ドラゴン・スレイヤー ~グローナシアの物語~

第4章 世界の綻び

第83節 急展開

 そこへ、何者かの訪問が――
「あれは誰だ?」
 カイルは訊くと、守衛たちが立ち上がって言った。
「シェルベリア家の!? 少々お待ちください!」
 なんと、シェルベリア家のお偉いさんらしき人物…… なんだか背が高くてガタイの大きな男、言ってしまえば戦士風のガッチリした男だった、 そんな人物が現れると慌ててアデラスがやってきて――
「これはこれはシェルベリア家の――ティラキス殿でしたかな?」
 そう言われて彼は答えた。
「いかにも私はティラキス、シェルベリア家の使いの者ですな。本日は故あってはせ参じました。 念のためではございますが、旦那様方におかれましては”大した用事ではない”とのことですので、 これについては直接そちらの旦那様にお聞きいただけなくても問題ございません、 後ほどごゆるりとお伝えいただければ幸いに存じます――」
 見た目の割になんとも丁寧な態度の御仁だな、カイルはそう思った。 戦士とはいってもすでに引退したような感じで余裕のある雰囲気の御仁だった。
「それでは早速。 旦那様に置かれましては”もう少しで真相が見える”とのことです。 さて、何の話でしょうか……私も念のためにそうお聞きしたところ、 ”ロンダ商会は抑えた、あとは時間の問題だ”ということだそうです」
 ティラキス殿にそう言われ、アデラスたちはなんだか凍り付いていたような態度だった。
「ううむ、何とも意味深な内容で……私にはわかりかねますが、 それでもなんとも引っ掛かるような物言いでございますね、 あらゆることが想像できましょうが――いえ、そこは私の考えるべきことではございませんね」
 ティラキスはそう続けるが、アデラスたちはただただ口を閉ざしているだけだった。 そして、ティラキスはさらに続けた。
「ああそうでした、それから旦那様よりもう一つお話がございました。 ”他人を蹴落として商売を成立させていく手法は感心しない”とのことだそうです。 確かに商いの道というのはひどく大変なもの、ゆえにそのような競争が生まれるのかもしれませんが…… ただ、同じような志で行くものたちをあの手この手で貶めるなどとは確かにあまりいい気のする話ではありませんねえ、 もっとも……”そういうことが本当に起こっていれば”の話ですがね――」
 そしてティラキスは一礼をするとそのまま玄関へ向かって歩いて行った。
「言伝はすべてお伝えいたしましたので早々に帰らせていただきますね」

 その後、アデラスは悩みつつもいろいろと仕事を回しているようだった。
「そうだ! ロンダ商会だ! 何!? 何処だと!? リンブラールに決まっているだろう!  早く確かめてこい! もしものことがあれば主様に申し訳が立たん!」
 そこへカイルたちは恐る恐る話しかけた。
「なんだ! 今は忙しい! 後にしろ!」
 そう返したアデラスだったが、話しかけた相手を改めて確認すると、落ち着き払った態度で言った。
「おっと、これは申し訳ない! カイルさんたちでしたか!  すみません、ちょっと手が離せなくなりまして……それより引き続きアーティファクトのほうをお願いできますか!?」

 とにかく、あのティラキスが訪問してきたばっかりに半ばパニックになっているのは間違いなさそうだ。
 その後の休み時間、カイルとミリエラの2人は屋敷を出ると、 しばらく歩いたところであの女性が待ち構えていた、エメルナである。
「ふふっ、アデラスのやつ、泡を食っていたわね!」
 彼女は意地が悪そうに言うと、ミリエラはため息をついていた。
「図星だからそれはしゃあないよねぇ……」
 図星? 本当のこと? カイルは訊いた。
「そうだよ、あの家はただの町の兵士団を取りまとめるだけの家でしかないんだけど、 裏ではしっかりとアロザルト家とつながっているからね」
 と、ミリエラ……アロザルトって、あのアロザルト!? あのがめついことで有名な!? カイルはそう訊いた。
「え、シュリウスでも評判なんだ?」
 いや、そういうわけでは……ただ話の流れで聞いたことなんだけど。
「このあたりでアロザルトが展開している卸のお店ってちょっとだけ高めの設定なんだって。 適正価格のものも多いけど、案外肝心なものほど少しずつ上乗せされているイメージだよね?」
 ミリエラは呆れたように言うとエメルナは腕を組んで答えた。
「ほんとそれ。どこまでがめついのかしらねえ?  もっとも、エンケラスでは割と定説になっていることだし、 あのアロザルトのことだから強くは言えない家だらけだけど、 そこはさすがはシェルベリア家ね、はっきりと言ってくれるわね――」
 それに対してミリエラは悩んでいた。
「いや、あの……私らが言うことじゃないでしょソレ――」
 そういわれてエメルナは気が付いた。
「あ、言われてみればそれもそうね――」
 だが、私らが言うことじゃないっていうのはどうしてなんだろうか、カイルは疑問に思っていた。
「まあいいからいいから! 休み時間を満喫しましょ♪」
「そうよ、あんたには関係のない話だから気にしなくていいのよ」
 ミリエラとエメルナに押され、カイルは言われた通りにすることにした。