ドラゴン・スレイヤー ~グローナシアの物語~

第5章 冒険の果てにて

第128節 エピローグ・平和な世の中

 ディウラとレオーネとエメルナは意気投合し、一緒にショッピングに繰り出していた。
「誘っていただいてありがとうございます♪」
「いいのよ、私も気晴らしになるからこんなのしょっちゅうよ」
「そうそう、2人よりも3人でしょ」
 確かにエメルナの言う通りか、ディウラはそう思った。
「それにしても、エメルナって元盗賊っていう割にはとっても素敵なお召し物ね!  でも……あんまり着飾ったりしないあたりは元盗賊って感じを出しているね!」
 所謂、中世の貴婦人という感じの服装ではなく、 どちらかというとモダンな印象の布の量が控え目のワンピーススカートであった。
「まあそうね、ああいうヒラヒラしたのって苦手なのよね。 もっとも、旦那は私に結構可愛げなものを着させたがるんだけど……」
「でも、その場合は嬉しそうに着てるんだろう?」
 レオーネはそう言うとエメルナは得意げに答えた。
「まあな、一応女やっている以上はな」
 きちんと女やっているんだ――性格のイメージに反してディウラはエメルナのそのギャップに驚いていた。
「何を驚いているの? 当然でしょ?  これでも7人産んでるんだからな、それを考えるとだいたい想像つくでしょ?」
 た、確かに……ディウラははっと気が付かされた。それに対してレオーネは考えながら言った。
「旦那はエメルナ”ちゃん”の追っかけだったからね。 もちろん、エメルナちゃんの地獄蹴り常連でもあったのよ」
 なんと! エメルナが話を続けた。
「そうよ、早い話、旦那は極度の変態なわけよ。 今までいろんな縁談があったにも関わらず、どの女も気に入らない―― それでその結果、私を知って運命の人を決めたんだとさ、変な男だろ?  それなのに……有力貴族のクセして地べたの上で土下座して結婚してくれって懇願してきやがった。 もちろん何度も断り続けてきたが――」
 レオーネが話を続けた。
「今度はエメローナを介してどうしてもって懇願してくるもんだから、 特別にプロポーズの機会を設けたのよね」
 悪く言えばストーカーだが……でも、なんだかんだでエメルナは折れ、 しばらく付き合ったのちに結婚したようだ。 そして……7人子供を産むほどにまで夫婦仲は円満で、 息子たちはアイドルを続けているお母さん――地獄蹴りやらいつもの男勝り口調やらでかっこいいお母さんが自慢と語っており、 一方の娘たちはアイドルを続けているカワイイお母さんが自慢と語っているそうな。
 無論、この通り、旦那からもワケアリアイドルユニットを続けていることについては公認を得られているようだ、そもそもワケアリゆえに。 だが――その実情はエメルナの言うように、旦那は極度の変態ということなのかもしれないが。
「ディウラもいい男見つけたら早いうちに印をつけちゃいなさいよ?  あんたぐらいの女ならたいていの男はくっついてくるんだからさっさと身を固めないと危ないよ?」
 エメルナはそう言うが、ディウラは悩んでいた。
「危ないって……エメルナさんやエメローナさんみたいに男の人に蹴り上げることも辞さないような女性になってしまう……とかですか?」
 え……そう言われてエメルナは目が点になっていた。
「だったらいいじゃないですか! エメルナさんはもちろん、エメローナさんになれるのなら素敵ですね!」
 それに対してレオーネとエメルナは嬉しそうに言った。
「確かにエメローナは究極系だな、私としても彼女の存在はまさに憧れそのものだな」
「そうね、エメローナは私の憧れでもあるな。 そもそも地獄蹴り会を引き受けることにしたのもエメローナの影響があってこそだしな」
 はい怖いこと言わない。

 カイルとバルファース、そしてクローザルは一堂に会してレストランでゆったりとしていた。
「それにしても久しぶりだな。バルファースは順調か? エメローナさんと一緒になることにしたんだろ?」
「まあな、おかげさまでな。あの女はいつもの通りだ、何も変わっちゃいない」
 いつもの通りか……カイルは悩んで……いや、むしろ安心した。
「そういうお前のほうこそ、夫婦仲は円満か?」
「ああ! おかげさまでな!」
 そんな会話をほのぼのと聞いているクローザル。
「いいですねぇー、青春ですねぇー♪」
 あれ、彼女作りたいとか言っていたようだが諦めたのだろうか。
「まあ、そうですね――そもそも現世の生き物ではないですので私……。 それに、こうして皆さんと時間を共有できるだけでも十分幸せですよ!」
 そんなもんか。
「けど、お前ってさ、言っちゃなんだけどさ、お役御免になったんだろ? まだ現世にいるのは?」
 カイルはそう訊くとクローザルは悩んでいた。
「ですよねぇ、あえて訊くのもなんか違うし……さっさと死にたいのかーとか言われて……」
 エメローナなら確かにそう言いそうだな、2人は悩んでいた。
「てことは忘れてんのか? 俺からなんか言ってやろうか?」
 バルファースはそう訊くが、クローザルは首を振った。
「いえ、実は保留って言われているんです。 それからどうするかはわかりませんが、少なくとも何やら考えがあるのは間違いなさそうです」