今とは違う時代の刻にて――
「シルグランディア様! まさか、シルグランディア様直々においでになられるとは!」
「別に呼ばれて来たわけでもなし、用があって来たわけでもなし、
私はただの通りがかりの旅人よ、目立ちたくないから”エメローナ”にしといてもらえるかしら?」
「左様ですか、まあ……目立つというのはそれはそれで面倒を呼び起こす行為にほかなりませんからね――」
エメローナは頷いた。そして――話を続けた。
「ところで何か入用だった?」
そいつはエメローナを案内した。するとそこには――
「ど、どういうことなのこれ!?」
エメローナはその光景を見て驚いていた、そこには多くのケガ人がベッドに横たわっていた……。
そう、エメローナの話し相手は医者、例のレンドリアでの出来事だった。
時代としてはちょうど150年程度昔の話になるだろうか。
「人間たちの戦争による被害者たちですよ、
まったく……関係者同士だけでやれって感じですよね――」
「あんた、気が合うわね! 確かにその通りよ! ったく……」
2人は呆れていた。
「ま、言っててもしゃあないし、ちゃっちゃと始めちゃいましょうかしらね。」
次々と治療を進めていく医者とエメローナ。
「こいつはもうダメね、すでにこと切れているわ――」
「ここに運び込まれた際にはすでに絶命している者も中にはおります。
ま、そいつばかりはどうしようもないんですがね。
ざっと見積もって、生存者は2割程度ですかね?」
「”生命の息吹”的に?」
「そういうことっすな」
そして――
「とりあえず、この子が最後の生き残りってところね?」
「ですが――この身体の欠損具合……もって数日の命ってところっすかね――」
医者とエメローナは悩んでいた。
「そうね、これは絶望でしかないわね、
それでもこうして命がかろうじてあって意識もあるというのがもはや奇跡もいいとこだけど――」
その子供はかろうじて目を見開いていた、意識がある……とはいえ、本当にそうなのかはわからない、
単に目だけ見開いているだけなのかもしれないが。
するとそこへ――
「あ……ああ……なんてこと……」
1人の精霊の女性がその場にやってきた、
その女性もまた先ほど治療を施されたばかりだった。
「無理をしてはいけません! 安静に!」
医者は慌ててその女性を抑えていた、彼女はその場に座らされていた。
「この子のことを知ってるの?」
エメローナは訊いた。
「その子は……具体的にはわからないけど、仲間を失うわけには――」
仲間? 医者は訊くとエメローナは頷いた。
「あんたっち、第4級精霊に連なる者ね? つまりはそういうこと?」
女性は頷いた。
「そう、私は観測者の娘、その子もまた観測者の息子……
私らの間ではそれ以上のつながりは特にないけど、それでも仲間は仲間――」
医者は悩んでいた。
「噂には聞いておりましたが、本当に観測者なる者がいるとは――」
そう言われてエメローナは悩んでいた。
「古の時代の精霊界からのお使いよ、世界のパワーバランスが乱れ、
具体的にどのようなことが起こっているのか――その成り行きを見て精霊界に伝える、
それが彼らの役割だけど――それがまさか戦争に巻き込まれるなんて、とにかく悲惨としか言いようがないわね――」
確かにその通りだ。
「だけどこの命はもうじき絶えようとしている、何とかしてあげたいのは山々だが――」
医者はそう言うとエメローナは考えていた。
「いや、可能性はゼロではないわね、確かにこの身体をそのまま修復するのはほぼ不可能……
だけど、損失している部分を補うことができれば、あるいは――」
え、どういうこと?
「幸いにもこの子は高位の精霊族、第4級精霊……
その線で考えるとちょっとしたアテがあるのよ、適合する可能性のある”体”がね。」
次の日、ギルドに再び赴いたカイル、メロリンちゃんいないかな……
彼女にメロメロなカイルは彼女を探していたが、彼女は見当たらなかった、
本業やほかの副業……アイドル稼業が忙しいのだろうな。
だが、それからギルドに留まること1時間――
「みなさん、お疲れ様でーす♪」
その声に男どもが一斉に反応した。
今日の服装もまた全体的にフリフリな衣装……短いスカートに背中の大きなリボン、
そして大きなバストの谷間まで魅せてくれる可愛らしくてなんともセクシーなスタイル……カイルもまた彼女に見惚れていた。
「メロリンちゃんだ!」
「お疲れ様です! メロリンちゃん!」
「メロリンちゃん! 今日もカワイイなぁ!」
滅茶苦茶沸いていた、まさにアイドルということか。するとそこへ――
「やあ、メロリン! 今日も決まってるわねぇ!」
なんだか男勝りな女ハンターが彼女に話しかけていた。
「あっ! 姐さん! 昨日のアレ、いかがでした?」
「アレ、すっごくいいねえ! 肌がツルッツルだよ! いつもいいもの教えてもらって助かるわあ!」
「そうですか! 気に入っていただけてよかったです!」
だが、その話に――
「よう! 姐さん! なんの話だって!?」
男たちが群がってきた。すると女ハンターは……
「女同士の話に首を突っ込んでこないで、あんたらはメロリンちゃんで鼻の下伸ばしてりゃそれでいいのよ」
とても煙たそうにしていた。すると男どもは言われた通りメロリンちゃんに鼻の下を伸ばしていた。
「ったく、本当にうっとうしいんだから。
だけどメロリン、いくらアレだからって男たちにジロジロ見られるようにするなんて、
なんだか申し訳ないわねぇ――」
女ハンターはそう言うとメロリンは前向きに答えた。
「いえ、そんなことないですよ! むしろ女の子って楽しいって感じます! なんだかとっても嬉しい!」
「そっか……そうね、あなたはそのほうがいいわよね。
わざわざアイドルに手を出すぐらいなんだからそりゃそうよね。
だったらもうじゃんじゃん男どもをメロメロにしちゃって! 私はあなたのこと応援してるからさ!」
「うん! ありがとう、姐さん! 私、頑張ります!」
女性にも人気なのか……カイルはそう思った。
だが、それにしたってメロリンちゃんカワイイ……カイルは再び鼻の下を伸ばしていた。
「あ! カイルー♪ やっほー♪」
彼女はこっちに気が付いた。