ドラゴン・スレイヤー ~グローナシアの物語~

第4章 世界の綻び

第110節 レガシーVSリベラル

 邪竜じゃなかったのか、それがまさか”ウロボロス”なんて……カイルは悩んでいた。
「今は記憶の精霊の力を利用してなんとかそいつを封じ込めているところだが、その状態でだいたい10年ほど保っている。 だが、それが破られるのも時間の問題で、もはやいつ飛び出してもおかしくはない…… 飛び出すとなれば、このエターニスでの激闘となる――」
 フレアは憂い気に言った。
「10年とはなんとも長らく封じているような気がするが、そんなもんなのか?」
 バルファースは素朴な疑問をぶつけた。
「というか、そもそもウロボロスは俺の親父が倒したんじゃあ!?」
 カイルも疑問をぶつけた。それにはバルファースが言った。
「さっき、”復活する”っつったろ?  そのあたりから察するに――”ウロボロス”ってのはその時々によって力の大小があるような感じか?」
 そういうことか、カイルは納得した。 言われてみれば、ヴァナスティアではセント・ローアの時代よりウロボロスがいるんだっけ、 え、ということは、そいつが何度も復活を繰り返しているのか――
 対して、バルファースの問いにフレアは頷いた。
「まさにその通りだ。 今回のは歴代の”ウロボロス”の中でも弱い部類に該当する、 だが腐っても”ウロボロス”、手加減することはできぬ……」
 歴代ってことは、案外同一個体ではない可能性もあるということか、カイルは考えた。
「そいつは聞くまでもない、たとえ弱いとはいってもそこは伝説に名を連ねる”ウロボロス”だ、 やるんなら全力でやらせてもらおう」
 話は続いている、 しかしバルファースが妙にやる気なのがどうしてなんだろうか、カイルは不思議に思っていた。 だが、バルファースがそれを話すことはない、だって――あのタティウスが挑んだのがまさに”ウロボロス”だ、 人生の転機となった彼に続くつもりなのである。 もっとも、それはあくまで自分でも相手にできるような相手であればの話、 そうでなければここから回れ右をしているハズである。
「そうだ、道楽のためだ。こんな経験、滅多にできるもんじゃねえしな」
 カイルにそう説明した、いや、道楽のためにしては少々度が過ぎているんじゃあ……言い訳にしては少々苦しい。

 ほかの面々はいろいろだった。
「カイルがやるっていうのなら私もやるよ!」
 メロリアはやる気満々だった。
「ありがとう、メロリア!」
「ううん、気にしないで! もともとこういうのは第4級精霊の役目のはずなんだし!」
 エターニスで激闘するということはつまりはそういうことになるわけか。
「レオーネは平気なの?」
 ディウラとパティは彼女にそう訊いていた。
「ヴァナスティアの教えでは”ウロボロス”を倒したのは当時の英雄たち……つまり、戦士たちだった。 だから私が彼らに続くということはごく自然のことだ。 平気かと言われたら流石に肯定はできないが、少なくともこの戦いに挑めないということはないな」
 そういうもんなのか。するとそこへ――
「この状況下に人間共がこんなところで集まって何やら企んでいると聞いた、何のつもりだ?」
 そこに何やら偉そうな精霊が現れた。それに対し――
「いつもたかが人間と語っているお前が、こんな時ばかりわざわざ出向いてくるとは一体どういう風の吹き回しだ?」
 フレアがそう言い返した。
「なっ……!? 貴様はフレア=フローナル! なぜこんなところに!  貴様はアーティファクトを集めているのではなかったのか! どうしてここにいる!」
「時は流れているのだ、そのうち終わりも見えよう――」
「何っ!? つまりは集めたということか……!?」
「よくわかったな、その通りだ」
「それぐらいのことはわかる! その余裕そうな態度で戻ってきているところ! そうだといっているようなものだろう!  それより、シルグランディアはどうしたのだ! 貴様と一緒にいると聞いた! どこだ!」
「すれ違わなかったのか? 一度精霊界に戻っているはずだぞ」
 そう言われてそいつは考えていた。そこへフレアは――
「それで? 第2級精霊とあろう者が珍しく精霊界からこちらに出てきている理由でも聞こうか?」
 だが、その精霊は何も言わずにどこかへと消え去ってしまった、なんなんだあいつは。
「気に入らねえな、なんだったんだ?」
 バルファースは訊くとフレアは答えた。
「第2級精霊、因果の精霊カルス=カルナシスだ。 運命を司る精霊に属する存在では”因果”を司る精霊だがそれゆえに保守的な考えの持ち主…… しかし、あまりに凝り固まった性格ゆえに時の流れについていけていないところがある――」
「でも、なんかすごい偉そうだよな……」
 カイルは悩みながら言った。
「世界が突然突拍子もなく大きく変化しないために保守的な存在は精霊界では非常に重宝される。 もし、そのような変化があれば世界のパワーバランスが途端に崩れ去り、世界を管理するどころではなくなる。 ゆえに世界を安定させるためには保守的な存在自体が必要不可欠……そうなると必然的に連中の存在価値のほうが高まってくる、 だからいつも踏ん反り返っているというわけだ」
 えぇ……ヤなやつ……その場の人間たちは頭を抱えていた。
「だが、世界は常に変化しているように見えるのだが?  それでも精霊界は保守的な存在ばかりでなんとかやっていけるのだろうか?」
 レオーネはそう訊くとフレアは頷いた。
「その疑問はもっともだ、連中の考え方は世界創世時のまま変わっていない。 つまり、世界創世時ではあの考え方は要となるが、時代が進むにつれてやつらは次第についていけなくなる―― そう、いずれ限界を迎えることになろう――」
 問題はそれにいつ連中が気が付くかということか。