ドラゴン・スレイヤー ~グローナシアの物語~

第5章 冒険の果てにて

第119節 女王エメローナの居城

 死闘というほどではないが何とか乗り切ったフレアたち。
「普段のクローザルにしてはなんだかイマイチな力だったな――」
 カイルはそう言うとフレアは頷いた。
「誘惑魔法ゆえだな、本来の力を出しての行動ができないのだろう。 無論、エメローナもこれについては見越しているハズ…… そこがこれまで世に現れた妖魔の魔女とは違うところだな」
 なんとも面倒な魔女が現れたものだ。
「大貴族を相手にしてもまったく動じることなく堂々と失墜させるほどの計算高さを兼ね備えた魔女―― 勝てる気がしないな……」
 カイルはそう言うとフレアは頷いた。
「だが、付け入るスキは一応なくもない。 あんな風に見えて一応弱点らしいものはあるからな。 問題はその弱点が早々に見えないことがネックになっていることだが、そこさえ何とかして的確に突ければ――」
 確かに、これまでのエメローナのイメージからすると、 何とも完璧な美女、頭が良くてなんでも完璧にこなす最高の美女!  ……というそんなイメージからは完全にかけ離れた性格に難ありの女というのがエメローナである。 それに頭はいいらしいが全くそんな風には見えない性格で、 美女ではあるがそれを台無しにしているような残念な美女であるというのが彼女…… そして男には興味なし――なのだが今は美人という特殊能力をフル活用し、男たちを手玉に取っているという――
「どうやって弱点を突くんだ?」
 カイルはそう訊くとフレアは首を振った。
「それがわかれば苦労しないということだな」
 バルファースは頷いた。
「なるほどな、考えておくか――」
 彼は腕を組んでいた。

 カイルたちは急ぐことにした、場所はもちろんアトレーニアであるが、 その道中エメローナの奴隷たちが行く手を阻んでおり、そいつらを蹴散らしながらなんとかたどり着いた。 その道のりこそ1日や2日そこらかかっていたが、その間彼らはなんとかやり過ごして突き進んでいた。
「これがアトレーニア?」
 カイルは唖然としていた、その町は何とものどかな田舎町という印象である。
「旅人が立ち寄らない町だからな、それゆえにいるのはだいたいここの住人たちに限られる。 だが、そのルーツは何を隠そう精霊シルグランディア、つまりエメローナが起こした町なのだ」
 フレアはそう言うとレオーネが言った。
「なるほど、つまりローアの時代に伝説の金属”ミスリル”を使って伝説の武器を作り出したのはシルグランディアということだな」
 だが、そんなシルグランディアは今――
「あの建物にいるのがそうじゃない?」
 と、なんと、パティがいきなり見つけていた。
「え? どれだ?」
 カイルたちは訊くがよくわからない。
「ボクも見えたよ! なんか、変な服着ているようだけど……?」
 変な服? 嫌な予感がしたディウラは慌ててザードの目をふさいだ。
「ええー? あの服も見ちゃダメなのー? でもわかった! 僕は目をふさいでいるね!」
 ザードは素直だ。
「……で、どんな服だって?」
 フレアは呆れながら訊くと、パティもまた呆れながら答えた。
「えーっと、あれはベビードールってやつだね、 基本ルームウェアになるようなセクシーなランジェリードレスで、 例によってスカート丈が短い上にレース地だから中のTバックも丸見えだし、 あのおっきな胸もくっきりと見えてる危険な女よ」
 それはぜひとも見てみたい! カイルの心は踊っていた、女神エメローナママ様~♪
「カイル! ダメ!」
 メロリーナは訴えていた。
「あの建物の上にいるよ! しかも大勢の奴隷が建物を取り囲んでいるみたい!」
 パティはそう言うとフレアは頷き、その建物へと急いだ。

 その道中、多くの男こそいるが、色香に絆されているような気配はない。
「職人の町だな、相変わらず熱心なことで――」
 バルファースはそう漏らしていた、どうやら自分のやるべき作業に集中している者が多い模様。 すると、フレアが――
「エメローナの色香が濃くなっているな――これはお前たちは近づかないほうがいいかもしれん――」
 と、男たちに注意を促していた。
「特にカイル、お前はすぐにあの女に心を奪われてしまう――メロリーナと一緒に後ろに下がっているんだ」
 えぇっ、そんな! 俺は大丈夫だ! エメローナの野望を阻止するんだ!  そのためには是非にエメローナ女王様の今のえっちな御姿を拝観し、今日から俺のママに――
「だから下がれと言っているのだ」
 はい……カイルは素直に従うことにした……が、とても残念そうにしている。
「女性だけで行く。いいな?」
 バルファースとパティはうなずいた。
「俺も遠慮しろってことか、仕方がないな――」
「私もザード君の面倒を見ているから残るね」
 ということで、フレア、レオーネ、そしてディウラの3人はエメローナの元へと向かっていた。

 それから30分ほどが過ぎたようだがどうなったのだろうか、 宿屋をとっていたバルファースたちは悩んでいた。
「ねぇ、カイル♥ 私のことちゃんと見てる?」
「ああ、見てる――メロリンちゃん……俺のメロリンちゃん――」
 エメローナの色香から引き離すためとはいえ―― 流石に見ていられない他の面々は部屋の中の2人をおいてベランダにいた。
「完全に痴女だもんな――」
 バルファースは呆れていた。
「”ちじょ”ってなあに?」
 ザードから素朴な疑問。
「ザード君は頭がグルグルしちゃうものだから気にしないほうがいいよ」
 パティの的確な回答。
「うん! じゃあ僕気にしない!」
 しかしどうしたもんか――それなりに時間が経っているのに動きがないっていうのも――
「なあ! おい! あれ!」
 カイルがベランダへと飛び出し、異変が起きていることを知らせてきた、それは――
「んだよ、イチャイチャしてたんじゃねえのか?」
 バルファースは意地が悪そうに言うが、メロリーナが指をさしていた。
「それよりもアレ、なんか変じゃないですか!?」
 そこには何人かの男たちが山車みたいなものを引いていた。
「なんだ? 祭りか?」
 バルファースは言うが、カイルは否定した。
「でも、それにしてはおかしくないか? なんとなくだけど、人が縛り付けられているように見えるんだけど――」
 どういうことだ? バルファースとパティは耳を疑っていた、まさか――
「うん! 僕は目をふさいでいるね!」
 嫌な予感がしたパティは彼の目を慌てて塞ぐと彼はそう言った。 すると案の定、その山車の上に縛り付けられているのはフレアとレオーネ、そしてディウラの3人だった、 しかも――
「3人ともベビードール姿!? なんなのよ! エメローナ!」
 パティはそう叫んでいた、そういうことである……彼女らはエメローナの奴隷たちとの戦いに敗れると、 どうやらエメローナの手によって服を着替えさせられ、そのうえで見世物にさせられていたのである。
「こいつらはこの町を荒そうと企む野蛮なメス豚共だ! このような野蛮な者どもを野放しにしておいていいハズがない!  そこで我らが女神エメローナ様がこいつらを捕らえられた! これは見せしめだ!  この町に害をもたらす者は女神エメローナ様に手によってこうなるのだ! 女神様の御業を思い知るがいい!」
 女神エメローナ様……この町のルーツ的にある意味ではその表現が合っているというのはなんて皮肉なんだろうか。
「つまり、あの3人は豚小屋行きってことだな――」
 バルファースは悩みつつ、どこかへと歩いて行った。
「ど、どこに行くんだ!?」
 カイルは焦っているとバルファースは答えた。
「手も足も出ねえからな、とりあえず酒だ」
 えぇ……こんな時に……