぷりをみれば確率の低さなど大したことではないし、
恐らくアバズレビッチへの暗示によって血統はおろか身体の構造をも弄っているだろう、
常に男と戯れることを生きがいとする存在ゆえに――。
そうか、そもそも単純なプリズム族の血統を持つ者というだけのものではない――
アバズレビッチへの暗示により闇から生まれた種族、
ゆえに”エローズ・アヴァリス族”……いや、”エンプレス・アヴァリスティ族”という妖魔種族の女性なのだろう。
そう、彼女は闇から生まれた種族……まさに闇がこの世界を支配しているのである。
フレアは考えた――そう、あのフードマントの者は彼女である。
地下牢には見張りの男たちがいないようだったので、そのまま壁をぶち破ろうとするとあっさりと脱獄できたのだ。
そもそも、こんな構造をした建物はまさにシルグランディア故ということだろう、
物理的構造に加えて魔法による効果で迷宮を作り出しているのである。
それにより、男女……いや、この世界で女を語れるのはネシェラのみのため、
それ以外はあくまで”性別:メイド”でしかない――
つまり、男とメイドを隔てる境界によりそれぞれの空間が明確に分かれていたのだ。
その境を超えて行き来できるのはネシェラのみ……つまり、メイドはネシェラからの寵愛でしか生きられない存在であり、
そのためには彼女に徹底的に奉仕しなければならない。
ただ、中にはご褒美と称して女王気分を味合わせてもらえることもあるだろう、
しかしその場合でもあくまでメイド空間内だけでの出来事であり、やはり徹底されているようだ。
一方の男たちは女性がネシェラしかいないということから、ネシェラの言うように性的対象はネシェラのみになる。
無論、戦時報告の内容に”選別”などと語っていることからネシェラを性的対象として見れないものは文字通り”選別”されているハズ、
つまりは”異なる者”でさえふるいにかけられているハズである――
もっとも、ネシェラはエンプレス・アヴァリスティ族の誘惑能力を持っているため、ほとんどの男はネシェラで発情してしまっているのだろう。
”異なる者”をメイドにするカラクリは戦時報告にもあった”信愛の間”というのがキーだった。
それは、お城に入ってすぐにある、ネシェラが”武器庫”を語っていた空間である、こちらはメイド閉鎖空間の一部である。
そこでエンプレス・アヴァリスティ族による何かしらの能力で女さえ……いや、”異なる者”さえ懐柔していたのである。
だが、その”信愛の間”というのにはもう一つの顔があり、フレアはそれを”調教の間”と考えている、
そう……能力でも懐柔できなければネシェラがムチで叩いて無理やり服従させるのである、そこでさらに”選別”される。
ただし、ディウラもレオーネもパトリシアもメロリーナも能力であっさりと懐柔されているようだった。
そう……”ネシェラ=エンプレス・アヴァリスティ”という世界では彼女の存在こそが絶対なのである。
そして、クライアスこと”邪悪なる者”はその闇の世界を我がものとしているのだ、
まさに自らが生み出した闇がその世界のすべての欲望を満たす世界となったのだから、
それをネシェラという存在を介してすべての存在を支配するのである――まさに”邪悪なる者”による闇の世界そのものだ。
そんな世界に対して精霊界も封じられ、精霊たちも手も足も出ない――そもそも精霊界はどう機能しているのだろうか。
そんな”ネシェラ=エンプレス・アヴァリスティ”の目的だが、それは――
「万物の作り手はありとあらゆるを作りし者、
あらゆるを作る者なれば、数多の生命を作る者なる者――
作り手として命をもたくさん作り出すために数多の男と交わることを喜びとする者……
忌々しい――!」
フレアは悔しそうにしていた、そう、ネシェラは――
「ネシェラの中ではシルグランディアにはあるまじき女の姿……
性への欲望が支配している! そして”邪悪なる者”とつながっている!
彼女は欲望を満たすためなら”邪悪なる者”とつながることさえ厭わぬのだ!
だから彼女はこの世界を売った! 数多の町を! かつて自らの精神が築き上げたアトローナをも!
この世界を支配し、そして自らの欲望を満たすためにすべてを破壊した!」
そう、ネシェラを支配しているのは性欲……
ゆえに、ネシェラは性欲を満たすために世界を売ったのだ――そんなん絶対にやばすぎるだろ。
だが――どうやらそれが現実になってしまった――とんでもない歴史改変である。
とにかく……フレアは適当な行列へと代わる代わる紛れ込みながら、そっとその町を去っていった。
そしてそのままアーカネル……いや、ゲートに向かって進んでいた。
「つまり、既にこの時代に飛んできたときからネシェラに目をつけられていたのだろうな、
流石はシルグランディアに連なる者、用意周到だ――」
彼女は考えていた、すると――周りには突如として魔物と闇の手の者が現れた!
「アバズレビッチへの暗示の正体はまさにこのような世界を作り出すための呪い……
エメローナが知ったら絶対に怒り狂うだろうな……」
彼女は運命の標二刀流を構えると、
手始めに運命覇気を放つ!
「無論、怒っているのは彼女だけではない! 悪いが貴様らには鬱憤を晴らすための贄となってもらおう!」