そうこうしているうちにカイルたち一行はエターニスのある”彩りの大地”までやってきた。
”彩りの大地”と言えば色とりどりの花々が咲き乱れる土地として有名ではあったのだが、しかし――
「あれ!? 何これ!? どういうこと!?」
ディウラは前に出てその光景に愕然としていた、
確かに花々は咲き乱れてはいるが、それらはすべてなんだか黒ずんだ色になっている……。
「ディウラが想像している光景はだいたい500年前までの光景ね。
でも、世界のパワーバランスが崩れている昨今ではかろうじて花々が咲き乱れている光景を成すのが限界で、
色とりどりの光景を拝むためにはその課題を乗り越えないことにはいけないってことになるわね。」
と、エメローナ……なんてことだ、もうすでに世界の脅威はこんなところにまで出ているということか。
「このままの状態が続くと、少なくとも10,000年以内に世界全土でこんな光景になるのは時間の問題ってところね――」
エメローナは憂い気にそう言った。
「”彩りの大地”のここだけが黒ずんでいるのは? ほかの地方ではこんなのほとんど見ないが?」
バルファースは訊くとフレアが答えた。
「ほかの地方がこうなる前にエターニスがこうなるようになっているのだ。
そもそも、ほかの地方に出るはずの影響をエターニスが肩代わりしているということだ。
当然、これもシルグランディアの御業がもたらしたものだと思ってもらえればいい」
そう考えるとますますシルグランディアの御業は偉大なんだなと思わざるを得ない。
人間たちに影響が出る前に世界の管理側が肩代わりするシステムにしたということか。
ということで……彼らはエターニスへと到着した。
「宇宙人が多いからね、ちょっと待ってなさいよ。」
エメローナはそういいつつエターニスの中へと入って行った。
なんていうか、エターニスといえば大自然の草木に囲まれたメルヘンチックな土地という印象だったのだが、
むしろ人間の町というか、それこそパティの実家のあるアルコストレイディオのような町のような印象のある一つの町だった、
そう考えるとなんだかこれまでの印象とは全く違う場所である。
ただ、それもそのはずである。
「見ての通り、周りが黒ずんでいるところにある町だからな。
だから精霊界の入口のある森の中なんかはもはや暗闇の世界……
そんなところで住むことを考えると、いくら精霊といえど身が持たないのだ。
それでエメローナはプリズム族にお願いをし、材木をそこから借りてきて新たな町を作ったという経緯がある、
これなら少なくとも生活が成り立つ……といったところだな」
そうか、きちんと町がないと真っ黒の土地にしかならなかったということか、それはまた――。
「真っ黒になるのも問題が多そうだな」
バルファースが言うとフレアは頷いた。
「だから実際に真っ黒になった500年前にシステムを少し変更したんだそうだ、
そして500年をかけて少なくとも土の色だけはなんとかある程度元の色に戻すに至ったという話は聞いたことがある」
戻るのに時間がかかる――
「だから実はグローナシアの土地の色は実際には大昔に比べると少し暗い色をしているのだ」
な、なるほど……
「土は黒い色のほうがいいんだけどね!」
パティはそう言った、確かにその通りだが、
「土地の色が死ぬときは基本的に灰に収束するのだ」
と、フレアは語る……言い換えると、花々も黒いうちはまだマシということらしい。
つまり、暗くなるというよりは色が褪せていくというのが正式である。
その途中経過が黒の色ということで、光を失った結果の色であるということらしい。
光を失っているということは少々深刻な状態か。
ところで……問題の邪竜というのはどこにいるのだろうか。
「まだ、説明していなかったな。現れたのは実は精霊界だ。
とはいえ、その事態についてはすでに一旦は抑えてある」
一旦ということは、まだ問題は終わっていないということか。
「精霊界で起きた問題は精霊界で解決するんじゃないのか?」
バルファースは言うとフレアは頷いた。
「まさにその通り……だが、此度に起きたことについては先ほど話していた500年前に少し変更したシステムにも関係することだ」
えっ、まさか……
「そう、本来なら人間界のどこかに現れるはずの所謂”凶獣”と呼ばれる存在が、
あろうことか精霊界に出てしまったのだ。
本来ならエターニス周辺であることが、この”凶獣”に至っては何故か”ゲート”の境界を超えて精霊界へとやってきてしまったのだ」
それは本当に人間界に出るはずの存在が精霊界へやってきたでいいのだろうか、そんな疑問をぶつけるとフレアは頷いた。
「それは間違いない、何故なら”ウロボロス”はそもそも人間界で生み出された存在……
ゆえに復活するとしても現れるべきは人間界であるのが普通だからだ」
なんだって……!? ”ウロボロス”ってまさか――