ドラゴン・スレイヤー ~新たなる未来~ 第6章 第143節

第6章 暗い陰謀

第143節 とうとう現れた碧落の都

 精霊たちに招かれ、その者はゲートから入ってきた。 そのものはローブ姿のザ・魔導士たる存在のような感じだった。
「おやおや、これはなんとも手厚い歓迎だねぇ。 えーっと、話したいことがあるんだけど誰が事情を把握しているのかな?」
 話し声からして若い女性のようだ。彼女に対してラドリゲルスが対応していた。
「私が請け合おう。時に――クロノリアの者とお見受けしたが?」
 彼女は頷いた。
「そう、私はクラーネア=オンティーニっていうんだよ、 クロノリアではちょっとした能力者で知られているオンティーニ一族の者なんだよ」
 なんだか不思議な物腰の女性だった。 しかしクロノリアと言えば――ドミナント大陸の北東部にある山の中にあるまさに閉ざされた町、 普通なら誰もそんなところに行こうとは思わないし、そもそも町があること自体知らない人さえいるこのご時世―― まさにそんなところからやってきた人物ということもあり、カイルをはじめ何人かは不思議そうに彼女を見ていた。
「なあバルファース、そういえばクロノリアに行った事ってあるか?」
 カイルは彼に訊いた。
「ああ、一応な。もっとも――行けたのは魔法障壁の手前までだけどな」
 要は諦めたってことか、そう、クロノリアには魔法障壁もとい”フィールド”と呼ばれるものに包まれており、 外から侵入する者を拒んでいるのである。 そういったこともあり、道楽とかでもなければ普通は誰もそんなところに行こうとは思わないわけである。
 だが、そんな折にまた別の者が――
「大変だエメローナ! すぐに来てくれ!」
 別の精霊がその場にやってきた。
「なによ、なにかあったの?」
「サルタリスが呼んでいる! 緊急事態だ、記憶から闇があふれ出ている!」

 一行は慌ててその現場へとやってきた。
「原因は3つの”クライアスの記憶”でした、これとほかの記憶と同居させてしまうと、そっちにも闇の力が影響してしまうようなんです――」
 サルタリスがそう説明していた、それはそれは――
「そうね、それならアレの出番ね。」
 アレって? エメローナは言うとフレアは思いついた。
「そうか、”パンドラ・ボックス”だな。 カイル、それも受け取っているハズだろう?」
 いや、確かに持っているけどさ――なんで俺が受け取ることになっているんだろう――カイルは悩んでいた。 確かに、人間の世に放つことにしているから人間の手に渡るのが自然…… だが、それでなんで俺の手なんだろうか、カイルはますます悩んでいた。 しかし、この世界では需要が薄れ数少なくなってしまったハズのマジック・バックと共に譲り受けたため、 それはそれでちょっと得した気分だった。
 だが、それに対して――
「だからって、1人で数多のアーティファクトを持っているというのは感心しないね、 まさに力の独占とも言うべき状況だ、そこは改善したほうがいいね」
 と、クラーネアはいう、おっしゃる通りである。
「わかってはいるんだけど、でも、不用意に力を解き放つのも、それはそれで問題かなと思って――」
 そう言われてクラーネアは頷いた。
「まあ、それは確かにその通りだけどね。 それなら、1,000年前の話よろしく各々の仲間に委ねてみるのもありってことなんじゃないかな?」
 それもそうか、歴史は繰り返すとはよく言ったもんだ。

 ということで、その”パンドラ・ボックス”を取り出すと、その箱の中にクライアスの2つの記憶を入れたエメローナ、 もう一つはクラーネアが取り上げていた。
「それはいいんだけどさ、問題はこれをどこに保管するかってことよね。」
 あ、そう言われてみればそうだな、きちんと厳重保管してもらえるところに置くしかなさそうだが。
「精霊界には置けんぞ? そもそも人の世にあるべきものをこの世界に置くこと自体が難しいというもの、ゆえに――」
 ラドリゲルスはそう言うとディウラが言った。
「それなら私が! 元はヴァナスティア様のところにあった代物です、 ヴァナスティア様に掛け合って、事情を説明して厳重に保管してもらうことにしてみます!」
 ああ、そういう手があったか。
「ヴァナスティアか――そうだな、そこに保管してもらえるのならそれが一番良いだろう」
 ラドリゲルスも納得していた。
「ふむ、それから……これはグリフォン・ハンドだね?  なるほど、こいつは――このぐらいならうちで預かれそうだよ、それでいいかな?」
 クラーネアはそう訊いた、まあ――そうしてもらえれば一番いいか、カイルは頷いた。
「言っても俺に主導権があるわけじゃないんですけどねぇ……」
 そう言えばそうだった。