ドラゴン・スレイヤー ~グローナシアの物語~

第4章 世界の綻び

第98節 レオーネの自戒

 ディウラとレオーネは意気投合し、夜遅くまで話し合っていた仲だった。 何故かというと……なんと、レオーナもまた名家のお嬢様というお立場の方だったからである、それで意気投合したのだった。 それゆえにとにかくお上品で素敵なお嬢様……男たちがこぞって欲しがるのも無理はない存在だった。
 そんなある日のこと、彼女に縁談を申し込む者がいた、リンブラールの有力貴族である。 両親はいい話だということでそいつの元へと嫁ぐことを彼女に勧めた。 だが――よくよく考えると、同じ貴族でも自分は下位貴族、相手は上位貴族とまるで違う存在―― そう、所謂政略結婚に該当するものであり、これは両親から彼女に勧めたというより”行け”と言われているようなものだった。
 もはや抗いようのない状況ゆえに彼女は彼のもとへと嫁ぐこととなった。 だが――既に語った通りだが、その相手は重度の女好きで浮気性、自分を欲したのもその都合であり、もはやお飾りにも等しい存在だった。
 そんな男に愛想が尽きているレオーネだが、それでも周囲は彼女に対してとてもよくしてくれる、 だから結婚生活という感じではないものの、それでも我慢して耐えてきた彼女だった。
 しかし……周囲はよくしてくれるのだがその待遇はあまりにも不自然だった、もう少し早く気が付けばよかった。 ある日、彼女は里帰りをしようと自分の生家へと戻ろうとしていた。 もともとそれ自身もまた周囲はそれを思いとどめようと振舞っていた、なんのために?
 だが、結婚してから3年目、周囲の目を盗んで彼女は自分の生家へと戻ると――そこには屋敷などどこにもなかった。 これはどういうことだ!? 彼女は途方に暮れていた。
 だが――それについてはとんでもない事実が隠されていたことが分かった。 そもそも自分の政略結婚の時からすべて相手の男が計略していたものだった。
 元々レオーネの家は下位貴族とはいっても地元では有力な地主、 つまり――やつはその土地欲しさにあの手この手で自分の家を貶めていたのだった。 だが、レオーネだけは欲しかった、彼女はまさに貴族会の花そのもの…… それを手に入れて自分の価値を上げようという腹だったのだ。 そしてレオーネをまんまと手に入れたあいつは……レオーネの知らないうちに彼女の家を滅ぼし、 両親にまで手をかけると、あの土地を手に入れたのだった。
 そして……それを男に突き付けた彼女は逆に男から返り討ちにあい、 そのままリンブラールを出ていった、そんな彼女をシェルベリアの者が保護したのである。

 そして……彼女はそんな有力貴族のクズ男相手に仕返しをした―― あの際の回想話ではただ”仕返し”としか語っていなかったが、仕返し相手はとてつもない大物…… つまり、もはや”仕返し”と一言で簡単に片づけられるような内容ではない”戦争”である。
 だが、そこは流石にあのエメローナが保護し、面倒を見ていただけのことはあってか、 その際のノウハウはすべて彼女譲りのそれ――アロザルト家の失墜よろしくあの男の家もまた失墜、 やつもまた行き場を失い、途方に暮れていることだろう……いや、既にこの世にいないかもな!  レオーネは復讐を果たしたのだった。
 しかし、そんな自分もまた危険な存在になっていることに気が付いた。 それに自分の人生……完全に棒に振っているではないか――自分の両親にも顔向けできないことをしているし……。
「だから、私は決めたのだ、本来であればアイドルなんて…… お飾りのままキラキラとした世界で黙っていれば順風満帆な生活を送れていたハズの私には似つかわしくない世界…… 同じキラキラとした世界でありながらも俗っぽい世界に身を投じ、群衆からの支持を集めて希望になるという行為…… だが、私はこれを戒めと思って受けることにした。 私はもうお嬢様なんかではない、これからは一人の女、 アイドルに身を投じ、男どもの視線をくぎ付けにする俗の一部にまぎれよう、と――」
 だが、ディウラはそんな彼女に同情、ずっと泣いていた。 そしてそのまま泣き疲れると、そのまま彼女の部屋で眠り込んでしまっていたのだった。

 とはいうものの、レオーネの気品漂う雰囲気、生まれ持ってのそれは隠すことはできず、 また、年齢的なものもあってかディウラは彼女をむしろ敬っていた。
「レオーネさんって素敵な方ですよね! もうご結婚されないんですか?」
「もう男はいい、こりごりだ。 ほかのメンバーもこの話には触れることはない、私が嫌がるのを知っているからね」
 ディウラは悪びれた様子で言った。
「ご、ごめんなさい、そうですよね――それなのに私ってば――」
 レオーネは首を振った。
「いいんだ、当時の傷は癒えてる、だが――男ってのはなんとも単純なものでな、 可愛い格好をして歌って踊っていれば喜んでなんでもするものだな、 もちろん、一部の界隈の男に限るんだろうが――」
 そう言われると、ディウラにも心当たりがあった。
「そうかもです! 男の人は困った感じを出してお願いすればなんでもやってくれるんですよね!」
 それに対し、レオーネは嬉しそうに言った。
「あら! 何よ、ディウラってばちゃっかりしてるじゃないの!  それに、ディウラだったら息吹きかければ男の1人や2人なんてすぐにできるんじゃないかしら!」
 それは――ディウラは焦って否定していた。