メイドさんについていったカイル。
スカート丈が短いのもそうだが、全体的にエプロンドレスのようななんともかわいげな服装で整っている点も気になっていた。
それに、メイド服といえば往々にして黒に白のエプロンという感じだが、
彼女の場合はパステルな水色に白のエプロンという感じである。
頭頂部と胸元に大きなリボンを結んでおり、さながら――
「そっか、あんたがあのカイルって男ね――」
えっ……? メイドは急にそんなふうに訊いてくるもんだからびっくりしていたカイル。
「あんたがアレでしょ、メロリアが言ってた男――」
え!? メロリンちゃんを知ってるの!? カイルはびっくりしていた。
「知ってるも何も、メロリアはうちのメンバーだからね」
メンバーって、まさか――
「私は”ラヴリッシュ・ティアーズ・エンジェル”のメンバーのエメルナっていうのよ」
まさかのあのアイドルユニットの1人だったようだ。
「そ、そうなの!?」
すると、エメルナは――
「んなところで驚かなくたっていいから、さっさとその扉ん中入んなさいよ」
と、つっけんどんに言った……すげえ塩対応……メロリンちゃんと違ってツンツンだなぁ、
見た目はかわいいのに――カイルは悩んでいた。
だが、そういえばあの人によく似ている……奇しくもその人の名前も”エメ”から始まる人だ。
部屋の中、改めてエメルナを見たカイルだが、見た目こそ最高……美人で間違いないのは確実だが――
「何じろじろ見てんのよ? うっとうしいやつねぇ……」
すげぇ塩対応……確かに、これはあの”エメ”で始まるお方と中身が同じなのは確実だな。
それに――おそらく、ドMだったら彼女の対応はたまらないんだろうなぁ……カイルはそう思った。
かくいう自分もその類に近しいものがあるので気持ちはよく分かったカイル、だがしかし――
「ああそうそう、あらかじめ言っとくけど私に手ぇだそうとしたらぶっ飛ばすからな。
メロリアと違ってこれでも人妻だからな」
え、まさかご結婚されているのか……
「7人もガキ作ってるしな」
しかも子供もいるし、それに子沢山――ってか、言葉遣い……こんなんでアイドル……?
「シュリウスからきたばかりで右も左も知らないアンタに教えておいてやるよ。
”ラヴリッシュ・ティアーズ・エンジェル”……つまり”愛と涙の天使”ってユニット名だけど、
コンセプトはワケアリアイドルだからな、表世界を渡り歩いている普通のアイドルとは全然違うのさ」
確かに、あのメロリンちゃんもまた戦える女とか言っていたもんな、ゆえに涙、つまりワケアリ――
「私はこれでも一応昔は盗賊をやってたのさ。
でも、あの人に救われ、今はこうして表世界で胸張って生きていけるってワケ。
そしてちゃんとした旦那まで見つけられて順風満帆な生活を送っているってワケよ」
”あの人”とはよほどの恩人なんだな。
それにしゃべり方は元盗賊やっていたからこその地のものなんだな。
「あんたはメロリンちゃんにぞっこんなんだろ?」
そういわれると――カイルは悩んでいた。だが、彼女は――
「ふふっ、それでいいさ、私にとってもメロリアはかわいい妹みたいなもんだからね。
私はもう結婚しているし、別にファンなんかついてなくたっていい――
って言ったらプロデューサーにシバかれるけどこちとら元々盗賊だからね、
そんなもんがほしいって望むこと自体が贅沢ってもんさ。
けど、どうせ推してくれるんなら私よりかはほかのメンバーを……
できればメロリアかミリエラを推してくれたほうがいいね」
ミリエラ? というか、そもそも――
「あんたたち……”ラヴリッシュ・ティアーズ・エンジェル”って何人?」
カイルは率直な疑問をぶつけた。
「全部で私、メロリア、ミリエラと、そしてレオーネの4人よ。
イメージカラーで言うと私がブルー、メロリアがピンク、ミリエラがイエローでレオーネがパープルよ。
あんたはそのままピンクを推しなさいよ?」
いや、その――もうピンク様にはぞっこんです……カイルはそう思っていた。
しかし、メンバー全員がワケアリということか、そしてそのコンセプトが何気に一部では流行っていると……
「さてと、そいつがわかったところで。
いい加減、腹減っただろ? 今、作ってきてやっから少し待ってろよ。
これでもガキ7人作っただけの実績は積んでんだ、期待しとけよ」
それは期待大だった。
それこそあの男勝りなフレアはもうこれこそがラムルの女のステータスと言わんばかりに料理の腕は最高だった。
そしてあの”エメ”がつく人のほうはというと、”真の創造精”を謳うだけのことはあり、
腕前で言えばフレアをも凌ぐほど――そういえばカレーの材料で肉じゃがを作るだのという件を思い出したが、
そんなこだわりなどどーでもいいほどの腕前だった。
そう、むしろどこかしらに乱暴な要素がある女性の作るメシはうまい! カイルはそう悟っていた。
翌日、カイルはエメルナに起こされていた。
叩き起こすわけでもなし、ただただ「さっさと起きろ」と呼ばれて飛び起きたのみだった。
朝食も夕食と同じ「さっさと食え」と言われたのでさっさと食うことにしたカイル、
流石は子沢山の母、メシの内容もボリュームも間違いないものだった。
「満足したか? コーヒー入れてやろうか?」
「あっ、はい! お願いします!」
面倒見のいい姉御肌の女性という感じだ、結婚もしているし、年が少し上の世代に受けそうだな。
だが――早くに母を亡くしているカイルにとって彼女の存在はちょっと嬉しかった、多分はっきり言うとシメられそうだが。