シェルベリアのアーティファクトの入手についてはまさにインパクトを強めたかったという一点に尽きるのだという。
それにより、アロザルト家が貴族同士の集まりにおいてその情報をつかむと、
所有しているアーティファクトに対して何かしらのアクションをとることは間違いない――
だからそれを見越してシェルベリアのアーティファクト入手手段としてはちょっとヤバイ方法を使うことで連中に危機感を覚えさせる必要があった。
それにより――
「連中はオデアスの家と結託している、オデアスはこの町の兵士団を取り仕切る家柄だからね、
だからセキュリティ的にそっちのほうにアーティファクトを預けることは確実ってことね。」
でも、セキュリティ的にオデアスの家に行くのはよろしくないのでは……?
「いえ、実はそっちのほうがいろいろと都合がいいのよね。
というのも、アロザルト家にある場合、何かと障害が多いのよ。
レオーネの調べだと、アーティファクトを安置している部屋には立ち入りが制限され、
取れないことはないと思うけれども、それでもオデアスの家においてある場合と比べると明らかにリスクのほうが高すぎるのよね。
その一方で、オデアスとしては預かったものをそのままないがしろにするわけにもいかず、
ちゃんと飾り立てるようにしておいておくのも伝統的なもの――”主様”、
つまりアロザルトよりお預かりしているものだから必然よね。」
完全に裏をかかれているってことか……。
「で、でもさ、アロザルトのアーティファクトも結局直接奪い取っているよな!? だったらこんなまどろっこしいことしなくたって――」
エメローナは首を振った。
「いいえ、これはただの窃盗行為ではないのよ。
そもそもこの作戦はアロザルト家の陰謀を暴くための作戦だからね。」
なんだって!?
「あんたも聞いたでしょ? アロザルトが違法な取引をさせているってことをさ。」
そ、それは確かに……。
「そこでいろいろと調べたんだけど、もちろん一筋縄ではいかないわね、
これが正当ですって言われたらそれまで、証拠にはならないからさ。
だから取引のからくりを探った結果、ロンダ商会って組織が浮上したのよ。」
そういえばアデラスは南の港町のリンブラールのことを言っていたな。
「その組織が怪しいと?」
「怪しいけどすぐに尻尾をつかまさないなと考えたワケよ。」
「しかし、そこでエメローナ様は私にオデアスの家に行き、連中にゆさぶりをかけるよう指示なされたのですよ。
たとえなんであれ、オデアスはアロザルト様のためであれば如何なる些細なことであれ確認せねばなりませんからね」
ティラキスはそう説明した、まあ、お偉いさんのために何かしらはしないといけないという自然な行動ということか。
「そこにエンケラス政府に掛け合いまして、リンブラールでロンダ商会の行動に気を付けるよう進言したのですよ。
そしたら不正が発覚したようでしてな、アロザルトの家の名が出てくるのも時間の問題でしょう。
もはやしらを切ってもムダなこと、ずいぶんと長い間不正が常態化している状況ですからね、
隠すべきものも隠せぬというもの、長い間静観していた効果でございましょうな――」
ティラキスはそう続けるが、エメローナは首を振った。
「というか、誰も何も言わなかったことが原因ね。
かくいう私もほぼ精霊界にいて人間界の出来事についてはだいたい放置しているし、
そうなるのは必然ってことね。
でも……危ない薬が出回っているというのは流石に見捨てておくことはできないわね、
もう少し早くに行動していればこんなことにならなかったんじゃないと思うと――後悔しても仕方がないけどね……。」
なんか、ヤバイ話になっている……が、エメローナはなんだか沈んだような面持ちだった、
よかった、滅茶苦茶な人だけど良識のある人なんだな。
「だから滅茶苦茶言うなや!」
そしてアロザルト家が失墜するのは時間の問題、そして財産の没収……
しかしそうなる前にアーティファクトだけは合法的……というか、
アロザルトとしては有耶無耶になっているうちに紛失したぐらいの状況になってしまったと、
アーティファクトなぞオカルトのレベルの物体ゆえに――そういうシナリオなんだな。
「”水鏡の破片”はもともとドミナントの”太陽の祭壇”で管理していた代物、
つまりはヴァナスティア様から譲り受けた代物だったのよね。
だけどそれをどこかの豪商が金で人を雇い強引に奪い取っていったことがわかっている……
そしてその豪商こそがアロザルト家の者だったことまで調べがついているのよね――」
と、エメローナ、盗品だったのか。
「ヴァナスティアとしては”アーティファクト”というものは人から人へと渡り歩くもの、
だからそれもやむなしと声明を出しているわね、あくまで悪用されない限りはだけど。」
ヴァナスティア様のお考えは高位の精霊様と同じということか。
「ま、私らとしても、用が済んだらまた人の世界へとそっと返すことにするんだけどね。」
そう言われ、カイルはドラゴン・スレイヤーをじっと眺めていた、
”アーティファクト”はそういうものか……。