ドラゴン・スレイヤー ~グローナシアの物語~

第4章 世界の綻び

第104節 反骨精神のおねーさん

「シルグランディア様の綺麗な”女神脚”様に乾杯♪」
「乾杯♪ ”女神脚”のおねー様♪」
 バルファースが調子よさそうに言うと男性陣のみならず、 女性陣までもが楽しそうに追随していた。
「ったく、がっかりさせようと思ったのにどうしてこんななるわけ?」
 エメローナは呆れているとフレアが得意げに答えた。
「がっかりすると思うか? そもそもイヤなら着替えてくればいいものを――」
「これは自棄よ! 第一、着替えたって結果は変わらんでしょ!?」
 それはそうだが。既に着ている姿をお披露目してしまった以上はもはやどうにもなるまい。それに何も自棄にならんだって。
「まあいいわ、だったらどこまで通用すんのかとことんやってやろうじゃないのよ!」
 それにしても何故火が付くんだ。

 翌朝――
「そうだった、レンドリアにいるんだっけ。この町で何かするって言ってたが、何をするんだ?」
 朝起きたカイルは軽く悩んでいた。
「ところでバルファースは?」
 カイルは部屋に彼がいないことに気が付いてそう訊くとグローサルが答えた。
「酒を買ってくるとか言ってましたよ? 相変わらずですねー♪」
 そんなグローサルは布団の中でぬくぬくとしていた。
「朝っぱらからか……まあ、レンドリアまで来たらそれなりに銘柄をそろえている店もあるからな――」
 カイルはそう言うとグローサルは訊いた。
「おや、グローナシアでもそうなんですか? フレアガルディスの時代もそうなんですよ。 恐らく、この先に稲作地帯が多いのも影響しているんですかね?」
 そういわれてカイルは考えていた。
「へえ、その時代からそういう土地柄なのか。 あんまり俺は詳しくないんだけど、どうも飯もうまいっていう話らしい」
 それに対してグローサルは興奮していた。
「そうなんですかっ!? よもやフレアガルディスの時代からグローナシア時代にまで食の文化としては頭一つ抜けているとは!」
 なんで興奮しながらベッドにもぐりこんでいるんだろう……カイルは悩んでいた。
「へ……? だって、とても暖かいですから――」
 そういやそろそろ寒冷地方に差し掛かるあたりか、カイルはそう思った。 そこに至るまでにはまだ早い気はするが、季節的には雪が降ってもおかしくはないような時期……
「早めの冬支度をしたほうがいいかもしんないな」
 カイルは考えつつ言うとグローサルは悩んでいた。
「寒いのはニガテです……フレアガルディスの時代は温暖な時期が長いこともありまして、 私も雪を見るのは本当に寒冷地方でも今で言うところのアルタリア付近あたりでしか見たことがないんですよ――」
 そうなのか? カイルは訊くとグローサルは考えながら言った。
「なるほど……マナのパワーバランスの乱れはその当時から起きているということですね――」
 時折、気候にも影響を与えているということか。

 宿屋を出ると、そこにはフレアと共に可愛らしいピンクのフリッフリなフレアーのミニスカートを履いていて、 長くて綺麗な脚を披露している強いお姉さんが得意げな態度で立っていた、何故ピンク……可愛いな。
「遅い! ちんたらしてんじゃないわよ!」
 これさえなければ……いや、これがあるからこそバランスが取れているキャラなのかもしれない。
「今日はあんたの得物を打ちなおしてやろうって言ってんのに肝心のあんたが遅刻してどーすんのよ!」
 そんな話初めて聞いた。てか、なんか妙に機嫌が悪いような。
「そんなに可愛いミニスカート姿をするのが嫌ならやめればいいのに――」
 カイルは呆れているとフレアが言った。
「シルグランディアがミニスカートを嫌がるわけないだろう、だから履いているのだ」
「そんなわけないでしょ! そろいもそろってふざけたこと言ってるから後悔させてやろうと思ってんの!」
 どういうことだよ、カイルは内心では笑い転げていた、だって――
「あのさ、むしろ滅茶苦茶可愛いぐらい似合っているんだけどさ、どうしたらそんな発想ができるんだ?」
 カイルはそう言った、まさしく理想の美女ってビジュアルしているんだもん。 しかも可愛らしい女子っていうよりも元気なおねーさんっていう印象で……こんなんでモテないわけないだろ。 だが、そんなエメローナは呆れていた。
「ったく! 冗談は顔だけにしとけよ、似合ってるわけないでしょ!?」
 そんな彼女にカイルとフレアは呆れていた。
「エターニスの精霊ってこんななのか?」
「いや、これに関しては彼女固有の変人っぷりだと考えればいいだろう」
 納得!

 そして例の工房……エメローナが大暴れしたあの工房にやってきた3人。 エメローナは早速ドラゴン・スレイヤーに火を入れていた。
「手を付けないと聞いたんだが?」
 フレアは訊くとエメローナは答えた。
「下手に改造しないって意味。 ただのナマクラソードじゃ恰好が付かないし、なによりずいぶんと年季が入っているからね、 せっかくだからこいつはこいつで打ちなおしてやろうっていうことよ。」
 そういうことか。だが、それにしても――
「やはりシルグランディアとあらば、周囲も黙っちゃいないというわけだな」
 と、フレアは言った、周囲の職人たちは彼女のその様をじっと見ていた――
「ふふん、とーぜんよね、ここの連中は私がたたきなおしてやったもどーぜんだから、 そりゃあ私の業とくれば見ておかないわけにはいかない……って考えてもおかしくはないわよねぇ♪」
 エメローナはそう言うと得意げに作業を開始していた。
「だそうだが――どうしたもんだかな」
 カイルは呆れ気味にフレアにそう言うと彼女は頷いた。
「だろうな、どうやら私の意図は伝わっていないようだ。 私は別に周囲がシルグランディアの業を見に来たとは言っていないんだが、 とりあえず当人のためにそういうことにしておいたほうがいいか」
「そいつは大賛成だ!」
 そう、周囲の職人たちはシルグランディアの業を見に来たのではなく、 周囲の男たちは可愛らしいピンクのフリッフリなフレアーのミニスカートを履いている美人のおねーさんの長くて綺麗な脚に見惚れ鼻の下を伸ばすために集まっていたのだった。
 なお、カイルはこれをエンケラスでの仕返しと捉えている。
「俺もしばらく拝んどくかな♪」
「ああ、まさしく奇跡の”脚”だからな、心行くまで拝んでいくといいだろう。 ただし、死の危機が迫りそうになったら全力で逃げるのだぞ」
「了解♪」
 フレアも意地が悪そうにしていた。