ドラゴン・スレイヤー ~グローナシアの物語~

第4章 世界の綻び

第112節 もはや異常

 エメローナは人間界へと出ようとしていたが、その道中……非常に悩んでいた。
「なんか急に男の視線浴びまくっている気がするんだけど……一体何がどうなってんだか――」
 そして呆れていた。 彼女はそういう女性、ゆえに男共の視線を浴びまくって悦に浸るような趣味はない、 見た目だけならどう考えてもそっちなのだが、 彼女はどちらかというとじろじろ見てくる=喧嘩を売られていると捉えるような勇敢な女性なので、 不用意なことをしようものなら速攻でアビス行き確定である。
 だが、自分は一応女性なんだと改めて自覚し、ここでは一旦こらえることにした。
「可愛い服に可愛くて短いスカート、そしてその下に伸びる二筋の綺麗な脚……いいなァ……」
 力の精霊ダルタニスまでもが鼻の下を伸ばしてエメローナに見惚れている……どうなってんだよコレ…… そろそろグーパンを出そうかと考えていたエメローナだが、ここまでくるとそれを出す気にもならなかった、が――
「ウヘヘェ♪ いっただっきまあーす♪」
 1人の精霊がエメローナめがけて背後から襲い掛かった来た――これは明らかに異常である、どうしたものか――
「ならしっかり味わえやぁ!」
 激しい後ろ回し蹴り! 襲ってきた精霊は遥かかなたへとぶっ飛んでいった……。
「やっぱり、世界のバランスが狂っているってことなのかしら?  にしてもちょっと異常としか言いようがない感じよね。 早いところウロボロスをなんとかして……元に戻ればいいんだけど――」
 エメローナは立て続けに自分に襲い掛かってきた男精霊共を蹴りで順番に打ち返していた。 力の精霊ダルタニスについてはトドメに脳天かかと落とし!  その勢いでダルタニスは地面の中に……そのままアビスへと直行か!?
 そして、彼女の目の前には――
「貴様! シルグランディアだな!」
 カルスだ……面倒くさいやつ……
「何をしていたのだ!」
 何をって何よ――エメローナは悩んでいた。
「ウロボロスを斃そうかと思っていろいろと準備していたのよ、ダメかしら?」
 そう言われて……カルスは答えた。
「そ、そうか……なら、早くやればいいだろう!?」
 だが、エメローナは彼のそんな態度がむしろ嬉しかった。
「よかったわぁ! あんたはいつも通りのアンタですっごい安心したわぁ!」
 な、なんだ!? どういうことだ!? カルスは悩んでいるが――
「いいのよいいの♪ アンタは気にしなくたっていいのよ♪」
 カルスには彼女の気持ちが知る由もない、周りの男どもは彼女にデレデレなのにこいつは変わっていない!  普段はただムカツクだけのやつなのに、 今はそのただムカツクだけのやつというところがむしろいつも通りだったからこそエメローナは安心していたのである。
 そしてそのままエメローナは精霊界を出ようとしていた……
「シルグランディア! 待て!」
 が、そこをカルスに止められた。
「なんなのよ? 早く斃して来いってあんた言ったでしょ?」
 カルスは態度を改めていた。
「その恰好はなんだ! 人間界ではそういうのが流行っているのか!?」
 え、なんでんなこと訊いてくるんだよ、まさかこいつもおかしくなっちまったのか……? エメローナは身構えていた。
「そうよ、ちょっとした流行りよ。ダメかしら?」
 そう答えるとカルスは首を振った。
「いや、確かにその恰好のほうが身軽……人間界を動くうえでは理にかなっているのだろうな!」
 なんでそんな考察してるんだ、こいつらしくねえな……エメローナはますます悩んでいた。
「別になんでもいいでしょ?」
 エメローナはそう言い返すとカルスは頷いた。
「もちろんだ、ただ、普段のお前の恰好にしてはなかなかない姿だったからな、 精霊界に異変でも起きたのではないかと思って少し気になっただけだ!」
 あぁ……確かにその通りか、それで気になったんだな、エメローナはそう考えた。
「そんなことになろうものなら面倒だからな! わかったか!」
 はいはいわかったわかった、エメローナは呆れていた。
「じゃあ、そろそろいくわね。」
 そう言いつつエメローナは”ゲート”へと向かっていた。ところが――
「……そうとも、エメローナ=シルグランディア……前々から気になっていたのだ…… 揺れ動く大きなおっ○い……クネクネと動く腰の括れ…… そして、その短い履物のおかげで今度は細長くて綺麗な脚まで見せてくれるとは…… 絶景だ……素晴らしい眺めだ……そうか、これがセクシーというやつか…… エメローナ=シルグランディア……とても素晴らしい服装だ…… 今後はずっとその恰好でいてくれ……頼む、この通りだ…… 私はお前……エメローナのすべてが好きだ……デヘヘヘヘヘ……」
 ムッツリスケベのカルスは彼女の後姿に見惚れ、だらしない顔をしていた…… やはりこいつにも異変は起きていたか。
 しかし、精霊界がそんな状態になっているのとは裏腹に、 人間界ではそのようなことは全く起きていなかった。
「よかったぁ! こっちは全然異常は起きていない!」
 どういうことだ? ゲート付近で待っていたフレアは首をかしげていた。
「どうかしたのか? 精霊界で何か問題が起きたのか?」
 そう言われてエメローナは焦っていた。
「えっ!? えーっと、その……」

 エメローナは話をするとフレアは驚いていた。
「なんだって!? そんなことが――」
「ええ、急に精霊界の男共全員に性欲が備わったとしか思えないのよね。 逆に女性陣はどうだか知らないけど、私が感じた分にはせいぜいそこまでよ、 基本的に男たちが変になったところまでね。」
 フレアは悩んでいた。
「女性陣に影響があったらエメローナは…… 否、そもそも精霊界では逸脱した感覚の持ち主ゆえに違いはわからんか――」
 そう言われたエメローナは何故か腕を組んで得意げな態度をしていた。なんなのよこの人。
「ともかく、確かに子孫を残すうえでは重要な要素だが、 高位の存在ゆえに通常は必要な時に徐々に備わっていくもの、 それなのに一度にそんなことが起こるとは一体何がどうなっているというのだ…… 本当にウロボロスの影響なのか――」
 フレアはそう訊くとエメローナは首を振った。
「わからない、けど――確かめる方法は一つね――」
 フレアは頷いた。
「だな、やつを斃すしかあるまいな――」
 ことは一刻を争う自事態か……。