ドラゴン・スレイヤー ~グローナシアの物語~

第4章 世界の綻び

第94節 カイルの葛藤

 なんていうか、なんだか納得いかないような仕方がないような―― カイルは悩んでいた、アーティファクト奪取の件、全部エメローナに利用されていたのがなんだか気に入らなかったのである。 とはいえ――
「あんた、よくもまあアロザルトの家を出し抜いたもんだな、どんな手を使いやがった?」
 と、バルファースが彼女に訊いていた。
「まあね、てか、実は一度や二度じゃないのよ。」
 え!? 初見ではない!?
「どういうことだ?」
 流石にバルファースも驚いていた。
「最初はわりと回りくどいやり方をしてから最後は真正面からとどめを刺したっけ。 その次は趣向を変えスキを突いて出し抜いたわね。 そして次は向こうから仕掛けれたから対抗することになったんだけど、 残念ながら詰めが甘かったわね……裏をかいてやり返したらあっさりとって感じだったわね。 そんで次は――」
 何回あるんだよ! バルファースはただひたすら悩んでいた。
「……とまあ、うちからはとにかくボッコボコにやられているっていう実績を積んでんのよ。 だから今回はほとんどお遊びの領域、とにかくアーティファクトを見せびらかしといて、 お宅ん家にいつでも仕掛けられまっせって空気だけ臭わせておいて墓穴を掘ってくれるのを待つだけっていう簡単なお仕事だったってわけよ。」
 お遊び……なんちゅー女だ……さんざんやられている相手にはそりゃあ警戒してもしょうがないもの、 しかしそれを逆手にとって堂々と叩き潰すとはいくら何でもヤバすぎるだろ!?
「その時に今回の不正を暴いたりしなかったのか?」
 フレアが訊いた。
「まあね、忙しかったからね、所詮は私、精霊界の存在だしさ。」
 つまり、これまで片手間でアロザルト家をけちょんけちょんにしてきたと……。
「わかった、今度から精霊シルグランディアを崇拝しときゃよさそうだ、 そうしたら勝負事に強くなれそうな気がする」
 バルファースは皮肉気味にそう言うとエメローナは得意げに答えた。
「別にいいんじゃない?  もっとも……マネできるもんならやってみなさいなって話だけど?」
 怖い女。

 ということで、納得がいかなかったカイルではあるが、 恐らくたてついたところでそもそも彼女に勝てる見込みはないものと踏んだのである、 そもそもアロザルトという大きな家柄の存在を思いっきり貶めているのだ、 推して知るべしである。
 それに――
「ごめんね! 本当にごめんね、カイル!」
 メロリアが熱心に謝っていた。
「いや、あの……メロリアさんは悪くないよ。だって、全部エメローナさんの策なんだろ?」
「そ、それはそうだけど――でも、私が加担したのも事実だし――」
 そこへグローサルがやってきた。
「よくあることですな」
 よくあるって――
「なぁに、ついた君主が優秀な者とあれば別に何度利用されようとも私は構いませんよ。 もっとも、今回は仲間内ゆえにどう扱ったもんだかなんとも言えぬところですが、 しかしそれでも利用した相手はあの高名な精霊シルグランディア……私はやむなしと考えますがね」
 え、そういうもの!? カイルは驚いていた。
「あの人ってそんなにすごい存在!?」
「我がクラロルトの格言には”万物の創造の影にシルグランディアあり”と言いまして―― あらゆるものが創造可能なのはまさにシルグランディアがいるからこそなんですよ。 それは創造するためのありとあらゆる技術とその際の軌跡―― 精霊シルグランディアがいるからこそ、それらに加護が与えられるのです。 そして、その技術を用いる過程で得られるあらゆる知恵は普段の生活から相手を出し抜くすべにまで応用されるのです。 そう――精霊シルグランディアとはいわば知恵と知識をつかさどる存在、 ゆえにかの者の手駒となるのはむしろ必然と私は考えますね――」
 ……どうやらエメローナは意外なぐらいの大人物のようだ……カイルはますます悩んでいた。
「うーん、だから納得しろと言われてもなぁ……。 でも……まあ、そういうことならとりあえず、一旦置いとくか―― 別に許したわけじゃないけどな!」
 とりあえず、この件については一旦保留しておくことにしたカイルだった。

 カイルは息をつき、メロリアの案内で用意された部屋の中へと入って行った。
「先日からこの部屋を使っていた?」
「うん、そうだよ!」
 そうだったのか、カイルは納得した。
「なんていうかな、こういうこと言うのもなんなんだけど、 最初に来た時からこの家を案内してもらえればよかったような気がしなくもないよな――」
 カイルはそう愚痴っているとメロリアは頷いた。
「でも、お姉様、この町がちょっと苦手なんだって。 なんていうか、人が多すぎてごみごみしているって――」
 カイルは頷いた。
「その気持ちは俺もわかるな。 それなのにシュリウスに住んでいるんだぞ、もっとも、 シュリウスって言っても町はずれに住んでいたんだけどな」
 それに対してメロリアはワクワクしていた。
「そうなんですよね! カイルさんってシュリウスから来たんですよね!」
 そんなに興味があるのだろうか、カイルは訊いた。
「カイルさんたちがどんな旅をしてきたのかちょっと興味がありますね!  ねえ、聞いてもいいですか!?」
 そんなに聞きたいのか、カイルは悩んでいた。