ドラゴン・スレイヤー ~新たなる未来~ 第6章 第136節

第6章 暗い陰謀

第136節 大いなる世界

 そして――いよいよ精霊界へ。
 精霊界のゲートを抜けた先は、まさに何処までも広がる大草原が広がっていた、 本当に無限に広がる大空間という感じだった。
「なんだここ、どうなっているんだ!?」
 カイルは驚いているとバルファースは答えた。
「ざっくりした説明にはなるが、 ここはあくまで精神世界で、入ったゲートの特殊効果で視認も物理的接触も可能にしている世界なんだそうだ。 ついでを言うと、俺らが住んでいる世界のあくまで裏側の世界であり、 いうなれば、並行世界っていう理解らしいぞ」
 エメローナから聞いた話をそのまま言っているんだな。バルファースの話はさらに続いた。
「だが、並行世界っつっても移動距離には乖離があるそうで、 こちらの世界で一歩に相当する距離でも、向こうの世界では半歩にすら満たない距離しか移動ができない―― 要は、それだけ広い世界だっていうことらしいぞ」
 つまり、距離の概念から異なるらしい。
「そんな世界に――そもそも世界の管理者たる領域なのに、本当に入って大丈夫だったのだろうか――」
 カイルは悩んでいるとバルファースは首を振った。
「そいつは違う、入ったところで咎めれられることは一切ない。 ただ、それでもここはあくまで世界の管理者の領域ゆえに、 普通なら俺らのような存在に対しては押しなべて塩対応であることは確実ってことだな。 つまり、入れる者であれば誰でも入れるというのが正式だそうだ」
 入れる者であれば?
「所謂、何かしらの”縁”があることで侵入することが可能となるんだそうだ。 だが、今では精霊界自体が揺らいでいる状態……それを理解している俺らだから、 むしろこれは”縁”というよりも、俺らが何とかしたいっていう”思い”のほうが優先される仕組みらしいぞ」
 ”思い”だけで入れるとはなんとも緩いような――
「だが、それだけで本当に入れるかというとそれは正式ではない。 実際にはそれを結ぶ存在が精霊界にいるから初めて成せること――そう思えばいい」
 と、フレアは付け加えた、つまり――
「エメローナさんがいるからってことか!」
 と、カイルは理解した、まさにその通り。 なるほど、ということはつまり、そもそもゲートのところで入れるかどうかチェックされているってわけか。 てことは――それを突破している不審人物の侵入ということは―― やはり、どこかしらに内通者的な精霊がいてもおかしくはないってことか、 それで数多の精霊も含めての粛清を――
「私は高級精霊の器だから入れるってことなんですけどねー♪」
 楽しそうに言うクローザル。要は精霊界のゲートをくぐるには制限こそあるが1つではないということか。
「理解できたところで早速俺の妻を紹介してやろう、ちぃっと変わってるが驚くんじゃねえぞ」
 バルファースはそう言いつつ、得意げに精霊界の中を案内し始めていた、 驚かないけど全然ちぃっとじゃねえでしょ。
「なんか、高級精霊でないやつに案内されるっていうのが――」
 レオーネは悩んでいるとフレアが言った。
「あいつの話にもあったように、この世界は距離の概念からけた外れている。 見通しは最高だが、案内があるのならそのほうがいいさえある――ということだな」
 なるほど。

 途中でワープでもしたらしく、いきなり目の前にエメローナが現れた。 だが、彼女の前にはレンガで積まれたバリケードのようなものが。
「まああなた♥ みんなを迎えに行ってくれたのね♥」
 エメローナは猫なで声でそう言うと、バルファースは訊いた。
「愛する美人妻のためならな。 それより、守備はどうだ? 粛清やつは全部倒すっつってたがどうした?」
 ノリのいい夫婦だな、ノロケの件が全部ネタにしか聞こえないぞ――エメローナだからだな。 それより、エメローナはため息をついて答えた。
「もちろん粛清部隊は全員残らずぶっ飛ばしたわよ。それより――今はあいつが厄介なのよ。」
 残らずって流石だな、やっぱりシルグランディアならそうでなくっちゃ、 ノロケなんてますますネタにしか聞こえてこないぞ。 とにかく、バルファースはレンガからそっと顔を出してそいつを確認すると――
「なんだあいつは? 妙に邪悪なオーラをまといやがって――あいつが根暗精霊”暗い明日”ってやつか?」
 なんでもいいが、よくできたネーミングだな。
「そんなに暗いのか?」
 カイルがそう訊くとフレアが答えた。
「私の運命の精霊としての記憶にもある―― まるで闇の魔術でも使用しているのではないかとさえ疑うような精霊だ。 やつの行動原理はもはやこの世界の者ではまるで理解が及ばぬ…… 何を考えているのか全くわからぬやつなのだ」
 確かにそれは根暗精霊”暗い明日”案件だな。
「そんな人がよくここの精霊たちに問題視されずに存在しているなぁ――」
 メロリーナはそう言うとエメローナが答えた。
「もちろん、問題視はしているけどね、 でも、重鎮と言われる連中は下々の精霊の存在なんてどうとも思っていなければどんな奴がいるかもきちんと把握していないし、 それに問題のやつがいたとて、不用意に粛清なんかしようものなら世界のバランスに問題を起こすだけだし――」
 いや、だったら――
「今回の粛清の決定って間違ているんじゃあ!?」
 ディウラはそう訊くとエメローナは頷いた。
「ええ、まさにその通り。 ただし、不審人物の排除との天秤にかけた結果なんでしょうね、いずれにしても歓迎されない方針だと思うけど。」
 な、なるほど……。
「内通者はあいつになるのだろうか――」
 フレアはそう思った、クライアスが2人いるってことはそう言うことになりそうだが――
「となると、もう一人のクライアスがどうなったのかって事になりそうね――」
 エメローナもまた何やら考えていた。