なんだかんだで好評なエメローナおねーさんのミニスカート姿、
いつまでもじっとしているわけではないのでとりあえず話を進めよう。
「シュリウスでは女ハンターはいなかったんじゃないのか?」
フレアはカイルの母親の話を聞いていた、どういう経緯かはわからないが多分バルファースから聞いたのだろう。
「お袋は元々ドミナントのハンターなんだよ。
親父と出会ったのはシュリウスに移ってからだったそうだ。
もっとも、お袋はドミナントでも凄腕のハンターでシュリウスに移ってからも通用するほどの腕だったそうだからな。
俺を産んでからまた仕事に復帰したんだけど――」
だけど……? フレアは訊いた。
「そういや、お袋が亡くなった話ってまだしてなかったっけ。
あれは忘れもしない3歳のころの話だな、俺の部屋でもあった家の2階から外を眺めていたある日のこと、
行商人に向かって魔物が襲ってきていたんだ――」
家の2階といえば――
「今は使っていない2階がお前の部屋だったのか」
フレアはそう訊くとカイルは頷いた。
「実は俺が2階を使わなくなった理由はこの話にあるんだ」
フレアはそのことに少し驚いていた。話は続いた。
「魔物に襲われている行商人、その日は非番だったお袋がそいつらを助けるために武器を手に持って慌てて外に出たんだ。
その魔物を相手にお袋は苦戦していた……指名手配モンスターでな、
とにかく凶暴なやつで神出鬼没、どこに出るかもわからないようなとても危険なやつだった。
いつものアーマーだったらわからないがその時はそんな仕事着とは打って変わってお母さんの服装だった。
でも、お袋は何とか魔物を退け、行商人を助けたんだ。
だけどお袋は――魔物との戦いで受けた傷がひどく、その場で意識を失ってしまった――」
そう、カイルはあの部屋から母親が血まみれで倒れた姿を見たのだった。
それが今でも彼のトラウマとして残っており、それ以来2階で寝ると泣きだすようになっていたのだ。
今では2階に上がることもあっても、それでもやはり2階で過ごすことは今でも抵抗があるらしい。
「そんなことがあったのか。それでどうしたんだ?」
フレアは続きを聞いた。
「ああ、その後、行商人がハンターズ・ギルドに掛け合うと、仕事中の親父が慌てて家に戻ってきたよ。
ただ、いろいろと巡り合わせが悪かったのかな、お袋はその傷のせいで3日後に亡くなったよ――」
そんな……
「でも、両親は共に戦いに身を投じているからと、いつかはこうなることを覚悟していたらしい。
幼かった頃の俺には理解することはできなかったけど、でも親父はお袋の分まで俺を育てるために必死になっていた。
でも、それは単に俺を育てるためだけじゃない、俺が今よりももっと平和な世の中で暮らしてほしいからって言っていたな。
無論、1人2人の力じゃたかが知れているかもしんないけど――でも、誰かが動かなければいけないんだ。
親父もお袋もそのためにがんばってきたんだな……そう考えるようになったのは15の時に親父が亡くなってからのことだったな」
カイル15歳は今から12年前のこと、つまり――
「グローナシア980年ということは……ウロボロス? いや、タティウスは生きて帰ったと聞いているが……
赤き破光<クリムゾン・パルス>を受けてもなお治療は間に合っているハズだったようだが――」
フレアはそう言うとカイルは首を振った。
「みたいだけどな。
だが――親父は結局、アルガンスラからの便で遭遇した魔物の群れに立ち向かうと、
ウロボロスとの戦いの疲れが残っていたんだろうな、魔物にスキを突かれて結局帰らぬ人となってしまったんだ。
本来なら格下の相手だからスキを突かれた程度で後れを取るハズはないんだろうけど、
それでも遺体として戻ってきた親父はひどい傷だらけだった――
あれは格下の魔物じゃなくてウロボロスと戦った時の痕だろうな、
俺はそう思った――もうほとんど傷が塞がっていなかったじゃないかって――」
なんてことだ、カイルの父タティウスは相当の無茶をしでかしたというのか。
「いち早く俺のもとに帰るためだったらしい……バカヤロウ……
せめて、せめて帰ってくるんだったら生きて帰って来いよ――」
カイルは悔しそうに言った。そして我に返り首を振るとさらに話をつづけた。
「でも、俺はそんな親父にいろんなことを教えられたんだ、お袋にもな。
今の俺がいるのも両親のおかげだ、今こうしてここにいるのも……こうして親父の後を追ってエターニスに向かっている。
けど……俺は親父と同じように死ぬつもりはない、だって……親父にはお前はまだ来るなって言われたら死ぬわけにはいかねえだろ?」
カイルは決意を新たにしていた、確かにその通りか。
「2人はお前のために生きてきたということだな」
フレアはそう言うとカイルは頷いた。
「そう思うしかないな。
だが、そうなると、そう簡単には死ねないってわけだな」
その話を遠めに何人かが訊いていた。
「私の親は……どうだったんだろうな、きっと私の幸せを望んでいたハズ……そう思うと悔しくてならないな。
だが――今の私はとても充実している、だから……今ならあの2人に顔向けできそうだ」
レオーネはそう呟いていた。
そして、そんなカイルとレオーネの後姿をメロリアは悩みながら眺めていた。
「メロリンお姉ちゃんのお父さんとお母さんもきっとメロリンお姉ちゃんのために生きていたに違いないよ!」
彼女に対してザードは元気よくそう言った。
「ザードクンの両親もそうだったと思う?」
メロリアは訊いた。
「もちろん! だからボクはみんなに出会うことができたんだ!」
確かに、その通りだな。