出発の日、町の入り口にて、名残惜しいカイルだが――
すべてが終わったら彼女のもとに帰ってくるんだと決意を新たにしていたのだが――
「やっほー♪ カイルー♪」
「め、メロリンちゃん!?」
彼女が町から飛び出してきた。
「え、レオーネも!?」
ディウラは驚いていた。
「せっかくだからね、この2人にも同行してもらうことにしたわね。
特にメロリンちゃんだけど、カイルはどうしても彼女が一緒にいないとイヤだって言いかねないだろうしさぁ♪」
そ、そんなことは! と言いたかったが……残念! 図星だった!
「えへへ♪ みんな、よろしくね♪」
メロリアが加わった……。
「やれやれ、面白いのに好かれたもんだなお前。
で、問題は戦えんのかどうかってところだが――」
バルファースはそう訊いた、確かに身なりはどう考えてもどこぞの美少女戦士、
なんとも怪しいもんだが――
「これでもゴールド・ハンター7段でーす♪ ちなみに得物はコレでーす♪」
と、なんと彼女は背中から大きな剣を取り出して構えた! まさかの大剣使い! そして――
「はっ! やぁっ! てやぁっ!」
なんと、その剣を軽々と振りかざして見せた! それには周りも驚いていた。
「華奢な見た目に反してそんなもんが扱えるんだな――」
バルファースは唖然としていると、後からやってきたエメローナは得意げに言った。
「そりゃそうよ、仕込んだのは私だからね。
それを使いたいって言ったのは彼女の意思なんだけどさ。」
さらに、レオーネは――
「昔はお嬢様やっていたが、それでも一応騎士の家系だった都合、剣の心得は人並以上だ。
それに精霊の血が混じっているから魔法も一応使える、魔法剣士だと思ってもらってもいいだろう」
ちなみに彼女はハーフである。
「ふふっ♪ 私たち、ティアエンのメンバーでは戦える女2人組としてそこそこ有名なんだ♪」
メロリアは嬉しそうに言った、それなら安心か。
そこへエメルナとミリエラがやってきた。
「留守はちゃんと預かっておくから安心しろ」
「メロ姉さんもレオーネお姉様も頑張ってね! エメローナお姉様もみなさんも是非また町にいらしてくださいね!」
2人に見送られながらカイルたちはエンケラスを旅立った。
なんていうか、いろんな意味で大変な町だった……。
とはいえ、カイルとしては素敵な彼女を手に入れたという大きな収穫があったのだ!
いやぁー! いい町だったなぁー! カイルの気分は上々、例によって彼女のスカートが揺れ動くたびに心が躍っていた。
「お姉ちゃんカワイイー!」
「ありがとー♪ ザードクンもカワイイねぇ♪」
なんと! ザードが特等席に! 俺の彼女のところに収まっているとはなんて贅沢な奴なんだ!
カイルは唖然としていた、子供相手に何言ってんだお前。
「ホント、ザードクンって可愛いんだよねぇ♪」
パティも可愛がっていた、羨ましくなんか……
「シルヴァンス・ウルフ、霊獣の子……否、そんなことより可愛いな……」
レオーネもまた可愛がって――
「ねぇ♪ やっぱり、ザード君は可愛いわよねぇ♪」
エメローナもまた――
「ザード……耳の痛みはそろそろ大丈夫か?」
フレアは彼の耳を――
「やっぱり、ザードクンが一番可愛いなぁ♪」
ディウラもまた彼をめでていた。
「総評、一番モテるのはザードということだな」
バルファースは悩んでいた。カイルとグローサルは唖然としながらその光景を見ていた。
「メロリンちゃん……」
「私も……できることなら役目を終えるまでに彼女を作りたい……」
その日の夜、宿場町にて。
「ようバルファース、ここにいたのか――」
酒場にて、カイルはバルファースと出くわした。
「なんだ、イチャついていたんじゃないのか」
バルファースは意地が悪そうに言うが、カイルは照れながら答えた。
「いやあ……えっと……そもそもそんなところに入る余地ないんだよなぁ……」
そう言われてバルファースは考えた。
「女性同士、妙に仲良しだからな。
しかもその輪をまとめているのはあの女だ――」
エメローナさん……あの人なんかすごい……カイルはそう思った。
特にあの人柄は確かに高位の精霊様云々とか関係なくすごいな、カイルは改めてそう思った。
確かにフレアが最初に言ったように、エターニスの精霊なんて変わったやつばかりである中、
彼女はより現実的な性格をしているということだがまさにその通りだった。
これまでのイメージでは浮世離れしているような頭御花畑な精霊ばかりというところ、
しかもそれ自身もフレアも否定していなかったところ、
とにかく普通に人間界の社会の存在として通用するどころかアロザルトという家を翻弄していった切れ者じゃないか。
しかもそれでいて女性陣に人気のある頼れるお姉さん、しかも男は突き放し気味の野郎忌み……
ははっ、エターニスの精霊を侮っていたな、カイルは少し反省していた。
「エメローナさんのことはどう思う?」
カイルは訊いた。
「ん? ああ、悪かねえな……」
バルファースにしてはなんか意外な回答だった。
「女性として?」
「ん? まあ……断然ナシとは言いきれねえな」
マジで!? カイルは驚いていた。
「愛があるかどうかはほぼ関係ねえな、そんなものは後からついてくるもので、
結果ついてこなくたってほぼ関係ねえ、そもそもあれはそんなのを求めるタマじゃねえからな。
どちらかといえばむしろ俺と同じタイプだな」
え、そうなのか!? どんなタイプ!? カイルはさらに訊いた。
「あの女が求めてるのはロマンってやつだ。
そのために自分が縛られるのは良しとしないタイプだ、そいつは間違いない。
精霊界から出ていろんなことをしているのもそのためだろう?
自分の血が精霊界っていう柵から解放されて自由を謳歌したいってな、
まさに有言実行――それで2,000年も生きているんだから、俺が信仰するべき精霊としてはあの女で間違いないな」
そんなまさか――