クライアスはとある精霊のもとへとやってきた。
「なんです?」
クライアスは頷いた。
「カルスに言われてここにやってきたのだ。
”天命”を預かる身なれば世界の記憶を見ておくのが道理――という話だ。
知っていると思うが我は新たに精霊界に上進した身ゆえに世界の記憶についての知識をあまり備えておらん。
だからこうしてやってきたのだ」
なるほど、そういうことか――相手は記憶の精霊サルタリス、事情を把握したのだが――
「うーん、目的についてはわかりましたが、残念ながら今のところはそれをかなえるのが難しい状況ですね――」
どうしてだろうか、クライアスは訊いた。
「世界の記憶の構造化システムというのを構築してもらったのですが、
実は私、未だにこのシステムに慣れておりません。
そのため、ここからどうすればあなたの要件を満たせるのやら――」
クラシアスは踏み込んで聞いた。
「記憶の精霊たるもの、そのようなことでよいのであろうか?」
そう言われてサルタリスは悩んでいた。
「確かにその意見はごもっとも……ですが、残念ながらこれこそが実態なのですよ――」
そこでクライアスは考えつつ訊いた。
「構造化システム? 従来はそのようではなかったということか?」
サルタリスは頷いた。
「ええ、それはもう。
もっとも、世界を管理するという点で言えばこの構造化システムのほうがいいのは私としてもわかっているつもりなんです、
確かに記憶の連鎖という点で考えるとつながりがわかりやすいことですし……。
なんですが、従来のシステムで慣れてしまった自分としては……」
受け入れがたいということか、クライアスは考えた。
「わ、わかりました、そういうことでしたら従来の方法でもいいや!
御覧になりたい記憶があります?」
そういわれてクライアスは考えると――
「否、それには及ばん、カルスに言われたことについては後でじっくりと考えることにしよう」
なんだ……サルタリスは少しがっかりしていた。
「それにしても……その今のシステムというのはそこまでよくできたものなのか?」
クライアスは訊いた。
「それはもちろんです! 流石はシルグランディアですよね! 彼女の手掛ける仕事は最高です!
もう精霊界の隅から隅までちゃんとしたシステムを構築なさったのですよ!」
シルグランディア……クライアスはそのワードに何やら引っ掛かっていた。
「ん? もしや精霊シルグランディアというのがいるのか?」
「あれ? ご存じない? あの人の仕事はまさに最高と言わしめるすごいものなんですよ!
ただ、考え方が私らにないというか……むしろ下界に住まう人間たちに近いものがあるというか……
だからちょっと慣れないところがあるんですが――」
サルタリスは悩んでいるがクライアスは遮って話をした。
「ふむ……なるほど、そうか……シルグランディアがいるのだな、それならば都合がよい……
折り入って相談があるのだが、聞いてはくれまいか?」
サルタリスはとある精霊のもとにやってきた。
「何? どうしたっていうの?」
彼女は第3級精霊のメリルだ。特に預かった役割はない汎用精霊というものである。
「メリルってフレアさんやエメローナさんと仲が良かったよね?
2人に何か言われてないかなーって……」
何かって何? メリルは訊き返した。
「えっと、例えばシステムのこととか……」
「そんな話するわけないでしょ? システムのことはエメローナお姉様の頭の中で完結しているに決まってんでしょ!」
そうなのか!? って、そりゃそうだろ、このあたりの認識は彼ら故というものである。
しかし、メリルはフレアとエメローナにある程度感化されているためか、ある程度は人間界よりの価値観が備わっていた。
「だいたい、一体何がどうしたっていうの!?」
そう訊き返されてサルタリスは悩んでいた。
「実は……カルスがフローナルやシルグランディアの横暴についてお歴々が不信感を抱いているって聞いてさ、
それでシステムをちょっといじって何とかできないかって――」
メリルははっきりと言い返した。
「そんなことしたらダメに決まってんでしょ!
だいたいフレアお姉様とエメローナお姉様の横暴ってなにさ! お姉様たちは圧倒的に正しいに決まってるでしょ!
それにエメローナお姉様がいたからこそこの精霊界の管理も……
私みたいな汎用精霊でもいろんな仕事がスムーズに行うことができるようになったわけでしょ!
それなのに、お歴々は何が不満なのよ! どう考えてもおかしいでしょ!」
そういわれてサルタリスは狼狽えていた。
「だ、だってクライアスが――」
2人はそのまま記憶の精霊の作業場に向かった。
そこにはあのクライアスがいた。
「あんたがそのクライアス!? どういうつもり!?」
メリルは追及していた。
「なんだ? どういうつもりとは?」
メリルは話をするが、クライアスは――
「いや、私はただ、そういう話を訊いたというだけのことにすぎん。
だからただ真相を確かめたかっただけだ。
システムの改変などとんでもない、シルグランディアが作ったとあらば間違いのない代物なのだろう?
それでいいのではないのか?」
ただの興味本位というやつか、メリルはそう思いつつ、あらためて2人の精霊の偉大さをくどくどと説明し始めた――
「否、もうよい、その噂は我の耳にも届いておる、つまるところ、お歴々の僻みにすぎんということだな」
「そうよ! なによ、理解が早いじゃないの!」
「当然だ、あの2人は間違いなく優秀な精霊だ、それは我もよく心得ておる、案ずるな」
そういいつつ、クライアスはその場を去っていった――
「そうとも、フローナルもシルグランディアも非常によくできた存在なのは我もよく知っておるのだ……」
こいつ、一体……