ドラゴン・スレイヤー ~グローナシアの物語~

第4章 世界の綻び

第111節 異変

 一方でエメローナ=シルグランディアは……
「ふーん……システムをいじって、ねぇ……。一体、誰がそんなことを?」
 サルタリスと話をしていた。
「え、えーと……」
 それに対し、同席しているメリルがはっきりと答えた。
「クライアスってやつよ!」
 だが、それに対してサルタリスが慌てて口を塞ごうとした。
「言っちゃダメだよ! カルス様によると、それはヒミツなんだからさ!」
「ヒミツってなんで? ってか、そもそもカルスって目覚めてんの?」
 そう言われてサルタリスは焦っていた。
「え、えーっと、そのー……」
 そんな様子にエメローナはため息をついていた。
「じゃあ、私も教えなーい!  ”誰が”・”何のために”そんなことをする必要があるのかわからんのに教えられるわけないでしょ!」
「ど、どーしてですか! なんで教えてくれないんですか!?」
「”誰が”・”何のために”そんなことをする必要があるのかわからんからっつってんだろーが!  そんなんでよくも記憶の精霊が務まるわねぇ! 記憶の精霊は記憶能力ゼロの精霊かよ!」
 そう言われてサルタリスは思いっきりへこんでいた。
「ったく! 次はテメェを改良するからな! アビスに旅立つ準備だけしとけよ!」
 サルタリスは焦っており、その場で土下座をしていた。
「ヒィイイイ! それだけは! それだけはご勘弁を!  ごめんなさいごめんなさいごめんなさーい! 何でもしますからどうかお許しを!」
 その様子にエメローナは頭を抱えて呆れていた。
「辞めろよそれ……ったく、私ゃパワハラ上司じゃねえっての……」
「パワハ……なんですかそれ?」
 サルタリスはそう訊くとメリルが言った。
「カルスみたいな精霊のことをいうの!」
 この世界にはその辺の認識がないハズなのに8割方当たってる!  エメローナはそんなメリルに呆気に取られていた。
「この娘、なかなか侮れない精霊様ね、今はまだ汎用精霊だけど、なんらかの要職に就くのも時間の問題かも――」

 すると、そこへ――
「荒れているな」
 あの精霊がやってきた、それは――
「あっ! クライアス! エメローナさん! こっちがクライアスです!」
 と、サルタリスがそいつを紹介した。
「え? あんたがそうなの?」
「そうだ。まだ精霊界に昇ってきて日も浅い、お手柔らかに頼むぞ」
 ふーん……エメローナはそいつを見て考えていた。
「何か?」
 クライアスは訊いた。
「いえ、なんというか、精霊界の生物にしてはちょーっとばっかし独特の雰囲気を醸し出している感じがしてねぇ……」
 エメローナが訊くとクライアスは頷いた。
「それもそうだな、それこそ最近精霊界に昇ってきたばかりだからな、 ある程度この世界の進化具合に沿って生み出されているハズ、 だからこの世界に生ける者の意識や認識を踏襲しているのかも知れぬ……そのせいでは?」
 言われてみればそれもそうか、エメローナは考えたが、 それにしてはずいぶんと成熟した意識の存在のように感じる……エメローナは深く考えていた。
「それはそうと、あんたさ、サルタリスから聞いたんだけどさ、 システムをいじることについて知りたいって?」
 エメローナは本題を切り出した。クライアスは答えた。
「システムをいじる? ああ、その話か、なーに、ただの興味本位だ。 カルス共が愚痴をこぼしているのでな、だから万が一、 連中が変にいじろうと企んだ場合にどうするのかと思ったまでだ」
 どういうこと? エメローナはさらに訊くとクライアスは答えた。
「例えばフレアとカルス……フローナルとカルナストはいつも対立が絶えない者同士だ。 だからカルナストがフローナルの世界の記憶をいじって自分に有利に働かせようものなら―― そう思うと少々気になったものでな――」
 なるほど、確かに言われてみればその通りか、エメローナは考えた。
「あんた、案外いいところに目をつけるのね。」
「無論だ。だが、よくよく考えればシステムの構築を行うのはシルグランディアのハズ…… であればそんなミスを犯すハズもないか……後でそう思ったのでな」
 それに対し、メリルが堂々と言い切った。
「それはそうよ! だって、精霊シルグランディアお姉様の手にかかればそんな下手な失敗するわけないもの!  ねえ! お姉様!」
 そう言われてクライアスは気が付いた。
「ん? まさか――お前……いや、あなたが精霊シルグランディア?」
 エメローナは答えた。
「え? ええ、そうだけど……」
 そんな彼女に対してクライアスは驚き、二度見三度見していた。
「な、何よ……」
 クライアスは首を振っていた。
「いや、その……なんていうか、あの精霊シルグランディアにしては予想外の恰好をしていたものでな――」
 確かに言われてみればその通りか、当の本人もまたそれは自覚していた。 だって――普段はミニスカートなんか絶対に履かないし、 そもそもこんな可愛らしい格好すること自体――
「そうなんです! お姉様ってばこんなに可愛い格好しちゃって!  しかもとーっても似合っているんです! なんで今までこんな恰好しなかったのかなーって!」
 メリルにそう言われてエメローナは冷や汗をかいていた。
「え、いや、別に……ただの気分転換よ……」
「せっかくだからもっと可愛い格好してみてくださいよ♪ お姉様♪  せっかくだからお姉様のいろんな恰好が見てみたいなぁ♪」
 え……エメローナは少々照れていた。
「なるほど、シルグランディアはそのような恰好も似合うということか、 これは面白いことを聞いたぞ……」
 クライアスはそう言ってニヤっとしていた……
「ちょっと! アンタなんなのよ! んなこと知ってどーすんのよ!」
 エメローナは焦っていた。
「ですねぇ……綺麗な脚だなぁ――」
 と、サルタリスまで……
「何よ! あんたまで……」
 なんと、彼はだらしない顔をしたままエメローナの脚をじっと眺めていた――
「……え……?」
 自分の脚を欲しそうに見ているそいつの様子を少し離れたところからエメローナは警戒しながら眺めていた――
「ずーっと眺めていたいなぁ……デヘヘ――」
 これが人間界の生き物の行為ならぶっ飛ばしているがここは精霊界、 メリルのみならず、こいつまで……!? まさか、精霊界の変化!?
「ほう……ククッ……せっかくの機会だ、私もこの絶景を拝観させてもらうとするか――」
 クライアスはそう言った、マジかよ……エメローナは頭を抱えつつますます悩んでいた。
「私ゃそんな女じゃないんだが……無性に腹が立つけどこれも精霊界のためと思って――」
 研究熱心なエメローナの気持ちはかなり複雑だった、それでも許容しているあたりは変わった人である。