ドラゴン・スレイヤー ~新たなる未来~ 第6章 第138節

第6章 暗い陰謀

第138節 クライアスの記憶

 記憶システムが展開されているところまでやってきた一行だが――
「その記憶結晶? 無茶苦茶多くないか?」
 カイルはそう訊いた、山ほどあってもはや何が何やらである。
「世界の記憶のすべてがここにあるのだ。 失われている記憶もあるが、それは関連する記憶同士で補完しあうシステムのハズだから――」
 フレアはそう説明するとエメローナは嬉しそうにしていた。
「さぁっすがフローナル様ね! 先代のシルグランディアが説明したことちゃぁんと覚えてるぅ!」
 そう言われてフレアは悩んでいた。
「……最後に書き取りテストまでするぐらいだからな、嫌でも覚えることになる――」
 マジかよ、期末テストかなんかじゃあるまいし……って、マジメにやっているのがすごい気がする。
「無論、そのほとんどは説明会の時点からふざけるななどと言い参加を放棄している、 ゆえにそもそも記憶システムというものを知らない・利用せずにわけのわからぬ判断をする者がほとんどなのが現状なのだ、 だから今回の粛清による一掃の判断も何も考えもなしに行われていたのだ、 せっかくのシステムがあるというのに、嘆かわしい――」
 ラドリゲルスは憂いでいた、マジでなんなんだよ精霊界…… 例のクライアスと隷が言っていたように本当にろくでもない精霊ばっかだな、無法地帯かよ。
「レガシー派の限界も近いんじゃないか?」
 カイルはそっと言った、ほんとそう。

 言っていても仕方がないので、ラドリゲルスはサルタリスに訊いた。
「先ほどの精霊石はこの通り結晶化させておきました、さあどうぞ!」
 サルタリスはそう言いつつあの精霊石を受け取った。
「見た目は特に変わったところはなさそうだが――」
 レオーネはそう言うとラドリゲルスは答えた。
「まあ、そうだな。 だが、この場に展開される光景はただの闇ではない、それが唯一の違いだ――」
 ラドリゲルスはそう言いつつ、記憶結晶内の記憶をその場に展開しようとしたが――
「闇を展開していると何事だと思われるな。 これはむしろ、我々のほうから干渉したほうがよろしいな?」
 考え直していた。
「そうね。えーっと……こうね。」
 エメローナはその記憶結晶に何やら魔法を使用すると、記憶結晶からなにかが噴き出してきた!  それが一行を包み込むと、記憶結晶の中に!
「正常な動作よ、安心して。」
 そ、そうですか……。

 記憶の世界では、クライアスと”暗い明日”が何やら話をしあっている光景が見えた。
「こいつがカルスが対峙した”天命”を語るクライアスね、確かに私もこいつとは出会ったわね。」
 エメローナはそう言った、ということはやっぱりこいつが元凶?
「あれ? その”天命”を語るクライアスのほうは残滓としてしか記録されないのではなかったのか?」
 フレアはそう訊くとエメローナは答えた。
「ええ、だけどこの記憶には裁定の精霊の力が働いているから、 しばらくは元の像を保つことができるハズ、 無論、粛清されて消えてしまった”暗い明日”君がこの記憶の中で像を成しているのもその力のおかげよ。」
 裁定のための判断材料をとどめる力を持つ精霊の力が働いているってこと――
「なっ!? 粛清された者も記憶から抹消されるのか!?」
 ラドリゲルスはそう訊いた、それにはフレアも驚いていた。
「そうだったわね、言ってなかったわね。」
「テストにも出されていなかったぞ!」
 テストにこだわる高級精霊様、ラドリゲルスはそう指摘した。
「精霊界がアホみたいに粛清をぶん回す事がないかと思って説明していないのよ。」
 確かに、それもそうだ! ラドリゲルスは考え直した。
「ってか、それは私の作ったシステムというより、 この世界の根本的な記憶の仕組みのほうに依存するところなんだけど。」
 ああそっか、シルグランディアはあくまでそれを管理しやすいシステムにしているだけのことだもんな。
「ということはこの”天命”を語るクライアスが残滓にしかならない現象も記憶の仕組みによるもの――」
 フレアはそう訊くとエメローナは頷いた。
「まあ、言ってしまえばそうなんだけどね。 でも、きちんとした像があるハズなんだから残滓にならんでもいいのにって思って改良を考えているのよ。」
 まあ……言われてみればそれもそうか。

「おい、貴様! 私の計画を邪魔したな! ヤツを復活させただろう! どういうつもりだ!」
「邪魔などしておらん、そもそもウロボロスが滅ぼされるのは予定の内、こればかりはどうあがいても仕方があるまい――」
「あのウロボロスは不完全な状態! それもまだ破壊者としての域に達してはおらぬ!  ゆえに我がヤツをより強大な力を持つ者へと進化させようとしていた! それを――」
「無駄だ、そのようなことしたとて限界がある、ヤツがより強大な力を得るには時が必要なのだ、 ゆえにエターニスの連中が早々に開放を予定している以上、貴様が何をしようと結果は変わらぬ――違うか? ”暗い明日”……」
「ぐっ、貴様っ!」
「怒るがよい、猛るがよい、いくら憤ったところで貴様の計画は予定通りに順調に進んでおるのだからな。 無論、我の計画も順調に進んでおる――だが、我の邪魔だけはせぬことだな」
 一同はクライアスと”暗い明日”のやり取りの一部始終を見ていた。
「ウロボロスをいきなり復活させたのは”天命”を語るクライアスのほうで、 ”暗い明日”のほうは精霊界の総意を以て復活し、その際のウロボロスをパワーアップさせようと目論んでいたのか――」
 ラドリゲルスは悩んでいた。
「いずれにせよ、”暗い明日”のほうもまた邪悪な企みを目論んでいたってことだな――」
 フレアはそう言うと、ラドリゲルスは――
「何してるのー?」
 ザードは訊いた。
「ん? ああ、この2人の記憶をそれぞれ辿ることを考えていてな――」