精霊界――
「どういうつもりか?」
何やら難しい話をしている様子。
「世界の力のバランスが乱れている、だからそれを人間界にてしっかりと調査しようという話に決まったのだ、お前がおらぬ間にな――」
例の精霊カルスが別の精霊と話をしているようだ。
「それはフレア=フローナルに唆されてのことか!?」
「人聞きの悪いことを言うな、確かにフレア=フローナルの先代であるエフィリア=フローナルが言っていたことだ、
世界の力のバランスが乱れているからその真相を直接確かめようと――
そう、主に貴様が目の敵にしているあのエフィリアだ、覚えておるだろ?
しかし、残念ながらお前さんの意に反し、お前さんがいない間にエフィリアの言う通りに見定めるのが妥当……
という結論が精霊界全体で一致するに至ったのだ、だからこれに関しては例えお前でも文句を言えるまい?」
カルスは悩んでいた。
「精霊界全体とあらばやむを得ぬな。それで、フレア=フローナルはどこだ?
ヤツは確か第4級精霊として生を受けているハズだがどこにも見当たらぬ――」
相手の精霊は答えた。
「エフィリアは当時の精霊界の決定が気に入らんから第4級精霊フレア=フローナルとなって自ら行動に出ることとしたのだ。
そして今は世界の力のバランスが乱れているということと、
世界の力のバランスを乱しやすい人間界の代物としてアーティファクトというのがある……
それこそ第4級精霊たちの間では世界の力のバランスを乱すであろう代物として主にアーティファクトの存在が言われておるというのでの、
シルグランディア主導でまずはアーティファクトの真贋を見極めようと探させておるのだ、
そう、探しておるのはそのフレア=フローナルだ」
フレア=フローナルには言いたいことが山のようにあったカルスだが、ここはやむなくこらえることにした。
「ふん、そういうことか……まあいいだろう、エフィリアがあそこまで言うのだからな、有言実行であることを示してもらおうではないか」
カルスはそう言いながら去ると、残された精霊は頭を抱えていた。
「ったく、犬猿の仲とはよく言ったもんだが、もう少し仲良くできんもんか――」
あの2人の精霊は特別仲が悪いことでも有名だった。
もっとも、かたやカルスは保守的思考でかたやフレアは革新的思考ゆえにこうなるのは無理もないのだが。
だが――
「え? シルグランディアですか!? ここにはおりませんよ!?」
そうと決まったら今度はシルグランディアを探し始めているカルス。
当然だが、いるわけがない。
「やつは第3級精霊だぞ!? よもやエターニスを離れたわけではあるまいな!?
それこそ世界の力のバランスが乱れることを増長させるような行為! それをやつ自らやっているとなれば――」
「お、お言葉ですが精霊シルグランディアは世界のシステムを解読するほどの存在!
ゆえに、自らの体をも世界の力のバランスが乱れないような構造にしていることも造作もないことです!
かくいう先代のベロミア=シルグランディアは次代のシルグランディアは容易に”えくすちぇんじ可能な個体”……
などといって”ゲート”を行き来できることを確認してからマナに還ったそうです!」
そういわれてカルスは頭を抱えていた。
「くっ、何を語っているかわけわからぬが……つまりは対策済ということか、致し方あるまいな――」
カルスは悩んでいると、そこへ別の精霊が現れた。
「悩んでいるようだな」
カルスは身構えた。
「誰だ貴様は!?」
相手の精霊は頷いた。
「貴様と同じ、今後の精霊界の行く末を憂いでいる者だ。
無論、人間界の心配も同様と思ってもらってもいいだろう」
だが、そんなやつが一体自分に何の用だろうか訊いたカルス。
「フレア=フローナルの行動は支持しよう、気に入らんがそれが精霊界として最善とあらばやむをえまい。
が――我としてはむしろ、カルスの考えのほうを支持したいところだな」
どういうことか? カルスは訊いた。
「人間界など、乱れに乱れることは自然の摂理に過ぎぬ……本音を言うと、
我の考えもそちらを支持したいところなのだ」
それならどうしてフレアを支持するのか訊いた。
「簡単に言えば、やりたいやつにはやらせておけ……というだけのことだ。
面倒が目の前にあるんなら勝手にやればよい……無論、その際に起きた面倒事も一緒になんとかすべきという条件付きでな。
だからあの女は1人で飛び出した、その分面倒も減る……よいことではないか?」
「だが、結局は精霊界全体で……」
「フレア=フローナルがやればよい、そしてかの者に手を貸した暁にはそいつらも同じ咎を追えばよい……違うか?」
カルスはその精霊のほうに向き直った。
「貴様、話の分かるやつだ。改めて問おう、何者だ?」
そいつは頷いて答えた。
「我はクライアス……第3級精霊にして”天命”を預からせてもらった精霊だ――」
カルスは考えた。
「ほう……」