ということで、クラーネアは話を始めた。
「あんたたち、ここで”邪悪なる者”を斃したんだってね?」
それで駆けつけてきたのだろうか、そう訊くと彼女は首を振った。
「そんなまさか、流石にそれはないよ。
だって、ここからクロノリアまでの距離は1か月はくだらないからね」
それもそうか。
「それでは、どうしてここに?」
クラーネアは悩んでいた。
「最初はこの世界のパワー・バランスについて検討していたのさ。
そして、それについて妙案がある――それが”正史だった場合”の唯一相談内容だったのさ」
”正史だった場合”?
「まさか、未来からクライアス――”邪悪なる者”がやってきたことを!?」
ラドリゲルスはそう訊くと彼女は頷いた。
「そういうことだね。
だけど、ひとまずは世界のパワー・バランスの話について話をしようとするかな」
そう言われてエメローナが言った。
「それならそれで私としても一応案があるんだけどさ、
例えば――アーティファクトを一定の場所に配置するとか。
それがだめならそれに成り代わるオブジェとか、そうすることで各エリアのパワーバランスが――」
クラーネアは頷いた。
「流石は万物の創造手、既にその結論には達しているってことだね。
ただ、それはそれで一つの大きな問題がある、それは――言わずともわかるよね?」
バルファースは答えた。
「俺みたいにお宝欲しさにロマンを求めるやつの恰好の餌食になるか、
もしくは欲深い人間の業――戦争の火種として奪い合いが起きるようにもなる――
アーティファクトというのはそういうものだからな」
そうだな、それならそんなことすることはできないか――カイルはそう考えると、クラーネアは頷いた。
「そうさ。
だからそんなことが起きないようにするため、配置するものをモノにしなければいいという考え方があるのさ」
モノにしなければいいって、まさか――
「そう、配置するものはアーティファクトでなければオブジェでもない、生命体だったらどうかってことさ。
無論、不用意な者をそのような役割にするわけにはいかない、だから――
その土地の”守り神”を名乗る存在にその役割を与えるというのはどうかな?」
……これがこの世界に”聖獣”と呼ばれる存在が現れることになるきっかけだった。
そう、”聖獣”とはまさに文字通り、世界のパワー・バランスを安定させるために存在しているこの世界の守り神だったのだ。
確かにその土地の守り神なる者であれば不用意に手出ししようなどとは思わないかもしれない。
仮にそのような不埒な者が現れでもしたら地元住民が黙っていないハズ――だからその点でも安心である。
「そういえばドミナントの守護神と言えばシルヴァンス・ウルフだったっけ?」
カイルはそう訊くとザードは驚いた。
「えっ、僕が守り神になるの!? うーん、どうしようかなぁ……」
「そうだね、クロノリアにはそういうのは特にいないけど、
まあ――その時はこの私がその役を担うことになってもいいね」
クラーネアはそう言った、いずれにせよ未来の話である、
今後どうするかについてはもう少し根を詰めることになりそうだ。
「それより、今回はどうやら”正史ではない場合”の問題が起きたようだ。
その場合の相談内容は?」
フレアはそう訊くとクラーネアは頷いた。
「まさにそれだね、今回は未来からの厄介者が現れたこと――
我らが”時空都市クロノリア”の者たちもまた此度の件について協議している状況だよ」
”時空都市クロノリア”だって? それには人間界の者たちが驚いていた。
「時空都市なの!?」
メロリーナが訊いた。
「初めて聞いたなぁ――」
「ああ、近くにいたハズなのに全然――」
パティとカイルも唖然としていた。
「我々は時空間の流れを監視しているんだよ、それはローアの刻から行っていること――
エターニスの精霊界とは機能を分離してこの世界を見届けるのが我らの使命なんだよ。
そう――私たちもまた、”時空都市クロノリア”に根を下ろした第4級精霊なんだよ」
な、なるほど……。