ドラゴン・スレイヤー ~新たなる未来~ 第6章 第142節

第6章 暗い陰謀

第142節 世界のパワー・バランス

 ところで問題が1つあった、それは――フレアは右手からどこからともなく標を取り出した。
「緊急事態ゆえに思わず持ってきてしまった――」
 そう、オーパーツやアーティファクトやらを持ち込んでしまったのである。
「それはまさか運命の標フェイタル・ロアーでは!?」
 ラドリゲルスは驚いていた。
「なるほどね、てことは――元々は精霊界のものだったってわけね、それなら安心ね。」
 エメローナはそう言うが、フレアは悩んでいた。
「それがそういうわけにもいかないようだ――」
 すると、彼女はなんと、左手からも――
「えぇっ!? 運命の標二刀流コール・ツイン!?  まさか強制怒りの解放リミット・ブレイクしちゃった!?  じゃあ、さっきの記憶でクライアスが言ってたことってフレアのことだったの!?  別の時代の運命の精霊様とかじゃなくって!?」
 エメローナは酷く驚いていた。
「それはマズイな――」
 ラドリゲルスは腕を組んで悩んでいた。
「そんなにマズイこと?」
 ディウラはそう訊くとクローザルが答えた。
「その運命の標二刀流コール・ツインを発動した時のマナの量が異常です!  なるほど、これはまさしく世界のパワーバランスを崩しかねない事ですね――」
 そんな! だが――
「いいえ、確かに崩しかねない行為かもしれないけど、最も重要なのは前提として大量のマナが必要ってこと、 つまり――」
 すでにそれだけ世界のパワーバランスが崩れているということか……。
「なるほどな、よくわかった。 これは私・裁定の精霊としての見解になるが、恐らくあの”天命”を語るクライアスが現れ、 そして何らかのことを成し遂げたことで世界のパワー・バランスが崩れたのだということだな」
 なんてこと――本当に?
「現にあやつはあちこちに出向いて何やらをしている。 そして最後に”ユグドラ”に向かい、何かをしていたそうだが――」
 ”ユグドラ”って? ザードは訊くと答えたのはやっぱりバルファースだった。
「この世界を作り出した大樹だ、あそこに見えるだろ?」
 広い空間の中に1つの大きな気が見えた、てっぺんが見えない……それだけ大きな大樹があった。
「あれがそうか……、ここまで来ていて言うのも何だけど、本当にあるんだな――」
 カイルは唖然としていた、言われてみれば確かに――と、 外の世界の者たちは”母なる大樹ユグドラ”を見て唖然としていた。
「すっごい大きな木だねぇ!」
 ザードもまた感動していた。
「ええそう、この世界の生物はみんなあの木から生まれたようなものなのよ。 所謂、生命の流れっていうものがあってね、あの木の中で生まれてくる日を夢見て待っているのよ。 そして、その日が来たらみんなのお母さんのお腹の中に命を宿してくれるのよ。」
 エメローナはそう説明していた、本当なんだ――外の世界の者たちはその話を聞いて再び唖然としていた、 つまり、この世界における定説である――ヴァナスティアの教えにも語られている話でもあるし。
「ということは、あそこに行けばヤツがいるってことか?」
 バルファースはそう訊くが、ラドリゲルスは首を振った。
「残念ながら、ヤツの姿は見えなかったそうだ。 そもそも”ユグドラ”には誰かがついていなくてはならぬ決まり―― だが、持ち場を離れた者を今厳しく追及してはいるが――」
 何もわからないか。確かに、先ほどのクライアスの記憶の中でも招集せよみたいなことを言われて慌ててどこかに行ったようだった、 招集せよと言ったやつの姿は全く見えなかったようだが。
「でも、それを言ったのはあの隷ってやつよねぇ?」
 エメローナはそう訊くとラドリゲルスは頷いた。
「間違いないな、しかもウロボロスが斃されたのをきっかけに現れているように見える、 つまり――その亡骸を贄にして召喚されているようだ」
 すべてヤツに仕組まれていたことだってわけか……。
「それにしてもお宅の能力、すごい能力だな、そんなことまで把握できるのか? 裁定の精霊といったか?」
 バルファースは感心していると、エメローナが言った。
「そりゃそうよ、裁定の精霊……一般的にはこう呼ばれているからね、”真実の精霊”ってね」
 なんと! それはすごい!
「すべての真実を結びつける存在って……マジか――」
 カイルは唖然としていた。
「だね! カイル、ウソはつけないってことだね!」
 だからなんで俺に言う! カイルはザードにそう訴えていると、周囲は笑っていた。
「わっはっはっは、まあまあ。だが――その事実を追い求めるまでにはそれだけの労力を伴うものだ。 無論、彼の言うように、私に隠し事をしようとしても無駄なことではあるがな」
 ラドリゲルスはそう続けた、だからなんで俺に言うんだ――カイルは項垂れていた。
 するとその時――
「ん、どうやらおいでなすったようだな――」
 ラドリゲルスは何かに気が付いてゲートのほうを注目した。
「ん? 何かきたの?」
 パティは訊くとエメローナは頷いた。
「なるほどね、話が分かりそうな人が来たみたいね。」
 話が分かりそうな人?
「ああ、言われてみればそうだな、先ほどの記憶の中でも言っていたな、”クロノリア”がどうとか」
 と、フレア……まさか!