ドラゴン・スレイヤー ~新たなる未来~ 第6章 第139節

第6章 暗い陰謀

第139節 闇から生まれし者

 一同はその記憶から外に飛び出してきた、すると――
「記憶の連鎖です、その記憶結晶から新たな記憶が2つ飛び出してきました!」
 と、サルタリスが言った、そういうシステムらしい。
「なるほど、数多の世界の欠落した記憶もまさに補完可能ということだな」
 と、ラドリゲルスは納得したいた。
「ええ、実際に見なくても、記憶の精霊君が仕事量を10倍にしてくれればどんな記憶でも引き出せるってわけ。」
 と、エメローナは言った……それなんてブラック企業、サルタリスは引きつっていた。
「冗談よ、世の中知らないほうがいいこともいっぱいあるから呼び覚まさなくたっていい記憶だってあるわよ。 だからせいぜい3倍程度で十分ってところね。」
 3倍でもそれなんてブラック企業、サルタリスはやっぱり引きつっていた。

 現れた記憶はやっぱり精霊石を容れ物にして結晶化を行う、あとはわかるな?
「精霊石って伝説に登場するような代物だけど、そんなに簡単に作れるの?」
 ディウラが訊くとレオーネが答えた。
「その場の力を凝縮する魔法を使っているように見える。 つまり、精霊界のマナの力を凝縮しているということ――それだけマナが濃い世界ゆえに可能な行為ということだな」
 なるほど、そもそも精霊界そのものが伝説というか夢物語のような場所、それなら納得がいくか、 そもそもそんなところにいること自体が半ば信じられないのだが、今更か。

 そして――
「これが”暗い明日”の記憶ね?」
 エメローナはそう言った、その記憶に既に入り込んでいる、だが――
「この記憶は既に粛清されたものの記憶、 ということであれば本来は残滓の塊だらけになるのだろう?」
 ラドリゲルスはそう訊くとエメローナは頷いた。
「ええ、でもあんたの力があるからきちんとした像になっているだけのこと――それが何か?」
 だが、ラドリゲルスは――
「この記憶空間――そういったものを一切感じられぬのだ――」
 なんだって!? だが――
「いや、実は想定通りだ。 さあ見てみよ、これがその”暗い明日”の正体だ――」
 クライアスの正体? その記憶の奥には何もない荒野が広がっており、 ただただ殺風景な空間が広がっているだけである。
 すると――
「ぐおおおおお……我は、我は何者ぞ――」
 なんと、荒野のど真ん中からいきなり闇をまとった不気味な何かが現れた――
「な、何なの一体!?」
 ディウラをはじめ、一行は身構えていた。
「我は――闇から生まれし者……闇から生まれたのか……?  そうだ――我の役目はこの世界を闇に引きずり込むことだった――」
 何か、とんでもないこと言ってるぞこいつ――
「まさか!」
 エメローナは気が付いた。
「左様、ゆえにクライアスの目的もまた、精霊界を葬り去ろうとするものだったのだ――」
 ラドリゲルスは頷いた。
「どういうことだ?」
 バルファースは訊くと、フレアが答えた。
「精霊界では最も危険視している存在、それがどうして精霊界のクライアスとして現れたかはわからぬ。 だが、精霊界において、かの者はこのように呼ばれている、”邪悪なる者”と――」
 ”邪悪なる者”だって!?
「”邪悪なる者”と言えば、ヴァナスティアの教えにもあるそいつのことか?」
 レオーネはそう訊くとラドリゲルスは答えた。
「左様。私はあの時の”暗い明日”を見たときにもしやと思った、あの独特の闇の波長―― おそらく間違いないだろう、と。 しかし、それが精霊界にいるのはどういうことか、その確証を得られぬうちは断定する事もできなかった――」
 だが、あの”暗い明日”の記憶を見る限りは間違いなく――
「でも、ヴァナスティアの教えだと”邪悪なる者”はローアの刻に斃されたのだろう?  それがなんで今のこのグローナシア1,000年の時にいるんだ?」
 バルファースはそう訊いた、この記憶は何を隠そう、ローアの刻の時代の風景なのだそうだ。
「仮にそのローアの刻で滅んでなくたって、たった今斃しただろう? 問題は解決したんじゃないか?」
 カイルはそう訊くと、それに対してフレアが言った。
「精霊界では最も危険視している存在ゆえの理由があるからだ。 そう、やつはいくら斃してもいずこの刻において再度復活するのだ。 無論、今斃したことによってしばらくは安心できる世が続くことは恐らく確実だろう、 ただ――やつがしでかしたことによる影響だけは残る、あの穴倉の中で何をしていたのか――」
 えぇ……それはやばいじゃないか。
「そ、それにさ、クライアスって2人いるんだよね? それってなんなのかな?」
 と、パティは訊いた、確かにそれはそれでなんだかヤバそうな気がする。
「あえて何故”邪悪なる者”である存在を語ろうとするのか、嫌な予感しかしないな――」
 レオーネはそう言った、確かにその通りだ。