「ごめんなさい、それはまだ……。
それより、お姉様に折り入ってご相談があるんです!」
「私、外見だけは女の子じゃないですか! だけど本当はそうじゃないハズなんです! だって――」
「あ……言われてみればそうね、そうなったらそうなったで今度は彼の子を産んであげられるのかってことを気にしているのね?」
「……はい! その通りです!」
「そうよね、女の子だもんね、将来の夢はお嫁さんになって子供を産んで素敵なお母さんになりたいんだもんね!」
「そうです! だから子供ができたらいいなぁって――お姉様もその時が来たら言いなさいって言いましたよね!
だから今がその時なんだと思ったので!」
「そうだったそうだった、あなたとしては男を蹴り飛ばす計画なんかよりも一番重要なところだったわね。
よーし、そうなったら早速計画しなくてはいけないわね。
大丈夫よ、今のあなたの状態からすれば”彼女ら”も喜んで受け入れてくれると思うわね。
だって……今のあなたはまさに”彼女ら”とは同じ素質を持ち合わせているもの、
それなら”彼女ら”もあなたのことは無下にはしないハズね。」
「プリズム族……」
「第4級精霊、高位の精霊に近しい身体の精霊だから身体の作りはよりマナの力を取り込むための体にするためにある程度柔軟にできているのよ。
この子もまたそれに連なる存在、だから身体が大幅に破壊され、命の危機に瀕していてもなおかろうじて生命を保つことができていた。
そして、その破壊された部位を補うための部品もあらゆる精霊族のものを使えるのもまた高位の精霊に近しい身体の精霊ゆえのこと、
だからそれを補うために――」
「……プリズム族の身体を使ったということですか」
「プリズム族は種の保存のための一環として自分たちの女性の臓器を保存するということをやっているからね。
必要なのは基本的に臓器だけど、臓器の保存のために身体ごと保存している場合もある。」
「つまり、その身体を使ってその子の身体を補ったのですね?」
「どうやら、この子にもプリズム族の女性の身体としての特徴が表れてしまった……と考えるのが妥当ね。」
「しかし、それはいいのでしょうか!? だって、この子は――男の子ですよ!?」
「補った身体のパーツが完全にこの子に適合してしまった形でこうなってしまったのね、
欠損部分が大きかったせいで臓器も譲ってもらったんだけど、こんなことになるなんて――」
アルタリア雪原の街道の途中……その街道はある森林帯と隣り合わせとなる街道なのである。
その街道と言えば”不知火の雪女”が現れる伝説でも知られているところだが、
もう一つの女が現れることとしても有名な街道でもあった、それは”森の魔女”である。
その魔女こそが何を隠そうこれまでの話に出てきた”プリズム族”である。
そう――この森の中にフレアの故郷でありディウラの母親の故郷でもある”ラムル”があるのだ。
無論、その里の存在や”プリズム族”という存在については閉鎖的な種族という都合もあってほぼ知られていない。
単に”森の魔女”が出るということで恐れられているが、それでさえもアーティファクトよろしく迷信の類である。
とにかく、メロリーナたちとはそのアルタリア雪原の街道……言い換えれば、
その”プリズム族”の里である”ラムル”で分かれたのである。
とはいっても、そもそも森林自体が”森の魔女”のテリトリーであるため、
男は入ること自体が危なく……
「誘惑魔法!? すごっ! 2人ともそんなの使えるんだぁ……」
”誘惑魔法”で異種族の男を奪ってくるような魔性の類であるため、
カイルは単身エンケラスに戻っていただが、
ザードは精神年齢的にまだそこまで達しておらず、女性陣に甘えながら一緒に向かっている。
そして、その”ラムル”へと赴いた理由が単なるディウラの里帰りではなくそちらはほとんどついでなのだが、
真の目的はメロリーナである。
「さらにプリズム族はほかの精霊族にはない特徴がある。
それは、プリズム族にはほぼ女児しかいないことだな」
「恐らくプリズム族の遺伝子構造の問題だと思われるが、
プリズム族から生まれ出る子はほぼ女性なのだ。
つまり、プリズム族は女性社会ということだな」
だが、プリズム族が女性ばかりということにはもう一つの要因があった、
それは生まれ出た子をそもそも女児としてしか育てないことにある。
これはプリズム族の掟にもあることなのだが――では、もし男児が生まれても女児として育てるのか?
その答えはほぼYesである。例外もあると思うが基本的にはYesである。
だが、それでも身体は男児であることに変わりはない……それなら手術をしてしまえばいいのである。
プリズム族は種の保存のための一環として自分たちの女性の臓器を保存するということからもわかる通り、
彼女らの誇る技術を以て移植手術を行うのである。
無論、他所の種族にそのようなことをするのは普通ならありえないことなのだが――
メロリーナについてはエメローナによって幼少のころからそれがなされている――
元々死にかけていたメロリーナを、彼女らの身体のパーツを用いて大手術を行い、
ほぼプリズム族の女性のような特徴を併せ持って生きているのが彼女という存在である。
しかし、彼女はまだプリズム族の女性としては完全ではない――子供を産むための臓器が備わっていないためである。
つまり今回、彼女はそのためにラムルに訪問することになったのである、
エメローナがその時が来たら言いなさいと言ったことによる背景は、つまりこのことである。
そしてもちろん――カイルもまた、この話については2か月前に彼女と分かれる前に聞かされていた。
そして――
「ただいまー♪ カイルー♪」
「おお、お帰り! 無事に終わったんだな!」
シェルベリアの家の玄関、メロリーナはカイルを待ち構えており、
そしてお互いにしっかりと抱き合っていた。
彼女の服装はまさにあのフレアのようないいところのお嬢様のような装いの服装、
プリズム・スタンダードな服装らしいが、
それとは少し違って例によってスカート丈が短いという彼女らしいものだった。
「うん! カイルも私がいなくて寂しかったでしょ♪」
「そうだな! でも、これから一緒にいられるんだな!」
「うん……私、嬉しい――」
「俺もだ、メロリーナ! これからも俺と一緒にいてくれ!」
そう……こうして、2人は出会ったのだ。