状況をよく知るためには一度精霊界から出るとわかりやすいらしいので一行は一旦エターニス側へと出てきた、すると――
「なんだこの禍々しい雰囲気は――」
「なんと……一体何が――」
フレアとラドリゲルスはなにやら異様な気配を感じ取っていた。
「なんなのこれ――まるで私たちの世界じゃないみたい……」
「世界が……悲鳴を……」
パティとメロリーナもまた異常を感じ取っていた。
「なーんか、風向きが妙な方向に吹いているようだな――」
「ウソでしょ、なんなのこれ――」
バルファースとディウラも、
「なんか、動物たちが怯えているみたい……」
「あらあらあら、何者だか知らないけどいい度胸しているわねぇ?」
ザードとエメローナも、
「うーむ……我がフレアガルディスの戦争時代と比べ物にならないほどの殺気に満ち溢れているようですね――」
「なんか……嫌な感じがするな――」
クローザルとカイルもまた異常を感じ取っていた。
「いったいこれは?」
ラドリゲルスは訊くとクラーネアは答えた。
「いよいよ始まったようだね、これこそがまさに未来からの攻撃――
”邪悪なる者”が邪悪なる思念を通じてこの時代に攻撃を仕掛けているのさ」
なんだって!?
「そのようなことが――」
フレアはそう訊くとクラーネアは首を振った。
「普通はそんなことはできない――けど、この時代にどういうわけかあの”天命”を語るクライアス、
すなわち、”邪悪なる者”が送り込まれてしまった、それによって未来にも現れているクライアスとの邪念がリンクし、
そしてこの時代にやつの影響を与えている――と考えるのが妥当のようだね」
なんてことだ、それによって――
「この世界がやつにとって都合のいい世界へと作り変えられようとしているってことさ。
無論、すぐとは言わないけど――徐々にヤツの思い通りの世界になっていくハズだよ、
そう――例えばやつが次に復活する60億年後の”アーカネリアス”の時代とか――」
それはマズイことになった。
「なら、この時代に来たそのクライアスを――」
と、カイルは言うが、クラーネアは首を振った。
「残念だけど、あいつはこの時代にはもういないよ、何故ならもう排除されたからさ」
え、どういうこと!?
「あんたたち、クライアスを”粛清”しただろう?
それと連動するかのようにそいつも消滅してしまったんだよ」
え、そうなのか!? それに対してラドリゲルスが言った。
「なるほど、そういうことか。
何者もそいつの姿を見ていないのだ、隠れている可能性もあるが、
ユグドラにいたハズのヤツはそこからどこかに行ったという痕跡も残さず消え去っているようだ」
そうなのか? カイルは訊いた。
「精霊界はマナが濃密だから痕跡が残りやすい、
移動などの何らかのアクションなどはある程度わかるものなのだ」
フレアはそう答えた、環境ゆえというわけだな。
「けど、クライアスを”粛清”していなくなったんだろ?
なんでまだ問題があるんだろう――」
カイルは考えるとザードが答えた。
「いなくなったのはクライアスだからでしょ? でも、”邪悪なる者”は消えてないってことなんじゃない?」
はあ!? どういうことだ!? それにはバルファースが答えた。
「あの記憶でも”邪悪なる者”は”クリストファーでいる間の記憶”とか言っていた、ザードはそこに引っかかっているんだろ?
俺もこの賢い霊獣と同意見だ、要はその”クリストファー”ってのはクライアスと同じ”邪悪なる者”がかぶっていた面の皮ってところだろ、
ということは――あとはわかるな?」
なるほど、カイルは納得した。
「つまり、クライアスと”邪悪なる者”は別のもの――」
メロリーナも気が付いた。
「そっか! ローアの刻の”邪悪なる者”の記憶! 残滓っぽくないってラドリゲルスさんも言ってた!
本来ならクライアスは粛清されているハズだから残滓のハズなのにそうじゃないってことはそういうことだよね!」
あ……カイルはそう聞いてはっとしていた、言われてみれば確かに。
「でも、そもそも粛清ってのがよくわからないんだけどな。ただ殺すのとは違うのか?」
カイルはそう訊くとフレアが答えた。
「粛清されると記憶ごと抹消される。
その際に必要な手続きは対象の精神ごとユグドラで処理する方法を取る。
実際にさっきのクライアスについても最後はユグドラで精神を処理していたようだしな」
なるほど、そしてその際にあの”天命”を語るクライアスの行方も一緒に探していたということか。
「しかし、”邪悪なる者”のほうは逃げてしまったようだ、恐らく、ユグドラの内部にて――
無数に流れる生命の中へと逃げ延び、再び復活する時を待っているのだろうな」
と、ラドリゲルス――そうなったら追跡は不可能だそうだ。
「じゃあ、”天命”を語るクライアスのほうの”邪悪なる者”は?」
それは――誰にも想像さえ不可能だった。