ドラゴン・スレイヤー ~グローナシアの物語~

第4章 世界の綻び

第95節 メロリンちゃんの気持ち

 カイルは話をしていた……。
「そうだったんですね! なるほど、ドミナントやヴァナスティアまで行ってきたのですね!」
 メロリアは目をキラキラさせていた、が―― カイルは悩んでいた、彼女のルームウェア…… フリフリなナイトブラとフリフリなレースのティアードミニスカート…… その上からカーディガンを羽織ってはいるものの、正面から見ると…… 可愛くてセクシーな彼女の見た目にカイルはくぎ付けだった、これでも男……なんだよな?
「な、なあ――さっきあんなこと言ってたからこんなこと訊いちゃいけないのかもしんないけど―― メロリアさんって男……なんだよな?」
 そう言われてメロリアは考えていた。
「まあね、生まれたときは一応そうだったみたいだよ。 もちろん、それこそついているものはついているしね――」
 ついている!? それって言うのは要は――
「うん、所謂”男の証”ってやつのことだね」
 マジか……第1印象としては半ば信じられない話なんだが。
「でも、そんなに短いの履いたら目立つんじゃないのか?」
 その点がなんとも気が気でなかったカイルは意を決してそう踏み込むことにした。
「私のは目立たないんだ。 そもそも私、幼いころの大けがでこの身体のパーツももともと私んのじゃないんだ。 多分そのせいだと思う、そんなこともあってプリズム族っていう種族の女性の身体とうまく同化しちゃったのかな、 それで普通に男の子やれるような身体じゃあなくなっちゃったんだよね私。 だから気が付いたら自分のこと女の子だと思ってた。 それでも男の子として生まれたって事実はぬぐえないから徹底的に女の子の恰好しようって考えるようになったんだ。 お姉様たちからも気にしなくたっていいのにって言われたりしているけど、それでもやっぱり……」
 気にしてしまうのか。 なるほど、女子アピールの強い服装の裏にはそんな悩みがあってのことだったわけか、 スカート丈が妙に短いのも、裸以外だったら一通りの恰好をこなしていることも。
「いいんじゃないのか? 世の中、やっぱり偏見っていうのがあるからな。 もちろん、俺も気にしなくたっていいんじゃないかって言いたいところだけど―― それでも、やっぱり当人が割り切れなければ仕方がないところだと思うしな」
 カイルにそう言われてもなおメロリアは悩んでいた。
「うん、まあ――うん……そう、なんだよね……。 でも――彼女にする女としてはちょっと痛いよね、 アイドルとしては最高だけど恋愛する女としては対局の位置にいるって言われたりするしね。 特にこんなに短いスカートだって私ぐらいしか履かないんだよ、 エメルナやレオーネはもちろん、ミリエラちゃんだってここまで短いのは……って、遠慮するレベルなんだ――」
 確かにそうかもしれない。 可愛い格好を優先するがあまり、むしろ男が離れていきそうな――それはカイルも思った、が……
「確かに、普通なら痛いかもな。 でも、その恰好をやめて自分が自分でなくなることを恐れるんだったら絶対にその恰好を貫いたほうがいいと思うぞ。 それこそ今の話を聞くと自分の生き方に対する決意の現れとも受け取れるし、 その決意通り、その恰好が本当にさまになっているようだしな。 だから周りが何と言おうとやりたいようにするのがいいんじゃないか?」
 そうかな? メロリアは改めてそう訊いた。
「ああ、間違いない!  自分の生い立ちゆえに苦悩しているようなやつはごまんといるけど、 それでも自分自身の正解見つけて生きているやつは本当に強いやつなんだ、これは親父の受け売りなんだけどな!  でも、メロリアさんを見ると、確かにその通りだと思うぞ!」
 そう言われてメロリアはにっこりしていた。
「ありがとうカイルさん!  そっか――エメローナ姉さまと同じこと言うんだね、 でも……男の人に言われたのは初めてだから嬉しい――」
 が――彼女はそのまま涙を流していた、嬉し涙というやつだ。
「そ、そんなによかったか? てか、エメローナさん、流石だな――」
 カイルは悩んでいた、彼女に言いたいことは山ほどあるが、少なくとも悪い人ではなさそうだ。
「ありがとう……カイルさん、本当にありがとう……。 カイルさんには男であることバラしちゃったけど、それでも、これからも仲良くしてくださいね――」
 だが、カイルは照れながら答えた。
「いや、それなんだけどさ、そんなことバラされてもさ、俺…… メロリアさんが男だとは思えなくってな――」
 ……え? メロリアは首をかしげていた。
「いや、あの……女性同士で戯れているところはもちろん、 その恰好や考え方、キミの何から何までが全部女の子にしか思えないんだよな。 だから……正直なところ、俺としてはキミに嫌われたくないなぁって考えていたところなんだよな、 それこそ誘惑魔法で俺のこと利用していたじゃないか?  だけど、それだけの関係で終わってほしくないなぁって思ってたんだよな」
 え、そうなの……? メロリアは期待していた。
「ああ! むしろ今の話を聞いて、ずいぶんとキミのイメージが変わったよ!  ただの可愛いだけの女性というわけじゃないんだなってな!」
 そう言われたメロリア、何を思ったか、カイルの懐に――
「……え」
「ありがとう、カイルさん! ありがとう! 本当にありがとう!  やっぱり、カイルさんっていい人なんですね! これからも仲良くしてください!」
 しかし、カイルは顔を真っ赤にしてドキドキしていた――。
「お……俺……俺……メロリンちゃん……」
 そして、それに気が付いたメロリアはとっさに離れた。
「あっ! ごめんなさい! 私ってば、つい!」
 だが、カイルは――
「……え」
 なんと、メロリンちゃんの華奢な御身をしっかりと抱きしめた!
「メロリンちゃん、俺……やっぱりキミとこうしていたい――」
 メロリンちゃんはカイルの胸の中でそのまま抱かれていた……。
「カイル……私もしばらくこうしていたい――」
 お前らデキてんな。