ドラゴン・スレイヤー ~グローナシアの物語~

第5章 冒険の果てにて

第118節 エメローナの暴挙

 翌朝……
「あっ! フレアお姉様、おはようございます!」
 ベッドの上、元気よくあいさつしたパティ。だが、フレアは悩んでいる様子だった。
「どうかされたんですか?」
 心配そうにそう訊いた彼女、フレアは答えた。
「それが、どうやら夕べのうちにエメローナがどこかへ行ってしまったようなのだ」
 え、そんな――パティは悩んでいた。
「あの、もしかして、お姉様がいないと――」
 彼女はそう訊くとフレアは頷いた。
「ああ、エメローナがいなければ話にならんということだ、面倒なことになったな――」
 なんてこった。

 レオーネとディウラは話をしていた。
「レオーネ、いつまでその恰好を?」
 ディウラはそう訊いた、 レオーネは未だにエメローナに着させられたどこぞの美少女戦士風のセクシーな恰好をしたままだった。 それどころか寝ていた時もずっとこのまま――
「できることなら私も何とかしたいところだが脱げないのだ、 いや……脱ごうと思えば脱げるが他のものを着ることは許されないのか、身体からはじかれてしまうようだ。 つまりは裸との二択となるのだが、それならこれを着るしかないというわけだ」
 そこへフレアがやってきた。
「この服に強力な魔力がかけられている……言ってしまえば一種の呪いのようなものなのだろう。 もしかしたら他にも受け付けられる服があるのかもしれんが…… まあ、それは期待するような服装にはならんだろうな。 これはエメローナに何とかしてもらわないことにはどうにもならんな――」
 そんな……ディウラはがっかりしたように言うが、レオーネは――
「私なら平気だ、 これまでアイドルをやっていて、このぐらいの恰好なら何度もしたことがある、 そのせいか、そこまでいやというわけでもない。 それより、エメローナが元に戻ることを願うばかりだ――」
 エメローナ思いだな。
「そ、そういうことなら……言っていいのかわからないけど、 レオーネってすごいセクシーねえ……脚もきれいだし、胸も結構大きいし――」
 ディウラにそう言われたレオーネは腕を組んで自慢げに答えた。
「まあな、かつては”ガレマールの花”と呼ばれたこともあったからな。 下位貴族ではあったが、リンブラールの有力貴族が私を欲したのもそういった理由によるものだ。 もっとも……今はそんなものどうでもいいがな」
 そんなこと言わないで……ディウラは悩んでいた。この人も男勝りだな。

 エメローナが行く当ても見当がつかず、どうしていいのかわからなくなった一行。 ひとまず、そのアトレーニアへと行くことを考えることにした。 もしかしたら彼女もそこに向かっているかもしれない……なんだかとんでもないことになっている気がしないでもないが。
 だが――
「クローザルはどこに行った?」
 カイルは気が付いた、彼がいない。
「そういや夜中に誰か部屋の外に行った気がするが……その後はどうなったのかわからんな――」
 バルファースはそう言った、おいおいおい、まさか――
「恐らくそのまさかだな、エメローナ女王様の奴隷として一緒に行っちまった可能性は高そうだな」
 マジかよ……カイルは悩んでいた。
「いずれにせよ、俺らはアトレーニアを目指すしかない。 そのためにはまずは”アトレーニア半島”の付け根にある”トガレシア”に向かうことになる。 つまりはまずは雪原を抜けて西に向かい、”トガレシア”についたら北に向かうことになるわけだな」
 カイルは頷いた。
「”トガレシア”って海に沈みかけている町だろ? 最近もまた海に沈んでいたって訊いていた気が――」
 バルファースが答えた。
「俺らがエターニスに向かっていた道中は立ち入りを制限していたらしいぞ。 恐らく時期的な都合なのだろうが、もしかしたらそのうち完全に沈んでしまうかもしれねえって訊いたことがあるな」
「ということは、アトレーニアも?」
 カイルの疑問にバルファースは首を振った。
「俺もアトレーニアには行ったことあるが、あそこの土地は海抜が高めになっている、 ということはつまり、”アトレーニア半島”はそのうち”アトレーニア島”になるかもしれねえってことだな」
 けど、それならどうやって行くんだろう? あそこって海から近づくのって結構厳しい地形で有名だった気が―― カイルはそう思った、自分が心配することではないが。

 エターニスから出て2週間でエメローナがいなくなった。 だが、同じ距離だったらエターニスへ向かうまでに1週間もかからなかったハズ…… そう考えると、エメローナの狂いっぷりが旅を妨害していたとしか言いようがなかったということである。
 そんなこともあってか、”トガレシア”へ向かう道までにはスムーズに進んでおり、エメローナがいなくなってからは約3日程で到着したのだった。
 ところが――
「男はそこに置いていけ! 我らが美しき女王様への貢物にするのだ!」
 トガレシアの町を守衛している兵士たちがいきなりカイルたちを取り囲んでいた、これは――
「状況からすると、どう考えてもエメローナ女王様の仕業だな――」
 バルファースは呆れていた、だが――どうやら、向かう方向は同じのようである。
 そして、それを示すかの如く――
「くっ!? この魔法は――」
 フレアは慌てて魔法バリアを張っていた、上空から次々と魔法が放たれる!
「女王様の命令でこの先は醜いメス豚共の立ち入りを禁ずる!  メス豚はそこにある豚小屋に入るがよい!」
 なんと、そいつはクローザルだ! 完全に彼女に意識を奪われたか……
「豚小屋だと!?」
 レオーネはそう言いつつその小屋を見ると、確かに看板にデカデカと豚小屋と書かれている建物があった。
「おおっと! だが、そこの女は特別だ! エメローナ女王様が特別に可愛がってくださるだろう!  我らが第二・第三の女王様として君臨する時が来るのだそうだ! フハハハハハハ!」
 どういうことだ……フレアは剣を抜いた。
「エメローナ! お前! 一体何を考えているのだ!  こうなったら力づくで貴様の問題行動を正してやる! そして目的を果たし、エターニスに連れ帰る!」
 フレアはブチ切れていた。