ドラゴン・スレイヤー ~グローナシアの物語~

第4章 世界の綻び

第101節 オルダナーリア

 グローサルのティアエン熱発言に圧倒されていた2人、話を戻していた。
「お袋さんもあんな奇抜な格好をしていたのか?」
 バルファースはそう訊いた、そっちじゃない……完全に揶揄うつもりでそう訊いたつもりだったが――
「ああ、実はそうなんだ。 でも、あれとは違っていて、ビキニアーマーとでもいえばいいんだろうか、 一昔前の女闘士のそれって言えば伝わるかな?」
 まさかのそっちだったのか――バルファースは呆気に取られていた。
「ってことはお袋さんもハンターやってたってことだな。 両親ともにやってたから必然的にお前もなったってクチか」
「そ、そういうことになるな、2人の両親の背中を見て育ったってことになるな――」
 カイルは狼狽えつつも話を続けた、なんか違和感が――
「お袋は強かったけど優しくもあった、だからなのかな、 別にメロリアがあの格好だったとしてもお袋もそうだったから恰好にはとらわれることはないな――」
 必然のものか。するとカイルは違和感をぶつけた。
「それにしても、よく俺の親父がハンターやっていたってこと覚えてるよなー」
 いわれてみれば。 所詮は他人事、血縁者の職業なぞ……余程のことがなければそんなもんである。 特に、その話を聞いたのってずいぶん昔の話、普通に考えればよくもまあ他人のことを覚えてるもんだ。
 だが、バルファースにとっては忘れもしない幼き頃のタティウスの記憶がある、 そしてこいつはそのタティウスの息子――意識せずにはいられない。
「物覚えはいいほうでな、お宝を探すのを生業とする身としてはなんとも都合のいい能力だ」
 そういうもんか……カイルはそれで納得することにした。 確かに、言われてみればバルファースは何かと物覚えのいいやつだった、 それはやはりオルダナーリアのスパルタ教育の賜物じゃなかろうか、ヴァナスティアの教えを覚えるまで飯抜きって……。

 エンケラス滞在時、エメローナはオルダナーリアを連れてシェルベリアの家へと向かっていた。
「言い方ちょっと失礼になるけど、まだまだご健在だったのね。」
「はい! おかげさまで! むしろこちらこそ、シルグランディア様がまだまだご健在であることを嬉しく思います!  もっとも、あなたにとってはたかだかまだ2,000年程度、5,000年ほど生きる高級精霊様とあらば当然のことかもしれませんが――」
 長いな、高級精霊様。世界を管理する側ゆえということか。
「でも、私の寿命はもっと長いかもしれないわね。 何故かって言うと、私の体はプリズム・エンジェル族…… つまりメロリンちゃんよろしく”癒しの精霊”様の異名を持つ種族の体を基礎にしている高級精霊だからね。 先天的に癒しの力を備えている分だけ寿命が伸ばされているのよ。」
 プリズム族って麗しい素敵な美人のお姉さん族なんじゃあ?  確かに、見た目はその通りだが……性格――
「いちいちうるさいわねえ! このクソナレーション! 言ってないで早よ続けろや!」
 ……は! はい!
「なるほど、そういうことになるんですね!  ということは、もしかしたら彼女も? 確かプリズム族の身体が同化しているハズですから――」
「恐らくね。だからなのか、プリズム族はあまり表には出ない種族なのよね。 まさに世を乱す力、寿命という点においても”プリズム族の肉を食えば不老不死になれる”みたいな、 ありもしない触れ込みが世に広まってくれるのも困るからね。 だからプリズム族としてもただの”個性”ということにして通すことにしているのよ。」
 個性にしてはかなり強烈な内容なのは否めないが。 でも、外の世界に出ているプリズム族は確かに少数……一応個性として片づけてもいい……だろうか?  まあ、たまに年齢の割に若い人とかいるしな。
 しかし、確かにこちらの世界においても不老不死を求めるべく、 何かしらの肉を食えば……みたいな云われや創作物などもあったりするからなぁ。
「それにしても、このタイミングであなたに会えるだなんてとても懐かしく思います!」
「私もよ、オルダナーリア! みんなに会うのもなんだか楽しみね!」

 シェルベリアの家では6人で再会を喜び合っていた。
「オルダナーリアさんに会えるだなんて! 嬉しい! お元気でしたか!」
 メロリアは彼女に抱きついていた。
「ええ、おかげさまで!」
「オルダにはずいぶんと世話になったからねぇ、私も久しぶりに会えて嬉しいわねぇ……」
 エメルナは感無量だった。
「オルダナーリアさん! 私も会えて嬉しいよ!」
 ミリエラもまた彼女に抱きついていた。
「ふふっ、ミリエラもあれから少しは大きくなったようですね、エメローナさんの薬が効いてきたのかしらねえ?」
「オルダナーリア……よかった、その様子だと、向こうでの生活も何不自由なくって感じね――」
 レオーネは嬉しそうに言った。
「はい! まさにおっしゃる通り、いい感じに過ごしていました!」
 そこへエメローナ、頭を抱えつつ話をした。
「おーい、そろそろさあ、続きは玄関でやってないで部屋の中でやったりしないー?」
 あ、それもそうだった、周囲は我に返った。そこへ――
「久しいですな、オルダナーリア殿……」
 ティラキスが現れた。
「ティラキス! あなたのほうこそまだご健在でしたか!」
 ティラキスは頷いた。
「とりあえず、荷物をお持ちしましょう、さあこちらへ――」

「あ……ああ……なんてこと……」
「その子は……具体的にはわからないけど、仲間を失うわけには――」
「そう、私は観測者の娘、その子もまた観測者の息子…… 私らの間ではそれ以上のつながりは特にないけど、それでも仲間は仲間――」
 150年ほど前の戦争の被害者……オルダナーリアは当時のことを振り返っていた、 そう、あの時の観測者の娘とはオルダナーリアのことである。 思えばエメローナとメロリアとはあのころからの付き合いだった。
 あの時の知り合いといえば他には当時のシェルベリアに使えていたティラキスぐらいしか生存していないが、 それでも、この3人で再び――オルダナーリアは嬉しく思っていた。